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人工呼吸器の回路をうまく選択する方法!加湿の違いで選ぶ

投稿日:4月 12, 2020 更新日:

人工呼吸器の回路と構造についてご紹介したいと思います。

回路は人工鼻回路と加温加湿回路の2種類あるのでそちらの使い分けもご紹介したいともいます。

人工呼吸器回路のPoint!
・回路は「人工鼻回路」と「加温加湿回路」の2種類!
・痰が堅ければ加温加湿回路、水分が多ければ人工鼻回路を使う
・回路交換はできるだけしない方が良い





人工呼吸器の構造

配管から酸素と空気をミキサーでブレンドし、混合ガスを作ります。

人工呼吸器には吸気弁と呼気弁がついていて、

吸気時は
吸気弁→開く 呼気弁→閉じる

呼気時は
吸気弁→閉じる 呼気弁→開く

という仕組みです。





人工呼吸器の「加湿」の必要性

本来、吸気時は体温によって加温され絶対湿度が上がり、気道内の水分で相対湿度も上がります。呼気時は口腔外に排出されるまで、相対湿度は100%に保たれたまま排出されます。

絶対湿度は1Lの空気に溶け込んでいる水分の量を表します。

40℃では最大52mg/Lの水分が溶け込むことができます。

温度が上がるにつれて、溶け込むことができる水分の量も増加します。

相対湿度は、ある温度で最大の絶対湿度に対して水分量の割合(%)を表します。

40℃では最大52mg/Lの水分が溶け込めるのに対し、絶対湿度が26mg/Lであれば相対湿度は50%となります。



人工呼吸器で使用する配管ガスは「乾燥されている」ため加湿する必要があります。

乾燥されたガスを加湿せず、そのまま換気に使われると、気道粘膜の乾燥・線毛運動低下・損傷、痰の固形化、痰によるチューブ閉塞、無気肺、肺炎などなど、リスクがあります。

加温加湿方法の違いで「加温加湿回路」と「人工鼻回路」の2種類があります。





人工呼吸中の加温加湿の評価

温度モニタ―はありますが、湿度モニターはないため、主観的な評価になります。

加温加湿回路
・喀痰がやわらかくなっていること
・吸気末端で32~37℃になっており、結露があること
・気管チューブ内に結露・水滴があること
・気管内吸引カテーテルがスムーズに入ること

人工鼻回路
・喀痰がやわらかくなっていること
・人工鼻より患者側に結露があること
・気管チューブ内に結露・水滴があること
・気管内吸引カテーテルがスムーズに入ること





加温加湿回路

滅菌蒸留水を加温加湿器で温めて吸気を加湿します。

加温加湿器上のプレートと吸気側回路のヒーターワイヤー(赤いぐるぐる)の2ポイントで加温加湿します。温度プローブをつけることで加温加湿器出口と患者の吸気直前の温度を把握することができます。

呼気側にウォータートラップをつけることで加湿された呼気の結露を除去することができます。現在ではウォータートラップではなく呼気側も加温し結露を発生させないデュアル回路が推奨されています。

人工鼻と併用すると人工鼻が水分で目詰まりを起こし換気ができなくなるため、禁忌です。患者の移動時に使った人工鼻をそのまま病室に戻って加温加湿回路につける。なんてこともあるため、確認しましょう。

加湿が強いと回路内に水が溜まり回路内が閉塞することもあります。回路内の水は積極的に取りましょう。

他にも加湿器の設定を変えたり、部屋の温度を上げたりして対処できますが、問題になる場合は次に説明する「人工鼻回路」に切り替えましょう。





人工鼻回路

加湿されている患者の呼気(水分と温度)を温存して吸気に使う仕組みです。

~人工鼻のメリット~

加温加湿回路に比べて回路がシンプルで分かりやすいです。吸気と呼気が同じなので、回路を逆につけ間違えても問題ないです。お値段も安いです。人工鼻とバクテリアフィルター(呼気フィルター)が似てるので、間違えないようにしましょう。バクテリアフィルターのとこに人工鼻をつけると、呼気抵抗が増加します。人工鼻のとこにバクテリアフィルターをつけると、加温加湿されません。

人工鼻は病原体をトラップするので、免疫力低下症例・気道感染症例・空気感染を起こす可能性がある感染保菌者は人工鼻の使用が望ましいとされています。コロナで流行しましたね。

