「血圧」と聞けば誰もが動脈圧をイメージしがちですが
患者のバイタルを知るには静脈圧(CVP)も貴重な情報になります。
今回はそんな「中心静脈圧」についてご紹介します。
中心静脈圧(CVP)の Point!
・静脈圧モニタリングは中心静脈圧(CVP)と肺動脈楔入圧(PAWP)の2つ!
・わかる情報は「血液量」と「右心機能」(特にトレンドが参考になる)
・PEEPの影響を受ける
・輸液開始より「輸液停止」の参考になる。
中心静脈圧(CVP)とは
中心静脈圧(CVP)は静脈にかかる圧力のことで、血液量が多かったり心機能が悪いとCVPは高くなります。
なので、CVPは主に「血液量」と「右心機能」の評価に使用されます。
最近は重要視されなくなってきましたが「値そのもの」より「経過による変化値(トレンド)」は参考になるといわれています。
基準値CVP:2~6mmHg
CVPは静的指標とも呼ばれていて、輸液の判断にはSVVなどの動的指標の方が良いと言われています。
カテーテルから測定
CVカテーテルを静脈に留置し、圧トランスデューサで中心静脈圧(CVP)を測定します。
CVカテーテル
圧トランスデューサ
高さによって圧が変化し誤差になるので、圧トランスデューサは心臓(右房)と同じ高さに合わせます。
CVカテーテル内頸静脈や鎖骨下静脈から入れ、先端が右心房から2cm手前が良いと言われています。
上大静脈の深部は心膜内にあるため深すぎると心タンポナーデになる可能性があります。また、深すぎて洞結節に触れると不整脈の要因にもなります。浅い位置だと血管径が細いため、先端が血管壁に張り付いて逆血できないことがあります。
CVカテーテルは深すぎず、浅すぎない位置で留置します。
CVカテーテルは圧測定以外にも薬剤の投与目的で使用されます。
CVカテーテルでは中心静脈圧を測定します。他にも同じ静脈圧である「肺動脈圧楔入圧(PAWP)」を測定できるスワンガンツカテーテルもあります。
肺動脈圧楔入圧(PAWP)は肺高血圧や重症患者に使用されます。
PAWPを測れるスワンガンツカテーテル
肺動脈末端に留置します。
CVPの波形
CVPの波形は心房収縮時と心室収縮時、三尖弁が閉じて右心房に血液が充満する時の3回立ち上がります。
心電図で心房の脱分極(A)が起こると心房が収縮し、時間差で中心静脈圧(CVP)と肺動脈楔入圧(PAWP)波形が立ち上がります(A)
右心室圧(RVP)と左心室圧(LVP)の波形も少し立ち上がります(A)
心電図で心室の脱分極(V)が起こると心室が収縮し、時間差で血圧波形が立ち上がります。(V)
心房に比べ心室の収縮は強いためすべての血圧波形で立ち上がりが見られます。
※ CVP≒RAP
※ PAWP≒LAP
CVP波形の読みとり
CVPが上昇する状態は
循環血液量↑
・輸液のしすぎ
・末梢血管収縮
心機能↓
・右心不全
・三尖弁・肺動脈弁の狭窄・逆流
・肺高血圧
・心タンポナーデ
・収縮性心膜炎
陽圧換気
・高いPEEP設定
CVPが低下する状態は
循環血液量↓
・脱水
・末梢血管拡張
数値もですが、波形が変わることもあります。
上の心タンポナーデなどの病態に加えて、心房細動やペースメーカー(Vペーシング)でA波がなくなる人もいます。
循環血液量とCVP
循環血液量が多いと心臓の入口に集まる血液量が増え、中心静脈がパンパンに張り、血管内の圧力(CVP)が増加します。
心機能とCVP
心臓の収縮力が弱いと心臓から血液がうまく拍出できず、心臓の入口に血液量が溜まり、中心静脈がパンパンに張り、血管内の圧力(CVP)が増加します。
血管状態とCVP
末梢血管が拡張すると静脈血管内の容積が増え、心臓に返ってくる血液量が減ります。そのため中心静脈が虚脱し、CVPが低下します。逆に血管が収縮するとCVPが増加します。先ほど説明した「循環血液量とCVP」と同じ考えです。
PEEPとCVP
人工呼吸器を装着するとPEEPなどの陽圧換気で胸腔内圧が上昇しCVPが上昇します。PEEPは5cmH2OでCVPは1mmHg上昇すると言われています。
他にも肺状態、弁膜症、不整脈、薬剤などでもCVPは変動するため、現場でもCVPの解釈には難渋します。
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動脈圧(BP) はこちら
その他のモニタリング はこちら
輸液 はこちら
その他の記事 はこちら(HP)
参考にした資料
[参考書]ICUのモニタリング(重症患者ケア,2015)
[参考書]ECCE(Edwards,2015)
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