EV1000は他のモニターよりも多く循環動態を数値化できる装置です。
中でも特徴は「肺血管外水分量」を算出できる機能です。重症患者でよく使用されます。
今回はそんな魅力たっぷりのEV1000についてご紹介します。
EV1000の Point!
・静脈から冷却した5%ブドウ糖液を流し、動脈に到達した時の「温度変化」を測定
・なので、静脈と動脈に専用カテーテルを入れる
・温度変化を解析してあらゆる項目を算出(心拍出量や肺血管外水分量など)
EV1000
ほとんどの循環動態モニターは心拍出量(CO)や体血管抵抗(SVR)などの循環動態の項目を見ることができます。
なかでもEV1000は測定できる項目が多く、特徴として肺血管外水分量を測定できる優れものです。
重症患者によく使用されるイメージです。
EV1000

そんなEV1000について今回ご紹介します。
ちなみにEV1000はフロートラックシステムを採用しているビジレオに「ボリュームビューシステム」といわれる機能を付け加えたモニターになります。すなわちEV1000は「ビジレオが進化したモニター」です。
まずはビジレオモニターを理解すると、今回の内容が理解しやすいと思います。→ビジレオはこちら
ボリュームビューカテーテル

EV1000の目的(肺状態のモニタリング)
重症患者では、しばしば肺水腫が見られます。
EV1000ではビジレオで使うフロートラックとプリセップオキシメトリーカテーテルの他にボリュームビューカテーテルというカテーテルを使い、重症患者で重要視される肺血管外水分などの「肺状態」もモニタリングできます。

EV1000を使用する方法(セットアップ)
EV1000では多くの項目が測定できるため、使用するカテーテルも多いです。
他のモニターに比べると準備に手こずるかと思います。
必要な物品をご説明します。
EV1000の前に、ビジレオの準備物は次のようになります。

ビジレオは心拍出量(CO)やSVVを測定するためにフロートラックセンサー、SvO2やCVPを測定するためにオキシメトリーCVカテーテルが必要になります。
続いて、EV1000の準備物は次のようになります。

このようにEV1000ではボリュームビューカテーテルをはじめ、カテーテルの種類が増えます。
フロートラックセンサーとオキシメトリーCVカテーテルに加え、「ボリュームビューカテーテル」と「CVCマニフォールド」が必要になります。
ボリュームビューカテーテルを使用しなくても、フロートラックとオキシメトリーCVカテーテルのみでビジレオの機能で動作させることもできます。
これらカテーテルを使ったEV1000の接続は次のようになります。

CVCマニフォールドは「静脈」、ボリュームビューカテーテルは「動脈」に組み込むのがポイントです。
次に説明する測定原理につながるからです。
EV1000を使って測定
CVカテーテル(静脈)に冷却した5%ブドウ糖液を流します。
冷却した液が動脈に達したところの温度変化を検知します。

CVCマニフォールドで最初の温度変化を検知し、ボリュームビューカテーテルで動脈に達した地点の温度変化を検知します。それを波形化します。
この『温度変化の波形』からスチュワートハミルトンの公式や胸腔内熱容量などによって、心拍出量や全拡張終期容量、肺血管外水分量などを算出します。

推奨冷水注入量
体重 | 冷水注入量 |
~ 50kg | 10ml/回 |
50 ~ 100kg | 15ml/回 |
100kg ~ | 20ml/回 |
この方法で心拍出量(CO)を測定すると一回一回ブドウ糖を入れて測定しなければなりませんが、フロートラックセンサーを用いれば、圧解析によって「連続的」にリアルタイム測定することも可能です。
ボリュームビューカテーテルを用いる場合は上記のように冷却液を流した時に測定するので「間歇的」になります。
EV1000ではどちらの方法でも測定できるので、違いが分かるようにボリュームビューカテーテルで測定した項目は文字の先頭に「i」と表記されています。
例)心拍出量(CO)
CO(連続的:フロートラック or ボリュームビュー で測定したCO)
iCO(間歇的:ボリュームビューで測定したCO)
心拍出量の算出
EV1000は上で説明した『温度変化の波形』から心拍出量(CO)を算出します。
ボリュームビューカテーテルを用いて算出するのでVV-CO(ボリュームビューCO)とも呼ばれます。
ビジレオと同様にフロートラックセンサーを用いて動脈圧解析によるCO(APCO)を算出することも可能です。
同じ『心拍出量』でもEV1000、ビジレオ、ビジランスで測定方法が違うんですね。
その他の重要測定項目
肺の水分量・血液量も
この「温度変化」から算出されます。

ポイントとなるGEDV、GEF、EVLW、PVPIについてご説明します。
全拡張期容量(GEDV)
全拡張期容量(GEDV)は「前負荷」の指標で、輸液負荷の判断に用いられます。
GEDVを体表面積(BSA)で割った値を全拡張期容量係数(GEDI)といいます。
GEDIは650ml/m2以下で循環血液量減少、800ml/m2以上で心拡大を疑います。
全心駆出率(GEF)
全心駆出率(GEF)は「心収縮力」の指標に用いられます。基準値は20%以上です。
肺血管外水分量(EVLW)
肺血管外水分量(EVLW)は「肺水腫」の指標で、EVLWを予想体重で割った値を肺血管外水分量係数(ELWI)といいます。
7ml/kg以上で心不全、過剰体液、肺損傷を疑います。
肺血管透過性係数(PVPI)
肺血管透過性係数(PVPI)は「肺水腫」の鑑別に用いられ、EVLW増加の原因を見分けるのに使用します。
敗血症やARDS、外傷、熱傷、膵炎などの血管透過性亢進によりPVPIは上昇します。
心原性肺水腫などではPVPIは上昇せず、値は3未満です。
EV1000全測定項目

カテーテルを使わずにモニタリング
ご紹介したように、EV1000では低侵襲で重症度をモニタリングすることができます。
実はEV1000には「クリアサイト」と呼ばれる指にカフをつけるだけで循環動態をモニタリングするシステムがあります。
クリアサイトを使うことで「非侵襲」的にモニタリングをすることができます。
EV1000を使っていざ治療!
上で数値が理解できたら、次は治療に応用しなくてはなりません。
治療を行うためには「循環動態」について理解する必要があります。
→循環動態はこちら
循環動態を理解すればEV1000に表示されている数値を用いて、どの治療を行うかが判断でき、治療を行う上での根拠にもなります。
一覧を記載しておきます↓

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その他の記事 はこちら(HP)
参考にした資料
[参考書]救急・ICU患者のME機器からみた呼吸・循環管理(2018)
[参考書]ECCE(Edwards,2015)
↑無料で見れます。
[HP]EV1000(Edwards)
↑無料で見れます。