以前の循環動態モニタリングの記事を書きました。
循環動態を把握するには心拍出量や酸素飽和度が用いられますが、
重症患者での心拍出量モニタリングは圧波形解析やカテーテルによる熱希釈解析などいろいろな方法があります。
今回は「CO2」で心拍出量をおおまかに把握できる方法をご紹介します。ちなみに「P(cv-a)CO2」と呼ばれています。
P(cv-a)CO2の Point!
・静脈血(v)と動脈血(a)の二酸化炭素分圧の差のこと
・6mmHgより低ければ心拍出量が高い
・酸素消費量(VO2)の影響を受けるが、ヘモグロビン(Hb)や動脈血酸素飽和度(SaO2)の影響は受けない
P(cv-a)CO2はひとことで言うと
「静脈血と動脈血の二酸化炭素分圧の差」です。
動脈血と静脈血の血液ガス分析からわかります。
これをどのように使うのか
結論から言うと
P(cv-a)CO2でおおまかな「心拍出量」がわかります。
二酸化炭素から心拍出量がわかる?
総CO2産生量(VCO2)は下になります。
VCO2:総CO2産生量
CO:心拍出量
CvCO2:混合静脈血CO2含量
CaCO2:動脈血CO2含量
ここから変換すると(省略します)
になります。
二酸化炭素が多く産生されればP(cv-a)CO2が上がり、
心拍出量が上がればP(cv-a)CO2は下がります。
虚血により心拍出量が低下すると静脈でCO2がうっ滞するためP(cv-a)CO2が上昇します。
P(cv-a)CO2は6mmHg以下が望ましいと言われています。
HbやSaO2は関係ない!?
総CO2産生量(VCO2)/酸素消費量(VO2)はいわゆる呼吸商(R)で、酸素消費量が上がれば、二酸化炭素も増えます。燃やす薪が増えれば産生されるCO2も当然増えます。
ヘモグロビン(Hb)や動脈血酸素飽和度(SaO2)が低下すると酸素運搬量(DO2)も低下するので酸素消費量(VO2)が減少、総CO2産生量(VCO2)も減少します。静脈血二酸化炭素分圧(PvCO2)は上昇しないのでP(v-a)CO2も上昇しません。燃やす薪が減れば産生されるCO2も当然少ないという考え方です。
乳酸の関係
心拍出量(CO)や動脈血酸素飽和度(SaO2)、ヘモグロビン値(Hb)からなる酸素運搬量(DO2)がある程度確保されていれば組織で好気性代謝が行われ、乳酸値は上がりませんが組織で酸素がうまく利用されない細胞変性低酸素症になると乳酸値が上昇します。いわゆる乳酸アシドーシスです。
乳酸アシドーシスは
酸素運搬量(DO2)低下
低心拍出量、低酸素血症、貧血など
合併疾患による代謝低下
肝不全、腎不全、敗血症、糖尿病、悪性腫瘍など
薬物・中毒
カテコラミン、プロポフォール、エタノールなど
があります。
この場合、使用している薬剤に疑いがなければ合併疾患が考えられます。組織でうまく酸素が代謝されないため、乳酸値が高いうえに静脈血酸素飽和度(SvO2)も高いという場面が見られます。
乳酸は実は常に産生されていて主に肝臓、次に腎臓で代謝されます。なので産生過剰だけでなく排泄障害でも乳酸値は上昇すると言われています。
また極端に値が高くないとpHとそこまで相関しないと言われています。
P(cv-a)CO2を使った循環動態管理
ScvO2、乳酸値、P(cv-a)CO2を用いた敗血症性ショックの初期蘇生フローチャートが発表されています。参考までに↓
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血ガス はこちら
その他の記事 はこちら(HP)
参考にした資料
[雑誌]酸素療法(INTENSIVIST,2018)