薬剤・輸液 集中治療室(ICU)

輸液の使い分け(輸液の種類)

投稿日:1月 16, 2021 更新日:

普段当たり前のように行っている輸液ですが、患者にとって最適な輸液を選べているでしょうか。

輸液製剤の中身を知ることが最適な輸液をする第一歩です。

輸液の種類と中身についてお話します。





5%ブドウ糖液

「ブドウ糖(Glu)」で作られている輸液製剤です。

500mlの水に25gブドウ糖(5%)が入っている輸液です。「5%TZ(5プロツッカ)」と呼ぶことがあります。ドイツ語です。

ブドウ糖は体液全体を移動でき、代謝された後は水になるので、結果的に「体液全体の補充」になります。

高張性脱水(高Na血症)や慢性脱水で使用します。

ブドウ糖液はブドウ糖を5%にすることで

血漿浸透圧は約280mOsm/l(浸透圧比1)
膠質浸透圧は0mmHg

になります。





等張電解質液

「電解質」で作られている輸液製剤です。

ブドウ糖が入っておらず、細胞外液を自由に移動できる電解質のみなので「細胞外液の補充」になります。

等張電解質液の種類は「生理食塩液」と「リンゲル液」があります。

生理食塩液は

血漿浸透圧は約280mOsm/l(浸透圧比1)
膠質浸透圧は0mmHg

リンゲル液は

血漿浸透圧は約260mOsm/l(浸透圧比0.9)
膠質浸透圧は0mmHg

がほとんどです。

リンゲル液では浸透圧比は0.9と下がりますがこの程度なら問題ないです。

等張電解質液の種類は「生理食塩液」「乳酸リンゲル液」「酢酸リンゲル液」「重炭酸リンゲル液」があります。

生理食塩液

ナトリウム(Na)とクロール(Cl)からなる塩化ナトリウム(NaCl)のみ入っています。

人体にはナトリウム以外にカリウムやカルシウムなどの電解質が含まれています。それらの電解質も入れてより人体の組成に近づけたものが次に説明する「リンゲル液」になります。

乳酸リンゲル

生理食塩液より細胞外液の組成に近づけた等張電解質液です。

ナトリウム(Na)とクロール(Cl)以外にカリウム(K)やカルシウム(Ca)、乳酸(Lac)などが入っています。

乳酸は代謝されると重炭酸(HCO3)になります。

ソルラクト、ラクテックなどがあります。

酢酸リンゲル

乳酸リンゲルと同じように細胞外液の組成に近づけた等張電解質液です。

乳酸の代わりに酢酸(Acetate)が入っています。

酢酸は代謝されると重炭酸(HCO3)になります。

ソルアセトFやソリューゲンFなどがあります。

重炭酸リンゲル

重炭酸(HCO3)は体内での代謝を必要としないため、代謝が遅れる肝機能障害やショック状態、救命救急領域でよく使用されます。

重炭酸保存の関係で少量のクエン酸(Citrate)も入っています。

昔は重炭酸リンゲル液が高価で乳酸リンゲル液や酢酸リンゲル液が多く使われていましたが、最近は重炭酸リンゲル液も安価になってきているので今後は使用頻度が増えるかもしれません。

