病態生理 集中治療室(ICU)

医療現場での浸透圧

投稿日:11月 9, 2020 更新日:

輸液を選ぶには浸透圧を理解する必要があります。

難しく感じるかもしれませんが、初心者向けにかみ砕いて説明しようと思います。





浸透圧とは濃度のこと

液体中の水は濃度が均等になるように動きます。

薄い液体の水分は半透膜を通過し、濃い液体に移動します。

これを浸透といいます。

浸透の強さを数値化したものが「浸透圧」になります。

濃度が高い(濃ゆい)ほど浸透圧は高いと考えていいです。

濃度の単位はたくさんあります。

[%]
100mlあたり溶けている物質(g)
例:ブドウ糖液(5%)、生理食塩液(0.9%)

[mg/dl]
1dL(100ml)あたり溶けている物質(mg)
例:カルシウム、マグネシウム

[mmol/l]
1Lあたり溶けているモル数(mol)
モル数は分子量で計算します。
Naで例えると
Na原子量23
Na:1mol=23g
となります。
例:ナトリウム、カリウム

[mEq/l]
=mmol/l×電荷数
1Lあたり溶けている当量数
例:ナトリウム、カリウム

[mOsm/l]
=mmol/l×粒子数
1Lあたり溶けている粒子数
電解質以外の電荷を持たない物質によく使われる単位です。
例:ブドウ糖

どれも共通しているのは「濃度」の単位であり、数値が高いほど「濃い液体」「浸透圧が高い」とイメージすればいいです。





体内の物質濃度

濃度差(浸透圧差)があると水分の移動が起こることがわかりましたね。

次に体内で濃度差が発生する物質を見てみましょう。

体内の分布は「血中」「間質液」「細胞」で表せることができます。

ここに浸透圧の話でよく出てくる「アルブミン(Alb)」「ナトリウム(Na)」「ブドウ糖(Glu)」「尿素窒素(BUN)」を並べてみました。

・アルブミン(Alb)は血管壁を通過できないため。血液中で濃くなる

・ナトリウム(Na)は細胞膜を通過できないため、細胞外(血中と間質液のこと)で濃くなる

・ブドウ糖(Glu)や尿素窒素(BUN)はどこでも通過できるので濃度は均一

厳密には電解質はチャネル移動したり、ブドウ糖は代謝されたりしますが、浸透圧を理解するためには今は考えなくてよいです。

濃くなる場所の違いから2種類の浸透圧が発生します。

・電解質やブドウ糖による「血漿(晶質)浸透圧」
・アルブミンによる「膠質浸透圧」

この2種類の浸透圧について説明していきたいと思います。





血漿浸透圧

血漿浸透圧は主にナトリウム(Na)やブドウ糖(Glu)による浸透圧です。

人間の血漿浸透圧は通常280~290mOsm/lくらいです。



ナトリウム(Na)による血漿浸透圧

ナトリウム(Na)は細胞外液に多くあります。



ナトリウム(Na)濃度

ナトリウム(Na)の濃度が低ければ血漿浸透圧は低くなります。

ナトリウム(Na)の濃度が高ければ血漿浸透圧は高くなります。

ナトリウム(Na)濃度が高い場合は血漿浸透圧が高い、つまりは細胞外液の浸透圧が高いことがわかります。

※血漿の浸透圧 ≒ 細胞外液の浸透圧

細胞外液の浸透圧が高いと細胞内液の浸透圧との間に「浸透圧差」が発生します。

よって、浸透圧の低い細胞内液から細胞外液に水分が移動します。

高ナトリウム血症ではこういった細胞内からの水分が移動し、「細胞内脱水」になることがあります。

血漿のナトリウム(Na)濃度はよく見ておきましょう。

高ナトリウム血症による水分移動は細胞からだけでなく、口喝によって体外から飲水させたり、腎臓に作用し尿をださない(抗利尿)よう体中に働きかけます。

難しい話をするとANPやバゾプレシン、RAA系と呼ばれるホルモンの作用で、腎機能や口喝感を調整しています。

このように浸透圧は一定になるよう水分やナトリウム(Na)は常に体内で調整されているのです。

今回は高ナトリウム血症を例にいろいろ話しましたが、低ナトリウム血症は逆に考えればよいです。

低ナトリウム血症では逆に細胞外液から細胞内液に水分が移動するので、「細胞内浮腫」が生じます。

