循環動態モニタリングはパラメータが多すぎて意味わかんない。・・・という悩みを抱えている人も少なからずいると思います。
ここではできるだけかみ砕いて「循環動態」について、心拍出量(CO)やSvO2、乳酸値を測る意味をお伝えしようと思います
循環動態の Point!
・循環動態は酸素運搬量(DO2)と酸素消費量(VO2)の2つ!
・DO2を決めるものは心拍出量(CO)、Hb(ヘモグロビン)、酸素飽和度(SaO2)
・静脈血酸素飽和度(SvO2)からDO2とVO2をつなげて考える
酸素運搬量(DO2)
一言で「循環」といってもいろんな定義があると思います。
ここでは「酸素を全身に送ること」と呼ばせてもらいます。
循環といえば血流のイメージが浮かぶと思いますが、血液を送るだけでは好気的な代謝はされないですよね。BLSでも意識を失った患者に「人工呼吸」と「心臓マッサージ」を行いますよね。
「血液を酸素化 → 全身に送る」
単純な話ですが、とても大事なメカニズムです。この単純なメカニズムを式で表すとこうなります。
「酸素運搬量(DO2)」といいますもう少し細かく書くと
このようになります。
酸素を全身に送るには、
まずは酸素化「SaO2」
酸素を運ぶための「ヘモグロビン」
送るための「心拍出量」
が必要だということが分かります。
この赤丸の三つが揃って酸素が全身に送られます。
中には酸素がヘモグロビンとくっつかず、溶存酸素として残ります。これがPaO2×0.0031の部分で基本的には無視して考えていいです。
例えるなら
酸素は『荷物』
ヘモグロビンが荷物を運ぶ『トラック』
心拍出量はトラックの『スピード』
となり、組織という名の到着地へと向かっていくわけです。
PaO2はトラックについてくる『犬』とでもしましょうか。
この式は他分野でもよく出てきます。呼吸の評価をするときもSpO2が安定してるだけで満足してはいけません。心拍出量はあるか、貧血の進行はないか、乳酸値は上がっていないかなどなど、低酸素症と低酸素血症が違うこともこの式からわかります。
DO2は正常値で1000ml/分です。
酸素消費量(VO2)
心臓から拍出して運搬した酸素(動脈血)は各臓器、組織を通って心臓に戻ってきます(静脈血)。
この間に代謝されるので酸素は消費されます。
この消費された酸素量を「酸素消費量(VO2)」と呼び、シンプルに動脈血の酸素運搬量から静脈血の酸素運搬量を引いたものになります。
先ほど計算したDO2は動脈血の酸素運搬量になります。静脈血の酸素運搬量はSaO2→SvO2、PaO2→PvO2に変えるだけです。
VO2は基本一定ですが、身体活動(発熱や震えや運動)、病態(敗血症など)で変動します。上昇することもあれば低下する病態もあります。
VO2は正常値で200~250ml/分です。 正常なDO2であれば細胞に酸素が行き届き、好気的な代謝が行われます。
正常で
DO2は1000ml/分
VO2は200~250ml/分
くらいです。
比で表すとDO2:VO2=5:1となります。
しかしDO2が減少(もしくはVO2が上昇)し、DO2:VO2=2:1を下回ると酸素が細胞に行き届かず、嫌気的代謝が行われるといわれています。
また、DO2が正常でも細胞内のミトコンドリア異常の疾患だと嫌気性代謝が行われます。
嫌気的代謝が行われると「乳酸(ラクテート)」が上昇します。
集中治療領域では予後不良因子の一つなので、DO2、VO2に限らず連日のチェックが必要です。
生体に必要なATPも同様に産生されますが、好気的代謝に比べると何十倍も産生される量が少ないです。
SvO2との関係性
出てきた用語をまとめてみると
こんな感じに表現できます。循環を保つためにはDO2とVO2のバランスがカギとなってきます。
貧血や心拍出量低下、酸素飽和度低下などでDO2が低下するとSvO2が低下します。
病態等でVO2が上昇するとSvO2が低下します。
このように循環動態、酸素需給が悪化するとSvO2が低下するため、重要な観察項目といえますね。
DO2↓ → SvO2↓
VO2↑ → SvO2↓
DO2↓+VO2↑ → SvO2↓
イメージできない人のためにイラストで表現すると下の図のようになります。
※酸素『荷物』ヘモグロビン『トラック』心拍出量『スピード』
正常時の血行動態
SaO2低下時の血行動態
Hb低下時の血行動態
CO低下時の血行動態
VO2上昇時の血行動態
DO2・VO2・SvO2を用いた循環管理
SvO2は採血もしくはオキシメトリー(プリセップ)CVカテーテルで連続モニタリングします。低侵襲血行動態モニタリング(フロートラックセンサーなど)やスワンガンツカテーテルで得られるパラメータでを用いると考えられる具体的な治療・処置は下のようになります。
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参考にした資料
[参考書]呼吸ECMOマニュアル(2014)
[参考書]ECCE(Edwards,2015)
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