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難しく感じる循環動態モニターの原理(ビジランス編)

投稿日:7月 23, 2018 更新日:

循環動態とは心機能や末梢循環、酸素化など人間が生きる上で必要不可欠な生理学です。モニタリングする項目が多く、モニタリング装置の一つでもある「ビジランス」について解説します。





ビジランスってどんなもの?



ビジランスII

スワンガンツカテーテル
(サーモダイリュージョンカテーテル)

ビジランスはスワンガンツカテーテル(肺動脈カテーテル、サーモダイリュージョンカテーテルとも呼ばれます)を用いて循環動態をモニタリングする機器です。

ICUではよく中心静脈カテーテルが留置されることが多いですが、ビジランスで使うスワンガンツカテーテルは先端が肺動脈にあることが特徴です。

先端にバルーンがついていて、これを膨らませることで血流に乗って、心電図を見ながらやX線透視化で留置します。





スワンガンツカテーテルで何を測ってるの?

わざわざ手間をとってまで何を測っているのでしょうか。次の三つになります。

1、心内圧
  ・右心房圧(RAP)
  ・肺動脈収縮期圧(PASP)
  ・肺動脈拡張期圧(PADP)
  ・肺動脈平均圧(MPAP)
  ・肺動脈楔入圧(PAWP)
2、連続心拍出量(CCO)
3、混合静脈血酸素飽和度(SvO2

※よく使用されている「スワンガンツCCO/CEDVサーモダイリューションカテーテル」の場合です。標準のサーモダイリュージョンカテーテル(モデル131HF7/131F7など)は連続心拍出量(CCO)ではなく注入液による心拍出量(CO)、混合静脈血酸素飽和度(Sv-O2)は採血で測定、右室駆出率(RVEF)は測定できません。また、他の種類によってはペーシング機能が付いているものもあります。





心内圧の測定原理

中心静脈カテーテルで得られる中心静脈圧は右心室の前負荷として解釈しますが、スワンガンツカテーテルは右房・右室・肺動脈・肺動脈楔入圧(≒左房圧)も得られ、右心系と左房圧の近似値まで得られます。





連続心拍出量の測定原理

「熱希釈法」と呼ばれる測定法の応用により、心拍出量(CO)を測定します。

カテーテルに巻かれた熱源コイル(サーマルフィラメント)によりわずかに温度を上げます。
先端の温度センサー(サーミスタ)で温度変化を検知し、その熱希釈曲線から心拍出量を導き出します。

ビジレオは動脈で圧波形を解析して心拍出量を出すのに対し、
ビジランスは静脈で熱希釈法によって心拍出量を測定します。

同じ心拍出量でも測定の仕方が違います。





混合静脈血酸素飽和度(SVO2)の測定原理

反射式分光光度法により、連続混合静脈血酸素飽和度(SvO2)を測定されます。





測定項目って他にもあるけど。。。

スワンガンツカテーテルで直接測定しているものを記載しました。

でもビジランスって他にもモニターしている項目ってかなり多いですよね?

残りはベッドサイドモニターや血ガスの検査値を使って機器内で計算して間接的に測定しています。

間接的に測定している項目を情報源を載せながら記載していきます。

 

心機能プロファイル
CCO
連続心拍出量
[]
CCI
連続心係数
CCO[] / BSA
MAP
平均動脈圧
(SBP[] + 2DBP[]) / 3
MPAP
平均肺動脈圧
(PASP[] + 2PADP[]) / 3
CVP
中心静脈圧
[]
PAWP
肺動脈楔入圧
[]
HR avg
平均心拍数
[]
身長
 
[]
体重
 
[]
BSA
体表面積
(身長[])0.7×(体重[])0.4×0.7
SVR
体血管抵抗
80 × (MAP - RAP) / CO
SVRI
体血管抵抗係数
80 × (MAP - RAP) / CI
PVR
肺血管抵抗
80 × (MPAP - PAWP) / CO
PVRI
肺血管抵抗係数
80 × (MPAP - PAWP) / CI
LVSWI
左室1回仕事量係数
SVI × (MAP - PAWP) × 0.0136
RVSWI
右室1回仕事量係数
SVI × (MPAP - RAP) × 0.0136
SV
1回拍出量
CO / HR[] × 1000
SVI
1回拍出量係数
CI / HR[] × 1000
RVEF
右室駆出率
熱希釈法の応用[]連続平均心拍数[]から算出
SV / EDV
(RV)EDV
(右室)拡張終期容量
SV / (RV)EF
(RV)EDVI
(右室)拡張終期容量係数
(RV)EDV / BSA
(RV)ESV
(右室)収縮終期容量
(RV)EDV - SV
(RV)ESVI
(右室)収縮終期容量係数
(RV)ESV / BSA
※情報源
[]・・・スワンガンツカテーテルで測定した値
[]・・・ベッドサイドモニターから入力した値(アナログ入力ケーブル)
[]・・・ビジランスモニターに直接入力した値

 

酸素プロファイル
CCO
連続心拍出量
[]
CCI
連続心係数
CCO[] / BSA
SvO2
混合静脈血酸素飽和度
[]
HGB
ヘモグロビン
[]
SaO2
動脈血酸素飽和度
[]
PvO2
静脈血酸素分圧
[]?
PaO2
動脈血酸素分圧
[]?
FiO2
酸素吸入濃度
[]?
VO2
酸素消費量
(C(a-v)O2) × CO × 10
VO2I
酸素消費量係数
(C(a-v)O2) × CI × 10
DO2
酸素運搬量
CaO2 × CO × 10
DO2I
酸素運搬量係数
CaO2 × CI × 10
CvO2
静脈血酸素含有量
(1.38 × Hgb × Sv-O2) + 0.0031 × PvO2
CaO2
動脈血酸素含有量
(1.38 × Hgb × SaO2) + 0.0031 × PaO2
Ca-vO2
動静脈血酸素含有量較差
CaO2 - CvO2
O2EI
酸素摂取係数
((SaO2 - Sv-O2) / SaO2) × 100
O2ER
酸素摂取量
((CaO2 - CvO2) / CaO2) × 100
VQI
換気血流係数
[]?
※情報源
[]・・・スワンガンツカテーテルで測定した値
[]・・・ベッドサイドモニターから入力した値(アナログ入力ケーブル)
[]・・・ビジランスモニターに直接入力した値