ビカネイトやビカーボンなどがあります。





低張電解質液

「ブドウ糖(Glu)」と「電解質」で作られている輸液製剤です。

「ブドウ糖も入れたいし電解質も入れたい」という目的で作られたもので、体液全体を補充しますが、細胞内液より細胞外液の方が多くなります。

高張性脱水(高Na血症)や慢性脱水で使用します。

浸透圧比1の5%ブドウ糖液と浸透圧1の等張電解質液を混ぜて作るので、低張電解質液の浸透圧比は当然1になります。

低張電解質液の

血漿浸透圧は約280mOsm/l(浸透圧比1)
膠質浸透圧は0mmHg

がほとんどです。

低張電解質輸液の種類は「1号液」「2号液」「3号液」「4号液」があります。

1号液

カリウムが入っていないため、病態不明の救急外来時やカリウムを入れたくない腎不全で使用します。

ソリタT1号やKN1号などがあります。

2号液

細胞内の電解質を多く入っています。

ソリタT2号やKN2号などがあります。

あまり使われていないです。

3号液

人が摂取する1日で必要な水分、電解質が入っています。「維持液」とも呼ばれます。

ソリタT3号やKN3号、フルクトラクトなどがあります。

4号液

電解質濃度が低く、自由に移動できる水が多いです。細胞内への水補給目的で使用します。

「術後回復液」とも呼ばれます。

ソリタT4号やKN4号などがあります。

あまり使われていないです。





血漿増量剤

血漿増量剤は分子量が万単位の「高分子物質」を含む輸液製剤です。

血管内のみを移動する高分子物質は膠質浸透圧を上げ「血管内の補充」をします。

「代用血漿剤」とも呼ばれます。

点滴投与後は、高分子物質がアルブミンなどの血漿タンパクと同様に血管内のみに分布し、血管内の水分を保持します。

理論上はアルブミン製剤と同じ効果ですが、アルブミンは血液製剤なので血漿増量剤の方がはるかに安価です。

急性出血などリンゲル液のみでは循環血液量が十分に回復しない場合や、心臓手術時などの体外循環灌流液として使われます。

血漿増量剤の種類は低分子デキストラン製剤やHES(ヒドロキシエチルデンプン)製剤などがあります。

国内でのHES製剤はヘスパンダ―やサリンヘス、ボルベンがよく使われ、分子量7万~13万で濃度は6%ほどになります。

HES製剤の

血漿浸透圧は約280mOsm/l(浸透圧比1)
膠質浸透圧は36mmHg

がほとんどです。

膠質浸透圧は36mmHgと人体の正常値の25mmHgより高いですが、腎臓ですぐに代謝されるHESもあるため実際は25mmHgくらいになります。





アルブミン製剤

血液から作られる血液製剤です。

血液から膠質浸透圧に関係するアルブミン(Alb)を抽出し、人体に投与できるよう製剤化したものです。

血漿増量剤と同じように「血管内の補充」になります。

アルブミン製剤は5%、25%、20%と種類があります。

5%(250ml)アルブミン製剤の

血漿浸透圧は約280mOsm/l(浸透圧比1)
膠質浸透圧は20mmHg

くらいになります。





最適な輸液選択はまず「細胞外液を補充」もしくは「細胞内液も補充」の2通りに大きく分かれます。

例1:出血

出血は血液が失われている状態なので、細胞外液の補充が良いでしょう。輸液製剤は「等張電解質」もしくは「血漿増量剤」になります。

ここでは説明していないですが必要に応じて輸血を行います。

例2:脱水

体液全体が失われている脱水では細胞内液も補充するのが良いでしょう。輸液製剤は「低張電解質」高Na血症があれば「5%ブドウ糖液」になります。

このように大きく2分類できますが、そこからさらに「補充したい電解質」「補充したくない電解質」を考えながら輸液製剤を細かく選んでいくと良いです。

例えば下痢では腸液に含まれる重炭酸(HCO3-)が失われるので「リンゲル液」を輸液します。

逆に嘔吐では胃液に含まれる酸(H)とクロール(Cl-)が失われるので「生理食塩液」を輸液します。

不安であれば血液検査で電解質を見て輸液を選択するのもありです。ICUでは毎日測定するので電解質を見ながら輸液を決定しています。

よく使われる輸液製剤で一覧を作りました↓

細かい組成は製品によって少し差はありますがどれも似たような組成です。





まとめ

5%ブドウ糖液は体液全体
低張電解質液は体液全体(細胞外液多め)
等張電解質液は細胞外液
血漿増量剤とアルブミン製剤は血液

の補充を目的としています。





大塚製薬のホームページに輸液についての解説が記載されています。

とても分かりやすくて無料なのでこちらも参考にしてください。

大塚製薬(水・電解質輸液)

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