不整脈と言えば
一度は必ず「勉強しなければ。。。」と感じますよね。
心電図の世界に踏み込んだ者はわかると思いますが
気が遠くなるほどの不整脈の種類が多くて
しかも一つ一つの特徴をとらえて
さらには似た不整脈との鑑別まで行わなければなりません。
これらを専門の方は一瞬見ただけで心電図を理解してしまいます。
専門外の方でも最低限の不整脈を「形」で覚えておけば、現場でのストレスはかなり減ります。
不整脈の Point!
・不整脈は「形」で覚える
・まず覚えるべきは「Vf」「VT」「心静止」「無脈性電気活動(PEA)」の4つ!
・その他は経過観察、医師に連絡
「これだけ心電図」
控えめに言ってめちゃくちゃわかりやすいです。
今回はこちらに記載されてある内容の一部を記事にしてみました。
詳しくは書籍で。
「形」で覚える不整脈
15種類あります。
専門・専門外は関係なく、医療従事者間では共通認識が必要な不整脈です。
理解が得られるためにも、上述した通りかなりかみ砕いて説明します。
正常な心電図
まずは心臓の解剖から
心臓は電気によって動いています。
上は刺激伝導系といい、電気が通る道のようなものです。
洞結節からリズムよく電気信号が出されています。
洞結節 → 房室結節 → ヒス束 → 左脚・右脚 → プルキンエ線維
の順番で信号が送られ、心房・心室が収縮します。
この一連の流れによって心電図が発生します。
心房の収縮によってP波が発生
心室の収縮によってQRS波が発生
T波は現場で対応するうえで重要視されることは少ないです。まずはこのP波とQRS波を覚えておくと理解しやすいです。
ここまで一連の流れが1心拍になります。
これが1分間当たりに60回となると「60bpm」となります。正常値は60~100bpmです。
心室細動
Vf:ventricular fibrillation
リズムや高さがめちゃくちゃな波形は、心室が震えている(細動)状態です。
この時、心室からの拍出はなく、脈と意識はない状態です。
現場での対処
ラインを確保し、アドレナリン投与を行います。
対処中に原因精査を行います。
心室頻拍
VT:ventricular tachycardia
上のように「太いQRS波」は「心室由来」の電気信号です。
通常の刺激伝導系より早いペースで心室の太いQRS波が連続的にリズムよく出現します。
なのでRR間隔と高さは一定です。
これが200bpmを超える程度になると、収縮の感覚が早すぎるあまり、心臓からの拍出がうまくできず、脈と意識はない状態になります。
200bpm以下だと脈と意識が正常なこともあります。
細いQRS波 →上室(心房)から来た信号
太いQRS波 →心室から来た信号
現場での対処
○脈なし
胸骨圧迫、人工呼吸、除細動を行います。ラインを確保し、アドレナリン投与を行います。対処中に原因精査を行います。
○脈あり
胸骨圧迫、呼吸がなければ人工呼吸を行います。除細動は行いません。安定なら薬物療法。不安定ならカルディオバージョン(R波同期放電)を行います。
心静止
asystole
洞結節からの信号もなく、心房・心室が収縮していない。心臓がまったく動いていない状態です。
現場での対処
電極が装着ちゃんとされていて、意識・脈がない場合は心静止です。
DNR(do not resuscitate)いわゆる「蘇生しない」方針の場合は死亡確認をし、蘇生は行いません。
予期していない突然の心静止は蘇生を行います。胸骨圧迫、人工呼吸を行います。除細動は行いません。ラインを確保し、アドレナリン投与を行います。対処中に原因精査を行います。
無脈性電気活動
PEA:pulseless electrical activity
心電図はあるけど、「脈がない」状態です。
どういう意味かというと、電気信号は出ていますが、心臓の収縮が弱く、血液の拍出が少ないため脈(拍動)が発生しません。
心電図も特に決まった波形はありません。
現場での対処
ラインを確保し、アドレナリン投与を行います。
対処中に原因精査を行います。
心房細動
Af:atrial fibrillation
洞結節からの信号だけでなく心房内のあちこちに電気信号が発生し、心房がうまく収縮できない状態です。
心室は通常通り収縮するため、脈・意識はあります。
心房からの電気信号がバラバラなので、「RR間隔はバラバラ」でP波がなく「細かい基線の揺れ」が見られます。
現場での対処
基本は経過観察でよいです。
頻脈や症状、バイタル悪化が見られれば早めの治療が望ましいです。
抗凝固療法や原因疾患に対する治療を行います。
心房粗動
AFL:atrial flutter
心房内で電気信号が往復し、心房が1分間に300回も収縮します。
通常のP波ではなくF(ラージエフ)波という下に尖った波形が見られます。