以上、ビジランスで表示可能な項目です。

血管抵抗は心拍出量と心内圧を使用しています。「流量」「圧」を利用して「抵抗」を導き出すということは「V=RI」つまり「オームの法則」!!なんです。理科の実験が懐かしいですね。。。

あえて「情報源」という表現で上の表を書いていますが、単に計算式を繋げる意味だけでなく、「トラブル対応」に応用できます。

個人の感覚ですが、ビジランスといった循環管理モニターに関して多いトラブルが「ケーブルの接続不良」です。

数か所ほど表示されていないモニター値があったときはケーブルの接続を疑います。
その際に情報源(値)がどのケーブルによって入力・出力されているかを理解しておくと瞬時に対応できます。

例えば、EDVやRVEFが表示されない場合、情報源は「心電図」と「CCO」です。CCOが表示されていれば瞬時に「心電図」側に問題があるとわかります。患者モニターに心電図が出力されているか、ベッドサイドモニター・ビジランスモニター間のケーブルが緩んでいないか、を確認します。改善しない場合はECGケーブルの断線、測定レンジ外、ペースメーカ、極端に多い・少ないHR、などです。

こんな感じで考えることができます。

各測定項目の基準値も載せておきます。お役に立てれば、m(__)m

心機能プロファイル
CCO
連続心拍出量
4.0 ~ 8.0 [L/]
CCI
連続心係数
2.5 ~ 4.0 [L//m2]
MAP
平均動脈圧
70 ~ 105 [mmHg]
MPAP
平均肺動脈圧
10 ~ 20 [mmHg]
CVP
中心静脈圧
5 ~ 10 [mmHg]
PAWP
肺動脈楔入圧
6 ~ 12 [mmHg]
HR avg
平均心拍数
60 ~ 100 [/]
身長
 
 
体重
 
 
BSA
体表面積
平均体表面積 1.73m2(欧米) 1.48m2(日本)
SVR
体血管抵抗
800 ~ 1200 [dyne-sec/cm5]
SVRI
体血管抵抗係数
1970 ~ 2390 [dyne-sec-m2/cm5]
PVR
肺血管抵抗
<250 [dyne-sec/cm5]
PVRI
肺血管抵抗係数
255 ~ 285 [dyne-sec-m2/cm5]
LVSWI
左室1回仕事量係数
45 ~ 75 [gm-m//m2]
RVSWI
右室1回仕事量係数
5 ~ 10 [gm-m//m2]
SV
1回拍出量
60 ~ 100 [mL/]
SVI
1回拍出量係数
33 ~ 47 [mL//m2]
RVEF
右室駆出率
40 ~ 60 [%]
(RV)EDV
(右室)拡張終期容量
100 ~ 160 [mL]
(RV)EDVI
(右室)拡張終期容量係数
60 ~ 100 [mL/m2]
(RV)ESV
(右室)収縮終期容量
50 ~ 100 [mL]
(RV)ESVI
(右室)収縮終期容量係数
30 ~ 60 [mL/m2]
酸素プロファイル
CCO
連続心拍出量
4.0 ~ 8.0 [L/]
CCI
連続心係数
2.5 ~ 4.0 [L//m2]
SvO2
混合静脈血酸素飽和度
60 ~ 80 [%]
HGB
ヘモグロビン
: 12.4 ~ 17.4 [g/dL] : 11.7 ~ 16 [g/dL]
SaO2
動脈血酸素飽和度
95 ~ 100 [%]
PvO2
静脈血酸素分圧
35 ~ 45 [mmHg]
PaO2
動脈血酸素分圧
80 ~ 100 [mmHg]
FiO2
酸素吸入濃度
 
VO2
酸素消費量
200 ~ 250 [mL/]
VO2I
酸素消費量係数
120 ~ 160 [mL//m2]
DO2
酸素運搬量
950 ~ 1150 [mL/]
DO2I
酸素運搬量係数
500 ~ 600 [mL//m2]
CvO2
静脈血酸素含有量
12 ~ 15 [mL/dL]
CaO2
動脈血酸素含有量
17 ~ 20 [mL/dL]
Ca-vO2
動静脈血酸素含有量較差
4 ~ 6 [mL/dL]
O2EI
酸素摂取係数
20 ~ 25 [%]
O2ER
酸素摂取量
22 ~ 30 [%]
VQI
換気血流係数
0.8 ~ 1.2 





ビジランスを使っていざ治療!

上で数値が理解できたら、次は治療に応用しなくてはなりません。

治療を行うためには「循環動態」について理解する必要があります。

循環動態はこちら

循環動態を理解すればビジランスに表示されている数値を用いて、どの治療を行うかが判断でき、治療を行う上での根拠にもなります。

一覧を記載しておきます↓





実は現在ビジランスは販売終了しています。

しかし根強く使用している施設も多いので、記事は残しておきます。

ビジランスの後継機種は「ヘモスフィア」になります。





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[参考書]ECCE(Edwards,2015)
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