今回は血液を使わないアフェレシスの「腹水濾過濃縮再静注法(CART)」をご紹介します。
腹水濾過濃縮再静注法(CART)の Point!
・採取した腹水の細胞成分の抜き(濾過)、水分を抜いた(濃縮)腹水を患者に戻す
・腹水中のアルブミンを濃縮するアフェレシスです
・採取した腹水は多い方がうまくいきやすい
事前に腹水を採取します。
採取した腹水を回路につないで、濃縮する処理をします。
(アルブミンを)濃縮した腹水を患者に戻す治療が「CART」です。
アルブミン製剤の節約にもなり、自己蛋白を使うので未知の感染症の危険性もないことが特徴です。
全身状態、栄養状態、QOLの改善が期待できます!
一次膜(腹水濾過器)は孔径0.2μmなのでがん細胞や細菌を除去します。
二次膜(腹水濃縮器)は(孔径0.008μmくらい?)水分や電解質を除去します。
難治性腹水は従来、腹水排液のみで対応していた治療で、大量の腹水排液は低血圧や低蛋白血症、腎前性腎不全の原因になるため、当時は排液を3L程度にしており、症状改善も乏しいです。CARTができてから成績が良好になりました。
今では5~20Lの大量の腹水を処理する施設もあるみたいです。そうなると血圧低下が懸念されますが、生食を投与しながらなるべく早く再静注を行ったり、工夫されてるみたいです。
一般的な施行条件
【腹水採取】
腹水採取の目標は3L。急激な採取は血圧低下を起こすことがあるので1~2L/hの速度で採取
【アフェレシス条件】
濃縮倍率は10倍が目安(適宜調整)
濃縮速度は3L/h以下(1~2L/hが好ましい)
溶血防止のために13kPa(100mmHg)以下で濾過を行います。(血性腹水)
【腹水再静注】
発熱を避けるため100~150ml/hの速度で再静注(後ほど解説)
【その他の方法】
・腹水を凍結保存し、後日投与する方法もあります。
・血性腹水(血が混じっている腹水)は赤血球が溶血している可能性があります。すると遊離ヘモグロビンが濃縮されて、腎機能が悪化する危険性があります。医師の判断に従い慎重に行います。溶血防止のために13kPa(100mmHg)以下で濾過を行います。
・目詰まりの予防として「KM-CART」という方法があります。CARTをしてるとまれに膜の目詰まりが起こり、腹水の処理を途中で中断してしまうことがあります。癌性腹水などの固形物を多く含む腹水に起こりやすいです。KM-CARTは定期的に「膜の洗浄」を行い、目詰まりを防ぐ方法です。大量の腹水や粘度の高い腹水の場合に向いてます。
・落差や吸引圧を使った方法もありますが、ここでは一般的な方法をご紹介しました。
保険適用
悪性腫瘍や肝硬変など、利尿薬などの薬物療法が効かないケースが多いです。
胸水・腹水濾過濃縮再静注法として治療は「2週間に1回」で、4,990点(K635)
診療報酬算定のお話で特定保険医療材料については割愛します。
副作用
もっとも多いのは「発熱」と言われています。
一時的なことがほとんどで、治療が終われば治まります。
発生頻度は不明ですが血圧上昇、頭痛、嘔吐、呼吸困難、ショック等の報告もあります。
禁忌・禁止
再使用禁止です。
腹水・胸水中にエンドトキシンが検出された患者(ショック等の重篤な症状が現れることがある)は禁忌と言われていますが、実際にエンドトキシンを測定は義務づけておらず、実施する施設がほとんどです。CARTでは99%のエンドトキシンは除去できると言われています。
骨髄移植後などにおける免疫不全患者は敗血症等の重篤な合併症を併発する可能性があり、禁忌になります。
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参考にした資料
[参考書]アフェレシス療法ポケットマニュアル(2012)
[参考書]アフェレシスマニュアル(日本アフェレシス学会,2010)