心肺蘇生についてお話しますが、
心停止やショックなどの緊急時の対応は、まずはじめに「酸素の流れ」を考えるとわかりやすいです。
上はABCDアプローチと呼ばれる素早く患者の生命危機を把握するための考え方です。
こちらは酸素の流れに沿って、脳に酸素がたどり着くまでを順番に蘇生します。
こんな感じで「酸素の流れ」を意識すると今からご紹介する内容も分かりやすいかと思います。
救急外来でよく使用される評価方法ですが、一般病棟でも充分通用します。
~実際の心肺蘇生~
患者が心停止をしたら心肺蘇生(CPR : cardiopulmonary resuscitation)を行います。現場では心停止のことを「アレスト(arrest)」と呼ぶことがあります。
心停止をした際、一番気にしておく臓器は「脳」です。
脳は虚血に弱いため、たとえ自己心拍再開(ROSC : return of spontaneous circulation)しても脳障害や脳死になっていることがあります。
「心肺蘇生」は脳を守ろうという考えから「心肺脳蘇生」と呼ばれることがあります。
CPRで自己心拍再開(ロスク)しない場合や、脳をまず守るために体外循環を用いたECPR(extracorporeal cardiopulmonary resuscitation)をすることがあります。
心肺蘇生(CPR)は主に「一次救命処置(BLS)」と「二次救命処置(ALS)」からなります。
一次救命処置(BLS)
一次救命処置(BLS : basic life support)は主に胸骨圧迫と人工呼吸からなる心肺蘇生です。
BLSは「病院の外」を想定した心肺蘇生なので、「専門的な機器や薬剤を使わない」処置です。
基本的な流れは
傷病者(心停止)を発見したら呼びかけ
呼びかけに反応なければ119番通報(院外) or 緊急コール(院内)
気道確保し、心臓マッサージ(胸骨圧迫)と人工呼吸
自動体外式除細動器(AED)を装着し必要があれば除細動
となります。
胸骨圧迫は
強く(成人は5cm、小児は胸の厚さ1/3)
速く(最低100回/分)
絶え間なく(中断を最小限にする)
と言われています。
人工呼吸は
胸骨圧迫:人工呼吸 = 30:2
人工呼吸が不可能であれば胸骨圧迫のみ行う
と言われています。
院外では一般市民全員が対象ですが、院内では入院患者が対象になります。
院内と院外では環境が異なるため、処置の体制・やり方が変わってきます。
また、院内では終末期で蘇生措置拒否(DNAR : do not attempt resuscitation)の患者もいるため、その時は心肺停止状態で二次心肺蘇生措置は行いません。
二次救命処置(ALS)
二次救命処置(ALS : advanced life support)はBLSの次の措置ですが、ALS中もBLSは行います。
ALSは「病院の中」を想定した心肺蘇生なので、「専門的な機器や薬剤を使う」処置です。
主に気道確保、静脈路確保、除細動などの蘇生を行いながら心停止の原因検索をします。
気道確保
手動による気道確保が困難な場合にラリンジアルマスクやラリンジアルチューブ、エアウェイなどの気道確保器具を使うことがあります。必要に応じて酸素投与や挿管(バッグバルブマスク、人工呼吸器)を行うことがあります。挿入後はカプノメータで波形を確認します。「波形がある=換気ができている」ことになるので有用です。
静脈路の確保
輸液や昇圧剤・抗不整脈薬を投与するために静脈路を確保します。「ルート確保」とも呼ばれます。末梢静脈や中心静脈が使用されます。静脈が困難な場合は骨髄内や気管内(昇圧剤・抗不整脈薬のみ)が使用されることがあります。
除細動
AEDから通常の除細動器(DC)を使用します。心電図を解析し細かい除細動設定や不整脈に対して経皮ペーシングを行うことができます。
心肺蘇生CPR(BLS、ALS)中も常にバイタル・血液ガス測定・12誘導心電図・心エコーから病態評価と原因検索をします。
CPRによって心拍再開(ROSC)しない場合は体外循環を用いたCPR(ECPR)をすることがあります。
小児の場合は蘇生の方法が若干異なります。(主に薬剤の投与量)
小児の二次救命処置をPALS(pediatric advanced life support)と言います。
心拍再開(ROSC)その後
心拍再開後も常にバイタル・血液ガス測定・12誘導心電図・心エコーから病態評価と原因検索をします。
心停止後症候群(PCAS : post cardiac arrest syndrome)は脳損傷、心筋障害、全身性虚血再灌流反応、心停止が原因の病態で心停止蘇生後のほとんどがPCASに該当します。
急性冠症候群(ACS)であれば再灌流療法(PCI)を行います。
意識がなければ脳保護を目的に低体温療法を行い、患者を32~34℃で24時間管理することがあります。
低体温療法の適応
・昏睡(口頭指示に従えないもの)(AHA)
・反応がない(JRC)
・GCS 8以下(Nielsenらの研究)
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[指針]日本蘇生協議会(JRC)蘇生ガイドライン(日本蘇生協議会,2015)