PCPS ECMO 補助循環

やさしく「ECMO周辺のモニター」をまなぶ

投稿日:6月 30, 2019 更新日:

ECMOの回路については以前にご紹介しました。(詳しくはこちら

ECMO周辺には圧モニターや血ガスモニターなど多くの装置がついています。

これらはECMOを「安全に」治療するために必要な装置になります。

普段使っている人工呼吸器もECMOがついていると使い方が変わってきます。

人工肺と遠心ポンプの単純回路もわかりやすくて魅力的ですが、治療の手助けになるオプション装置について今回はご紹介します。

ECMO周辺装置の Point!
・圧力モニタ、血ガスモニタ、rSO2モニタなどはECMOの治療状況とトラブルを把握するのに必要
・人工呼吸器、インペラー、冷温水槽などの治療機器はECMO患者で使い方が変わってくる

個々で使用されることもありますがECMOありきの使い方がありますので今回は記事にしてみました。





冷温水槽

人工肺に加温した水を流し、血液を加温・冷却する機器です。

ECMO治療中は体外循環により血液が体外で冷やされるので、体温が低下ぎみです。

冷温水槽を用いると血液温・体温が調整できるため、体外循環中の体温調整が簡単になります。

基本の温度は37℃、40℃未満で設定し、体温を見ながら調整します。

冷温水槽の水と血液は通常は接触しませんが、人工肺の破損で接触する可能性があり、感染のリスクがあります。その際は冷温水槽に血液やタンパク質が見られることがあります。点検時は消毒液で洗浄し、できるだけ清潔に保管します。

低体温療法を行う場合は、こちらの冷温水槽を用いることで体温調節が可能です。ECMOの遠心ポンプ流量が多いほど冷温水槽の効果も大きいです。





血液ガス分析装置

体外循環中の血液ガス血算電解質をリアルタイムで表示するモニターです。ガス調整が容易に行え、履歴機能から変化が捉えやすいです。キャリブレーションが必要なモニターもあるため、定期的にキャリブレーションします。





ビジランスII

スワンガンツカテーテルを用いて、心拍出量・右心内圧・静脈血酸素飽和度を測定、表示する機器です。使われることが少なくなりましたが最近でも心機能が悪い人に使用する人が多いです。理論上VA ECMO中は(右)心拍出量・右心内圧は低値で、ECMO流量を落とすと肺血流↑のため(右)心拍出量・右心内圧は高値になります。離脱の指標に使います。





ベアハッガー

人工肺出口側を温めることで結露の発生を防止し、ウェットラング予防に使用します。定期的なガスフラッシュでも管理は可能ですが、ガス交換能の変動がなく、管理する側の負担も減ります。





rSO2モニター

装着部(脳・腕・足・胸背部など)の深部にある微小血管のrSO2(局所混合血酸素飽和度)を低侵襲で測定する機器です。ECMO中は脳や足につけることが多く、局所的な酸素需給・循環の変化を観察します。VA ECMOはミキシングゾーンによる脳の酸素化状態を観察し、足は送血部位が虚血していないかを観察する目的で使用します。導入時に大腿部では送血方向とは逆向きに4、5FrのシースやAラインを枝回路にて送血し下肢虚血を予防する施設もあります。  





圧モニタリング

主に脱血側、人工肺入口側、送血側(人工肺出口側)の回路内圧を測定し、ECMO中のトラブルを観測する目的で使用します。

脱血圧
→脱血状態がわかる(血管内脱水やカニューラ位置不良など)
 -300mmHgを超えないようにします(溶血するリスクがある)

人工肺入口圧
→人工肺と送血側の状態がわかる(人工肺目詰まりなど)

送血圧
→送血側の状態がわかる(カニューラや回路の折れ曲がり)
 400mmHgを超えないようにします

ECMO治療中は遠心ポンプ流量の低下がしばしばみられますが、回路内圧を測定しておくと、脱血側の問題か、送血側の問題か原因の発見に役立ちます。最近ではECMO装置本体に搭載している機器が増えてきています。

他にも人工肺ガス側の内圧を測定することもあります。人工肺に流すガス圧が血液側の圧力超えると血液に空気が混入し、空気塞栓を起こすリスクがあるからです。人工肺は患者より低い位置に設置します(落差圧で予防)。人工肺も日々改良され空気混入はあまり起きませんが、リスクは最小限にします。





ACT(活性化凝固時間)測定器

ACTは約150~250秒になるよう抗凝固剤で調整します。出血や凝固の評価でACTを調整します。APTTで管理する施設もありますが、ACTはベッドサイド上で測定ができ、簡便です。  





人工呼吸器

原理上、VA ECMOでは自己心拍がない状態で人工呼吸器による換気の必要はないため、レストラング(肺を休ませる)設定が望ましいです。自己心機能が回復するまでの間はFIO2は40%以下、吸気プラトー圧は25mmHg以下、PEEPは5~15mmHgで虚脱予防し、呼吸数4~10/minまで減らすと推奨されています。  





IABP(大動脈バルーンパンピング)

IABPは下行大動脈にバルーンを留置し、心臓の拡張期にバルーンを拡張、心臓の収縮期にバルーンを収縮させ、心臓の圧補助を行う装置です。VA ECMOで冠動脈の酸素化・循環の改善を目的に使用することが多いです。  





血液浄化装置

ECMO導入時は無尿や少量の濃縮尿(心不全からなる腎前性腎不全)になることが多く、電解質異常をきたすことも多いため、CHDFなどの血液浄化を行うことが多いです。ECMO回路から血液浄化のアクセスをする施設も増えていますが、空気混入、大量出血の危険性があるため三方活栓の操作には十分注意します。安全性から血管からのアクセスが推奨されています。





Impella(インペラー)

インペラーは順行性に流れるカテーテルを左室、大動脈基部に留置し、心臓の流量補助を行う装置です。VA ECMO時は左室の後負荷が増大するため、ベント目的でImpellaを併用することが多いです。小さいサイズのカテーテル(2.5)を使用することが多いです。エクモ+インペラーで「エクペラ」と呼ばれています。





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その他の記事  はこちら(HP)





参考にした資料

[参考書]ECMO・PCPSバイブル(各学会,2021)

[参考書]呼吸ECMOマニュアル(2014)

[雑誌]ECMO(INTENSIVIST,2013)

[指針]ELSOガイドラインHP(各学会)
↑無料で見れます。

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