ナトリウム(Na)が入っている輸液は「細胞外液の補充」になります。




浸透圧による溶血

ナトリウム(Na)は細胞膜を通過できません。赤血球も細胞なので、ナトリウム(Na)が赤血球内を出入りしません。

ナトリウム(Na)が極端に少ないと細胞外液の浸透圧が低くなります。

赤血球内の浸透圧の方が高くなれば、細胞外液から赤血球内に水分が移動し、赤血球が膨らみ、破裂するリスクがあります。

いわゆる「溶血」が起こります。(右の絵)

通常、電解質液の輸液を行う際は血漿中と「同じ浸透圧」の液体を使用します。

市販の輸液製剤である5%ブドウ糖液、生理食塩液、リンゲル液はすべて血中と同じ浸透圧になっています。

輸液製剤の添付文書で「浸透圧比 約1」と書かれています。これは「血中と同じ浸透圧ですよ」という意味です。

浸透圧に関して危ない液体は「滅菌蒸留水」です。こちらはナトリウム(Na)やブドウ糖が入っていないので、浸透圧が0です。溶血が起こるので通常は輸液に使用しません。



ブドウ糖(Glu)による浸透圧

ブドウ糖(Glu)は細胞膜も通過します。

ブドウ糖(Glu)の濃度が高いと浸透圧が高く、体液全体でブドウ糖が多いことを表します。だいたい食後でブドウ糖(Glu)は高値になります。



ブドウ糖(Glu)濃度

ブドウ糖(Glu)は細胞内にも入れるので、細胞内外の水分移動は起きません。

ブドウ糖(Glu)は代謝されるとエネルギーや水になります。

体液全体の「水分を補充」したいときにブドウ糖液を輸液することがあります。



血漿浸透圧の計算

血漿浸透圧は通常280~290mOsm/lくらいとお話しました。

計算によって予測値を算出できます。

血漿浸透圧(予測値) = 2 × Na + Glu/18 + BUN/2.8
血漿浸透圧:[mOsm/l] 
Na:ナトリウム[mEq/l]
Glu:ブドウ糖[mg/dl]
BUN:尿素窒素[mg/dl]

上は計算によって算出した血漿浸透圧です。浸透圧は血漿、間質液、細胞内液どこも値は同じです。

血漿浸透圧は上の予測値だけでなく、実際に測定して実測値を測定することもできます。

予測値と実測値の差(浸透圧ギャップ)が10mOsm/L以上あればナトリウム、ブドウ糖、尿素窒素以外の溶質が多く含まれている可能性があります。高脂血症や高蛋白血症で起こる偽性低ナトリウム血症やマニトールやエタノール、アセトンなどの影響があげられます。

血漿浸透圧を現場でよく使いますが、これは細胞内の浸透圧が測定できないからです。

体の水分量と血漿浸透圧をよく評価して、体の浸透圧分布や体液の分布を把握しましょう。





膠質浸透圧

膠質浸透圧はアルブミン(Alb)による浸透圧です。

膠質浸透圧は通常25mmHgくらいです。

アルブミン(Alb)は血管壁を通過しません。なので、血管内に多くあります。



アルブミン(Alb)濃度

アルブミンの濃度が高いと血管内の浸透圧が高くなり、血管外との間に浸透圧差が生じます。そのため血管外から血管内に水分が移動します。

アルブミン(Alb)はこのように血管内の水分に関与します。

逆に血漿中のアルブミン値が低いと血管外に水分が移動し、浮腫が見られます。

その場合はアルブミン製剤や高分子製剤を輸液することがあります。

膠質浸透圧は通常25mmHgくらいです。

※1gのアルブミンは約20mlの水分を保持します。





参考資料

実際に人体の浸透圧に関与している物質の濃度を表にすると下のようになります。

黄色枠:よく使用される検査値

輸液においても患者に合わせて電解質が一気に変動しない選択をします。



分子量



単位変換表





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参考にした資料

[参考書]腎・泌尿器(病気が見える,2019)

[参考書]循環器医のための知っておくべき電解質異常(2011)

[HP]輸液の基礎知識(株式会社大塚製薬工場)
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