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やさしく「PiCCOモニタ」をまなぶ

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通常の生体情報モニターは血圧や心拍数とかをモニタリングしますが、重症患者は「もっと細かくバイタルを見たい」と思うものです。そこで、心拍出量や肺血管外水分量などの「細かい循環動態」をモニタリングできるのがPiCCOモニターです!

PiCCOモニタ





かんたんにモニタリング項目を説明

心拍出量(Output)

心拍出量(CO)をモニタリングできます。PiCCOで測定したCOは「PCCI」と呼ばれます。次に説明する「前負荷」「後負荷」「心収縮力」が改善すると心拍出量は上昇します。なので「前負荷」「後負荷」「心収縮力」の総合的な指標になります。

前負荷量(Preload Volume)

1回拍出量変動率(SVV)や脈圧変動率(PPV)、心臓拡張末期容量(GEDI)をモニタリングできます。主に「輸液量」「利尿量」「除水量」の指標になります。

・後負荷(Afterload)

体血管抵抗(SVRI)をモニタリングできます。主に「昇圧剤投与量」の指標になります。

とくに末梢を絞める「ノルアドレナリン」とか

・収縮力(Contractility)

全駆出率(GEF)をモニタリングできます。主に「昇圧剤投与量」の指標になります。

とくに心臓の収縮力を上げる「ドブタミン」とか

・臓器機能(Organ Function)

重症患者は、重症なほど肺などのスペースに水が溜まりやすいです(肺炎・胸水)。PiCCOは肺血管外水分量(ELWI)や肺血管透過性(PVPI)をモニタリングできます。主に「利尿量」「除水量」の指標になります。重症度の把握にも役立ちます。





PiCCOで考える治療のフローチャート

実際にPiCCOを使って治療をする際の考え方をご紹介します。↑上の図

詳しくはこちら →循環動態の考え方

モニタリング中に心拍出量(CO)の値が基準値から外れていると前負荷や後負荷、HRに問題があることを示します。

SvO2の値が基準値から外れていると、VO2やDO2に問題があることを示します。

問題がわかれば、解決するための治療(輸液や昇圧剤調整)を行います。

このように重症患者ではモニタリングの値を読みとり、問題を探すためにPiCCOなどの循環動態モニターが存在します。

※カテーテルの挿入位置が悪かったり、接続方法や校正に問題があると正しい値が測定されないことがあります。





いざ!PiCCOをセッティング

PiCCOの電源を立ち上げると身長や体重などの「患者情報」を入力します。

患者情報はモニタリングの計算に使用するので、PiCCOに必要な情報になります。

測定に必要な測定ラインは「静脈」と「動脈」になります

静脈には右内頚静脈、動脈には大腿動脈がよく使われます

それぞれ専用のカテーテル、コネクタをつけたらPiCCOのケーブルと接続します。

PiCCOに取り込むものは、ケーブルごとに分類すると「動脈圧(AP)」「中心静脈圧(CVP)」「熱希釈」になります。

動脈カテーテル→APとCOに接続

静脈カテーテル→CVPとCOに接続

接続後は画面でAPとCVPの0点校正を行えば初期設定はOK!

※CVPは数値を「手入力」することもできます。

続いて「熱希釈測定」を行います。

画面の「TD」をタッチして、熱希釈の測定画面にいきます

「START」をタッチして、「静脈カテーテル」から冷却した注入液(例:8℃以下の生理食塩液)を15mL急速に注入します。

この作業を3~5回行います。

これで心拍出量や肺血管外水分量などの項目が測定できます。

定期的に測定した方が誤差が少なく値が信頼できるでしょう(1日1回とか)

測定結果も大事ですが、トレンド(変化値)を参考にするのも治療のコツです。定期的に熱希釈測定します。

※SvO2も測ってみる!

PiCCOに付いているCeVOXと呼ばれるカセットとCVカテから挿入する専用プローベを接続することでSvO2が測定できます。

写真引用:[HP]フクダコーリン(access:2022/12/19)





かんたんにPiCCOの測定原理

・原理1「熱希釈」

先ほどから何度も言っている「熱希釈」ですが、

冷却液が「静脈→肺→動脈」を通ってきた時の温度を測定します。この温度が伝わったスピードで「心拍出量」がわかります。温度が到達する早さは容量に依存するからです。ステュワート-ハミルトン法と言います。ここでわかった「心拍出量」とPiCCO装置に入力した「身長・体重」からELWI(肺血管外水分量係数)やPVPI(肺血管透過性係数)が算出されます。

・原理2「動脈圧とCVPから連続測定」

装置に入力される動脈圧(AP)と中心静脈圧(CVP)から1心拍ごとに計算されSVV(1回拍出量変動率)やSVRI(体血管抵抗係数)などがリアルタイムで分かります。持続圧波形解析(パルスカンタ)法と言います。先ほど「熱希釈」で測定した心拍出量もこの原理からリアルタイムで変化していきます。









かんたんに適用と禁忌

循環動態が不安定な重症な患者に使われるので、集中治療においてはすべての患者が適用になります。敗血症や多臓器不全によく使用されます。

カテーテルを用いて測定(侵襲的)するので、中心静脈カテーテルの留置が禁忌の患者はPiCCO2も禁忌になります。あと圧波形解析を行うので圧波形が変わるIABP装着患者は測定値が正しくないです。圧波形解析に関係のない経動脈熱希釈法なら使用できます。





[参考資料]PiCCOの測定項目と基準値

心拍出量(Output)
 PCCO 4.0~8.0 L/min 連続心拍出量
 PCCI =PCCO/BSA 3.0~5.0 L/min/m2 連続心係数
 CO 4.0~8.0 L/min 心拍出量
 CI =CO/BSA 3.0~5.0 L/min/m2 心係数
 SV 60~100 mL 1回拍出量
 SVI =SV/BSA 40~60 mL/m2 1回拍出量係数
前負荷量(Preload Volume)
 GEDV mL 心臓拡張末期容量
 GEDI =GEDV/BSA 680~800 mL/m2 心臓拡張末期容量係数
 ITBV mL 胸腔内血液容量
 ITBVI =ITBV/BSA 850~1000 mL/m2 胸腔内血液容量係数
 SVV 0~10 % 1回拍出量変動率
 PPV 0~10 % 脈圧変動率
 CVP 5~10 mmHg 中心静脈圧
後負荷(Afterload)
 SVR 800~1200 dyn・sec・cm-5 体血管抵抗
 SVRI =SVR×BSA 1700~2400  dyn・sec・cm-5・m2 体血管抵抗係数
 MAP 70~105 mmHg 平均血圧
 APsys mmHg 収縮期血圧
 APdia mmHg 拡張期血圧
収縮力(Contractility)
 GEF 25~35 % 全駆出率
 CFI 4.5~6.5 /min 心収縮機能係数
臓器機能(Organ Function)
 EVLW mL 肺血管外水分量
 ELWI =EVLW/PBW 3~7 mL/kg 肺血管外水分量係数
 PVPI 1.0~3.0 肺血管透過性係数
 CPO W 心泊出力
 CPI =CPO/BSA 0.3~0.5 W/m2 心泊出力係数
その他
BSA m2 体表面積  身長と体重
PBW kg 予測体重   身長と年齢と性別





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参考にした資料

[参考書]救急・ICU患者のME機器からみた呼吸・循環管理(2018)

[参考書]ECCE(Edwards,2015)
↑無料で見れます。


[文献]各種循環動態モニタ-装置の比較─グラフィック機能の有用性-(医機学,2013)


[総説]集中治療における非侵襲的心拍出量モニタ(日集中医誌,2010)

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