術中・術後の短期間使用も人工鼻が向いています。

在宅の人工呼吸ではある程度の湿度がある室内気を取り込むので、人工鼻のデメリットである加湿不足を補ってくれます。

呼吸器回路に取り付けるETCO2モニターは、結露に弱いため加温加湿器より人工鼻回路が有利です。このとき、人工鼻より機械側にカプノメータ(ETCO2を測定するコネクタ)を取り付けます。



~人工鼻のデメリット~

加湿能力は加温加湿器に比べて劣ると言われています。加湿が不十分なことがあります。

気道の分泌物が人工鼻につくと閉塞するリスクがあります。その場合は「加温加湿回路」に切り替えます。泡沫痰を吹き出す肺水腫、気道出血などです。

大量のガスリークで呼気が少ない(戻らない)病態は人工鼻で加温加湿されません。気管支瘻やカフなしチューブ使用例などです。

また、人工鼻がある分「死腔」が増え、「抵抗」も上がります。強制換気では抵抗は問題ないですが、サポート換気(自発呼吸のある)で二酸化炭素の貯留や呼吸仕事量の増加が許容できないとき、COPD、ARDS高二酸化炭素血症、体格の小さい小児は向いていません。ウィーニングにも向いていません。

これらの理由で人工鼻から加温加湿器に切り替えることがあります。

加温加湿器と併用すると人工鼻が水分で目詰まりを起こし換気ができなくなるため、禁忌です。

ネブライザーも同様に人工鼻との併用は禁忌です。

定量吸入器(MDI)で薬剤を投与するときは人工鼻を一時的に取り外します。





呼吸器回路にひと工夫

人工呼吸器の回路にはETCO2を測定するためにカプノメーターを組み込んだりします。

他にもネブライザーやNO吸入療法などを組み込んでちょっと複雑に見えることがありますが、1つずつ解説しています。





回路の交換時期

「呼吸器の回路はいつ交換すればいいの?」

このような質問をよくいただきます。

結論を言えば

「できるだけ交換しない」

が答えになります。

呼吸器回路は1週間以内に交換するほうが人工呼吸器関連肺炎のリスクは高いと言われています。

意外かもしれませんが呼吸器回路は頻回に交換するほうが危険なのです。

1週間以上に関してはとくに人工呼吸器関連肺炎が増加するというデータは特にありません。

なので、ルーチン(日常的)の回路交換は推奨されていませんが、回路に汚染があったり、リークが起きていれば交換した方が良いです。

また、回路の添付文書にも交換時期が記載されています。「1週間以内に交換すること」と書いてある添付文書もあるため、ガイドラインと矛盾していますね、悩まされます。

実際に当院では2週間で交換を行う部署もあります。

ガイドラインでは加温加湿器のチャンバーは「1週間ごと程度とすること」と言われてます。

回路全体の交換はルーチンが好ましくないが、チャンバーはルーチンが好ましいという内容

チャンバーには滅菌蒸留水を使用しますが、おそらくチャンバーを1週間以上使うと菌が発生するため、ルーチンの交換が良い。と個人的に認識しております。

人工鼻やバクテリアフィルターなどは結露で閉塞することがよくあるので、メーカーの推奨期間で交換したほうが良いです。多くの人工鼻では24時間(メーカー推奨)となっています。個人的にも毎日交換でよいと思います。

[指針]人工呼吸器安全使用のための指針(日本呼吸療法医学会,2011)





加温加湿回路の吸気と呼気を逆につけるとどうなるの?

当院でも吸気と呼気を逆につけてしまった事例が過去にありました。

加温加湿回路では、加温加湿器が呼気側を加温するため、温度の測定部分が加温されず、加温加湿器から温度上昇しないことを知らせるアラームが作動しました。すぐ気づけました。

吸気と呼気を逆につける→数分で加温加湿器からアラームが鳴る

といった経緯ですぐに気づけました。

人工呼吸器の機種によっては、吸気と呼気を逆につけて換気した段階で、人工呼吸器が自らアラーム作動することがありました。同じ会社の人工呼吸器と回路だったため、読み込んでいる?





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参考にした資料

[参考書]人工呼吸ケアのすべてがわかる本(2014)

[雑誌]人工呼吸器(INTENSIVIST,2018)

[指針]人工呼吸器安全使用のための指針(日本呼吸療法医学会,2011)

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