血圧は家庭から臨床現場まで幅広く用いられています。
ICUでは観血式血圧(Aライン)よく使われ、「血圧の波形」を見ることができます。
血圧は値だけでなく、波形から読み取れる情報も豊富にあるので、これを機会にぜひ覚えてほしいです。
今回はそんな「血圧波形」についてご紹介します。
血圧の Point!
・ICUでは血圧が下がることが多い
・疾患によって推奨の血圧値が違う
・血圧波形の面積から「心拍出量」が把握できる
・血圧波形の揺らぎから「血管内の水分量」が把握できる
・測定部が心臓より高いと血圧値が低くなる
疾患ごとの推奨の血圧値
ICUでは重症患者や術後の患者が多く、血管内脱水や出血の影響で血圧低下が見られます。
病態に応じて昇圧剤や輸液(輸血も)を行って対処します。
このように血圧は低下することが多いですが、
実際ではどのくらい許容するのかをガイドラインで示されています。
(抜粋)
心原性ショックは収縮期血圧90mmHg以下で診断に使用される
敗血症では平均血圧65mmHg以上で昇圧剤管理する
などなど
疾患ごとに血圧の考え方が少々違います。
あくまでガイドライン(指針)なので、全患者をこの数値通りにする必要はないです。
モニターや病態を把握したうえで「下限値」を設定するほうが良いです。
血圧の測定方法は2種類
血圧の測定にはカフを巻いて非侵襲で測定できる「非観血式血圧(NIBP)」と穿刺して動脈血圧を直接測定する「観血式血圧」があります。
非観血式血圧
観血式血圧
観血式血圧は血圧の値だけでなく「波形」から情報を得ることもできます。
これから「動脈血圧波形」について解説していきます。
動脈血圧の波形を読み取る
血圧は心臓の収縮時に高値となり、心臓拡張時で低値になります。
文字ばかりで憂鬱になりますが、順を追って説明します。
1心拍中で
一番高い点を収縮期血圧(sBP)
一番低い点を拡張期血圧(dBP)
収縮期血圧と拡張期血圧の差を脈圧(脈圧=sBP-dBP)
平均血圧(mBP)=拡張期血圧+(脈圧/3)
といいます
BP : blood pressure
sBP : systolic blood pressure
dBP : diastolic blood pressure
mBP : mean blood pressure
収縮期血圧波形が大きいほど(面積が広いほど)心拍出量が高いです。
これを数値で解析したのが循環動態モニターのビジレオモニターになります。
重症患者や心臓外科手術後の患者ではよく使用されます。
血圧波形の立ち上がりが高いほど心収縮力が高いです。
動脈硬化や大動脈弁閉鎖不全による病態
などで収縮期・拡張期血圧上昇、脈圧拡大が見られます。
心不全や溢水、循環血液量減少、大動脈弁狭窄による病態
などで収縮期・拡張期血圧減少、脈圧縮小が見られます。
血管内脱水の血圧波形
循環血液量が減少すると血圧波形が呼吸に応じてぐわんぐわんと揺らぎます。
これを「呼吸性変動」といい、血管内脱水を疑います。呼吸性変動を数値化したものがSVVになります。
SVVは循環動態モニターのビジレオモニターで数値として表示できますよ
さらに悪化すると心拍数も上昇します。
大動脈弁の影響による血圧波形
動脈血圧波形は大動脈弁の状態で特殊な波形が見られます。
大動脈弁狭窄
大動脈弁が狭窄してるので収縮が阻害され、うまく拍出されず立ち上がりに時間がかかります。収縮期血圧が下がり、収縮の時間が伸びます。
大動脈弁閉鎖不全
閉鎖時に大動脈弁が逆流(AR)するため、大動脈弁閉鎖時の圧上昇がなく、圧が早く損失します。拡張期では左心房からの流入と大動脈弁逆流によって左心室が充満するため、1心拍の心拍出量は多くなります。その結果、収縮期血圧が上がります。
部位による波形の違い
上肢より下肢の方が血圧は高いです。
元の波と反射波が重なり、また、末梢の方が血管は硬いため、下肢で血圧が高くなります。
血圧測定するなら「高さ」と「校正」
血圧波形は測定器具の黒い部分(トランスデューサ)で測定しています。
トランスデューサ位置による測定誤差
この黒い部分(厳密には少し上にある大気開放部分)が
心臓より低いと血圧値が高い
心臓より高いと血圧値が低い
と誤差がでてしまいます。
黒い部分が10cm心臓より高いと、血圧は8mmHg低く表示されます。
黒い部分(圧トランスデューサ)は心臓と同じ高さに合わせる必要があります。
カフで測定する血圧と差があったり、入室前と血圧が変わっていたりすることがあります。
校正を忘れていると正しい値が表示されないので、立ち上げ時や移動時は必ず0点校正を行います。
<0点校正>
赤矢印のように三方活栓倒し、黒い部分を大気にさらすことで、大気開放となる
モニタ画面で0点校正ボタンを押す
三方活栓を元に戻し、動脈圧を測定する
モニターの電源電圧の変動で0点が変動することがあります(ドリフト現象)。
測定前に早めに電源を入れておくとよいです。ドリフトが発生しても0点校正を行えば正しい値を測定できます。
材質による異常波形
材質そのものが柔らかかったり、長かったりすると回路に振動が発生し、波形が変化することがあります。
急速フラッシュテスト(矩形波テスト)で振動数が1~2回くらいがちょうどいい波形といわれています。
測定ラインは「太い」「短い」「硬い」ものを使用し、必要に応じてダンピングデバイスを使用すると改善します。
「なまり」波形は穿刺針が血管壁に当たっていることが多いので、針の位置を調整することで改善します。
回路内に気泡があっても波形がなまることがあるので、回路内の気泡は除去します。
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参考にした資料
[参考書]ICUのモニタリング(重症患者ケア,2015)
[参考書]ECCE(Edwards,2015)
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