大動脈バルーンパンピング(IABP:intra-aortic balloon pumping) の一番の目的は「冠動脈血流の増加」です。
冠動脈は心臓に酸素を送る栄養血管です。
IABPは後負荷軽減や酸素消費量軽減などの文言があって目的がイマイチわかりにくいですが、一番の目的は冠血流の増加です。
今回はそんなIABPの目的についてご紹介します。
IABPのPoint!
・IABPの一番の目的は冠血流の増加
・冠血流は心臓の「拡張期」に流量が多い
・IABP心臓の拡張期にバルーンを膨らませて冠血流を増やす
心臓の栄養血管である冠動脈は心臓の拡張期で一番血液が流入します。
この冠動脈の生理学をもとに、拡張期にバルーンを膨らませて冠動脈の血流を上げる目的で作られたのがIABPです。
大動脈バルーンパンピング(intra-aortic balloon pumping)といいます。
心臓:収縮期 → バルーン:収縮(inflation)
心臓:拡張期 → バルーン:拡張(deflation)
することで心機能を補助します。
バルーンの先端を
遠位大動脈弓の先端(aortic knob)
もしくは
気管支分岐部(carina)の2cm上
に透視下で留置します。
バルーンを膨らませるガスにはヘリウム(He)が使用されています。
原子番号「2」分子量「4」と軽いため応答性が良く、希ガス(第18同族元素)であるためバルーンが破裂しても血液中の物質と結合しません。
ダイアストリックオーグメンテーション
心臓の栄養血管である冠動脈はおもに心臓の拡張期に血液が流入します。
心臓の拡張期にバルーンを拡張することで冠動脈の血流を増加させます。
これを「ダイアストリックオーグメンテーション」といいます。
心筋の酸素供給量↑、拡張期血圧↑、平均動脈血圧↑などの効果があります。
オーグメンテーション圧は90mmHg以上、平均血圧は60mmHg以上が望ましいと言われています。
シストリックアンローディング
心臓の収縮期にバルーンを収縮することで大動脈内の圧が下がり、左室が血液を駆出しやすくなります。(心臓の後負荷軽減)
これを「シストリックアンローディング」といいます。
心筋の酸素消費量↓(心仕事量↓)、収縮期血圧↓などの効果があります。
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参考にした資料
[参考書]臨床工学技士集中治療テキスト(日本集中治療医学会,2019)
[参考書]救急・ICU患者のME機器からみた呼吸・循環管理(2018)
[指針]急性・慢性心不全診療ガイドライン(各学会,2017)