PCPS ECMO 補助循環

やさしく「VA ECMOの生理学」をまなぶ

投稿日:6月 23, 2019 更新日:

ECMOとは

心不全呼吸不全の患者を対象に体外循環によって血液の酸素化、二酸化炭素の除去を行い、動脈あるいは静脈に送血することで、循環と呼吸の補助を行う心肺補助装置の事です。

ここではVA ECMO施行中に体の中で起こっている生理学についてご紹介します。

VA ECMOの Point!
・VA ECMOは静脈から脱血し、動脈へ送血する
・遠心ポンプで循環をサポートする
・遠心ポンプの流量が高いほど心臓に負担がかかるので高すぎる設定は望ましくない
・人工肺で呼吸をサポートする
・自己の心臓による心拍出量が出てきたら、人工呼吸器の設定変更も考慮する(レストラング解除)





血管アクセス

ECMOは脱血と送血を行うためにカニュレーションをします。

カニュレーションは静脈・動脈ともに大腿を選択するのが一般的です。

他にも次の血管が使われます。

脱血管(静脈)
大腿静脈、右内頸静脈、右房、など

送血管(動脈)
大腿動脈、右総頚動脈、腕頭動脈、大動脈、など





遠心ポンプ(心臓の補助)

血液流量が3L/min/m2くらいを目標に遠心ポンプの回転数を調整します。

静脈脱血により前負荷は軽減しますが、動脈送血により後負荷が増大します。

遠心ポンプの流量が高いほど後負荷が上がり、心臓の負担が大きくなってしまいます。

逆に遠心ポンプの流量が低いと、自己の心機能がない限り、全身の循環動態が維持できなくなります。SvO2(70%以上)や乳酸(低いほど良い)が参考になります。

遠心ポンプの流量は高すぎても低すぎてもいけません。

心停止でECMOを導入し、心機能が徐々に回復すれば遠心ポンプの流量を下げていき、循環動態を維持しながら心臓を立ち上げていくイメージを持てば管理がしやすいです。その際、後でお話するミキシングゾーンに気をつけます。

遠心ポンプは定常流なため、ECMOの流量の割合が大きいほど脈圧が小さくなります。

臓器の循環

腎臓には自動調節能があり、少々ならECMOの血流量が低下しても酸素供給が維持されます。
他の臓器(腸管・筋肉など)はECMOの血流量の低下に比例して酸素供給も低下します。

冠動脈の循環

ECMOを開始すると、自己心から拍出される血液(自己肺で酸素化した血液)が冠動脈に入る割合が大きく、自己肺での酸素化が悪い場合は心筋虚血のリスクになります。
IABPを併用するとECMOによって増大した後負荷を軽減(心仕事量低下)でき、冠動脈への血流も増加することが期待されています。
後負荷軽減目的にはLVから脱血を追加しベントさせたり、インペラーを併用した「エクペラ」と呼ばれるやり方も最近の話題です。

末梢の循環

体外循環によって様々な異物に触れるため、炎症反応が起こります。
そこから起因して様々な炎症性サイトカインが血管拡張させたり、血管透過性を亢進させ浮腫が生じたり、臓器によっては血管収縮が起きます。





人工肺(呼吸の補助)

送血側PaO2 100~300mmHg(300mmHg以上で神経学的転帰不良の報告あり)

送血側PaCO2 35~45mmHg(PaCO2の過度な低下は脳血流の低下を招く)

このくらいを目標に人工肺でのガス流量酸素濃度を調整します。

VA ECMOで大腿動脈から逆行性に送血(大腿送血)する場合、ECMOの人工肺で酸素化した血液が全身に流れます。

心臓が回復し、自己心拍出量が増加した時は心臓から出た血液とECMOから血液が上行→弓部→下行大動脈で混ざり合います。

この混ざり合う地点を「ミキシングゾーン」と呼びます。

ミキシングポイントと呼ぶ方もいます。

自己肺での酸素化が悪い場合、もしくは人工呼吸器がレストラング設定になっている時は酸素化されていない血液がそのまま脳へ行き、脳虚血のリスクになります。

レストラング・・・自己肺を休ませること

自己心拍出量の増加を早く気づくためにSpO2血ガス測定用のAラインを右上肢に確保することが重要で、血液ガスを確認しておきます。

右上肢から酸素化の悪い血液が確認できたら、呼吸器の設定を変えるなり、肺だけが悪いなら送血部位を変えたり、VAからVV ECMOに切り替えるのも一つの手です。

心機能が回復すればSpO2が下がるのです。不思議ですよね





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参考にした資料

[参考書]ECMO・PCPSバイブル(各学会,2021)

[参考書]呼吸ECMOマニュアル(2014)

[雑誌]ECMO(INTENSIVIST,2013)

[指針]ELSOガイドラインHP(各学会)
↑無料で見れます。

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