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やさしく「SpO2」をまなぶ

投稿日:10月 25, 2020 更新日:

SpO2は指につけるだけで簡単に測定できるので、身近に使用されてますね。

あたりまえのようにあるSpO2は、測定の意味を深く考える機会もあまりないですよね。。。

そこで今回は、SpO2が必要な患者と

知らないとトラブル対応に困る「測定原理」についてご紹介します。

SpO2の Point!
・SpO2のモニタリングで酸素化障害ショックを迅速に気づく
・「SpO2低下=低酸素症」とは限らない!
・重症患者では昇圧剤によるSpO2低下が多い(抹消循環低下)
VA ECMOでは右手と左手で左右差がある





SpO2とは

パルスオキシメータと呼ばれる機器で測定した動脈血酸素飽和度(SaO2)のことです。

基本は「SaO2 = SpO2」でOKです。

現場では「サチュレーション」とよく呼ばれます。

SaO2を見ることで、おおまかなPaO2が把握できます。

酸素解離曲線

SaO2とPaO2は「酸素解離曲線」と呼ばれる関係があります。

緑色の線が酸素解離曲線です

SaO2が90%の時、PaO2は60mmHgくらいになります。

PaO2は通常血液ガス測定で測定しますが、酸素解離曲線を用いれば採血することなくおおよそのPaO2が分かります。

このSaO2を非侵襲で簡単に測定できてしまう機器が「パルスオキシメータ」です。





SpO2は血液中の酸素飽和度のこと

SpO2は動脈血の酸素飽和度のことです。

肺の酸素化障害で酸素が血中に取り込めない患者ではSpO2は低下します。

他にもショックバイタルで換気がなくなった患者は、酸素が血中に取り込めないのでSpO2が低下します。

このように血液中の酸素飽和度を測定することで低下のタイミングで対応することができます。

SpO2で測定しているのは動脈血の酸素飽和度、いわゆる「低酸素血症」を把握できます。

ここでよく勘違いされるのが

全身の酸素供給はSpO2のように血中の酸素飽和度だけでなく、酸素を送る「心拍出量」や酸素を運ぶ「ヘモグロビン」も必要です。

なので、低酸素血症は低酸素症と同じ意味ではありません。

詳しくはこちら

このようにSpO2を用いると酸素化をモニタリングすることができますが、これは「正しく測定されている」ときの話です。

SpO2は動脈血酸素飽和度を見ていますが、測定部位や抹消循環の影響を受けます。

なので、SpO2が低下したら「動脈血酸素飽和度の低下」だけでなく、測定部位や抹消循環の影響で低下している可能性があります。

これらの「測定誤差」に気づくためにも「測定原理」を理解する必要があります。

それでは、測定原理についてご紹介していきます。

そこまで難しくないので、これを機会に理解していただければと思います。





パルスオキシメータの測定原理

酸素はヘモグロビンにくっついて全身へ運ばれます。

酸素とくっついたヘモグロビンは鮮やかな赤色(動脈血)
酸素と離れたヘモグロビンは暗い赤色(静脈血)

となります。

パルスオキシメータではプローブを指につけ、赤色光と赤外光を高速に交互に出し、透過の割合から酸素化ヘモグロビンの割合(酸素飽和度)を算出します。

さらに、透過光の強度から脈波だけをデータとして抜き取ります。脈波(拍動)は動脈にしか存在しないため、結果的に動脈血の酸素飽和度を測定できます。

得られた波形は動脈の血圧波形と思ってください。





パルスオキシメータの装着部位

基本は「指」で SpO2を測定します。他にも「耳」や「鼻」で測定します。

脈波が到達するレスポンス時間は

耳 > 手 > 足 (早い順)

となります。

新生児や乳幼児は「手の甲」「足背」で測定することもあります。

測定困難な場合は「前額」で測定することもありますが、「静脈の拍動(うっ滞)」があるので、静脈成分のも拾ってSpO2が低く表示されることがあります。





パルスオキシメータの注意点!抹消循環をよく見る

このようにパルスオキシメータでは「脈波」と「光」を利用してSpO2を測定しています。

私用している原理は「脈波」と「光」です。

なので、「脈波」による測定誤差、「光」による測定誤差があります。



「脈波」による測定誤差

パルスオキシメータは「脈波」を拾って酸素飽和度の解析をします。

誤差1
昇圧剤を大量に使っている患者は抹消の拍動がなく、手も冷たく、抹消循環不全になっていることがあります。この時、脈波がないのでSpO2の数値がなかなか表示されません。測定部位を変えて意地になってSpO2の値を出そうとする方がいますが、昇圧剤を減量するなど「抹消循環の改善」を試みます。それでも数値が表示されない場合は別の指、足の指、耳たぶ、鼻、額など測定部位を変えるか、パルスオキシメータを変えて対処します(各社で測定のメカニズムが違うため)。

誤差2
プローブをきつく固定すると拍動がなくなり、測定できないことがあります。また、静脈が拍動することもあるため、プローブは強すぎないくらいに密着させて固定します。

誤差3
体動があると脈波を拾えず測定できないことがあります。



「光」による測定誤差

パルスオキシメータは「光」を当てることで血液の「色」を判別しています。

誤差1
色素製剤を使用すると血液の色が変化するため、 SpO2の値が低く表示されることがあります。色素製剤はメチレンブルー、インドシアニングリーン、インジコカルミンなどです。

誤差2
マニキュアで爪に色があると誤差を生じます。どの色もだいたいはSpO2の値が低く表示されてしまいます。

誤差3
一酸化炭素中毒によりCOHbが血中で増えると、COHbを酸素化ヘモグロビンと誤認識してSpO2の値が高く表示されることがあります。 (吸光度:COHb=O2Hb)

誤差4
メトHb(SpO285%)、NO吸入、急性薬物中毒、遺伝性疾患で測定誤差が生じることがあります。

外部の光も影響するので、できるだけ測定部に直接光が当たらないようにしましょう。





VA ECMO(PCPS)ではSpO2に左右差がある?

SpO2は動脈血酸素飽和度のことで、通常はどの体の部位でも動脈血であればSpO2の値は同じです。

VA ECMOなどの補助循環を使用している患者は 自己肺で酸素化された血液 と ECMOの人工肺で酸素化された血液 の「2種類の血液」が存在します。

なので測定部位によってSpO2の値が違うのです。

VA ECMO管理の基本は「右手」でSpO2を測定します。

VA ECMOの生理学はこちら





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[参考書]ICUのモニタリング(重症患者ケア,2015)

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