NO吸入療法とは
一酸化窒素(NO)を患者に吸わせて肺血管を拡張させる治療です。
コロナ禍で少し話題になりましたね。
人工呼吸器の回路に取り付けられてるのを見たことがあるかと思います。
今回はそんなNO吸入療法についてご紹介します。
NO吸入療法とは
・ 一酸化窒素(NO) を吸うことで肺血管を拡張させる
・血管拡張薬と違い、 NOはV/Q比が改善されるのが特徴
・呼吸器回路にモジュールを装着する時はドライガス側につける(加温加湿器の前)
・二酸化窒素(NO2)が産生される可能性があるので装置画面をよく観察しておく
一酸化窒素(NO)とは
NOは急速に平滑筋を弛緩させ、その後はヘモグロビン(Hb)とくっついてメトヘモグロビンとなり、NOの効果が不活化されるため、肺血管を特異的に拡張させます。
体血管は拡張せず、肺血管のみを拡張させるため肺高血圧症が適応です。
人工呼吸器のみ
人工呼吸器 + NO吸入
換気の良い肺胞にのみNOが入り肺血管拡張(下の肺胞V/Q比改善)シャント血流↓(上の肺胞V/Q比改善)
V/Q比改善にともなってPO2が上昇します。(換気血流比不均衡の改善)
肺血管拡張薬では肺血管全体を拡張させるため、低酸素性肺血管攣縮(HPV)部分の肺血管も拡張させてしまい、シャント血流が増加してしまいます。
NO吸入装置・回路
アイノフローDS
インジェクターモジュール
インジェクターモジュールを人工呼吸器回路の吸気側に組み込みます。
ポイントは吸気側の「加温加湿器の前」のドライガスにインジェクターモジュールをつけます。
加温加湿器の後につけてしまうと加温加湿器で生じる湿気によってセンサーに誤差が生じ、流量が正しく測定されない可能性があります。
また、矢印の向き通りに正しく取り付けます。
このインジェクターモジュールからNOが吸気側に入ります。
患者にNOが入る直前にサンプリングラインから吸気を採取し
・一酸化窒素濃度(NO)
・酸素濃度(O2)
・二酸化窒素濃度(NO2)
をモニタリングします
NO濃度
設定したNOがちゃんと吸気側に流れているかを見ます。
O2濃度
FIO2が分かります。人工呼吸器で設定した酸素(FIO2)はNOと混ざって吸気されるため、FIO2に誤差が生じます。サンプルT字菅は吸気直前にあるため、正確なFIO2が分かります。
NO2
一酸化窒素(NO)と酸素(O2)が結合すると二酸化窒素(NO2)になり気管支炎や肺水腫など強い毒性があります。NO2の値は0になるよう調整し、できるだけNOの設定値も過度に上げないようにします。
NOは小児で20ppm~1ppm、成人で40ppm~1ppmの間で病態に応じて管理します。
新生児の肺高血圧を伴う呼吸不全や心臓周術期(心移植・LVAD装着)の肺高血圧に保険適用があります。保険適用の条件があり留意しながら治療を行います。
オススメ閲覧記事
人工呼吸器 はこちら
肺疾患 はこちら
補助人工心臓(VAD) はこちら
その他の記事 はこちら(HP)
参考にした資料
[参考書]人工呼吸ケアのすべてがわかる本(2014)
↑イラスト多めで分かりやすいです。