QRS波の中にもF波が隠れています。
信号は房室結節で調節していて300回の信号すべてに心室は応答しません。
数回に1回程度が多く、規則的なため、RR間隔は一定です。
現場での対処
治療が必要になるので循環器内科に相談します。
100bpm程度では緊急性は高くありませんが、200~300bpmの頻脈、症状やバイタル悪化では早めに対処します。
カルディオバージョンや内服薬治療、ペーシングなどの治療を行います。
発作性上室頻拍
PSVT:paroxysmal supraventricular tachycardia
心房と心室の間で電気信号が往復します。
時間が経過すると消失します(発作性)。
心房と心室が多く収縮するためP波がQRS波に隠れてよく見えないです。
RR間隔は一定です。
現場での対処
バイタルを確認します。安定していることが多いです。
息こらえ、薬物治療、カルディオバージョンを行うことがあります。
洞不全症候群
SSS:sick sinus syndrome
数秒間、洞結節の電気信号が心房に伝わらない状態です。
この間はP波もQRS波もなく、心房・心室ともに収縮しません。
つまり心臓が動いていません。
長時間であると失神を起こします。
心停止になり死亡することはないと言われています。
現場での対処
症状があればバイタルや意識を確認します。
失神やめまい、痙攣があればペースメーカの適応になります。
循環器内科に相談します。
第2度房室ブロック
second-degree atrioventricular block
心房から心室に電気信号が伝わりにくく
伝わる場合はP波とQRS波があります。
伝わらない時はP波の後のQRS波がなくなります。
徐脈で失神を起こすことがあります。
現場での対処
症状があれば、バイタルや意識を確認します。
徐脈で症状悪化がある場合は、アトロピン静注やペーシングを行うことがあります。
第3度房室ブロック
third-degree atrioventricular block
心房から心室に電気信号が全く伝わらない状態です。
上述した解剖では心房から心室に信号が伝わらない場合、P波のみになりそうですが、心臓は「自動能」と呼ばれるバックアップ機能で低い心拍数で心室が収縮します(30~50bpm程度)。
自動能によって心室が収縮するときにQRS波が現れます。
P波は洞結節のリズムで、QRS波は自動能のリズムで伝わるため
P波とP波の間隔は一定、QRS波とQRS波の間隔も一定(広い)、P波とQRS波の間隔(PQ時間)はバラバラになります。
徐脈で意識レベル低下や顔面蒼白などの症状があります。
現場での対処
アトロピン静注やペーシングを行い、できるだけ早めに対処します。
洞性頻脈
sinus tachycardia
洞結節からの電気信号が100bpm以上になる状態です。
P波、QRS波は正常でRR間隔も一定です。
現場での対処
基本は経過観察です。
原因が分かれば、その原因に対する治療を行います。脱水、炎症、心不全などです。
洞性徐脈
sinus bradycardia
洞結節からの電気信号が60bpm以下になる状態です。
P波、QRS波は正常でRR間隔も一定です。
現場での対処
基本は経過観察です。
めまいや失神などの症状があれば、意識やバイタルを確認し、アトロピン静注やペーシングを行うことがあります。
対処中に原因精査を行います。
上室期外収縮
SVPB:supraventricular premature beats
上室(心房・房室結節・ヒス束)から正常よりも早く電気信号が送られ、早いタイミングでQRS波が現れます。
この時、正常波形は現れません。
現場での対処
基本は経過観察です。
心室期外収縮
PVC:premature ventricular contraction
心室から正常よりも早く電気信号が送られ、早いタイミングでQRS波が現れます。
PVCは1回~数回程度です。
この時、正常波形は現れません。
心室由来なのでQRS波が太く(間隔が広く)なります。
現場での対処
基本は経過観察です。
心筋梗塞のある患者ではPVCがT波の上に重なっていたり(R on T)、2連発・3連発と連続になっていたり、多型性(いろいろな形)であると心室頻拍になる可能性があるため、注意して観察します。
ST変化
胸部症状があれば緊急で精査します。
急性心筋梗塞、タコつぼ型心筋症、心膜炎、心室瘤、左室肥大などがあげられます。
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参考にした資料
[参考書]レジデントのためのこれだけ心電図(2018)
↑めちゃくちゃわかりやすいです。書いた人を胴上げしたいです