致死的不整脈(VfやVT)では緊急でバタバタ使うことがある除細動器ですが、
心房性の不整脈では落ち着いた状態で除細動することもあります。
そんな除細動器の設定や緊急時に必要な知識をご紹介します。
除細動器(DC)の Point!
・心臓の動きを元に戻すため、頻脈性不整脈が適応
・緊急時はパッドを使うのが主流(処置がしやすい)
・心房性不整脈では同期通電が好ましい(カルディオバージョン)
・エネルギー量は体外からの通電時は高め、心臓を直接通電時は低めに設定する
除細動とは
頻脈性不整脈(ATやVT)、致死的不整脈(VfやVT)などに直流電流を流して、心臓をもとの動きに戻す治療です。
中でも致死的不整脈は絶対適応で迅速に除細動し心肺蘇生(CPR)することが必要です。
除細動器のDCは「Direct Current」の略称で「直流」という意味です。
除細動器(DC)の使用方法
除細動器は
1 エネルギー量設定
2 充電
3 放電
の流れで行われます。
1 エネルギー量設定
心房性不整脈や小児、心臓直接通電する場合は低いエネルギー量で設定することが多く、心室性不整脈を体外から通電する場合は高いエネルギー量で設定することが多いです。
昔の除細動波形は単相性(200~360J)で最近はほとんど二相性(80~200J)なので必要なエネルギーを低くでき、心筋障害が軽減できます。出力5kV未満や放電特性は時定数10秒未満とJISで決められています。
2 充電
設定したエネルギー量で放電するために「充電」を行います。
15秒以内で完了します(JIS規格)
3 放電
電極は心臓を囲むように電極を押し当てます。 電極もしくは本体のボタンから電気ショック(放電)を行います。
うまく放電(除細動)すれば普通の洞調律に戻ります。
パドル
パッド
最も早く放電ができるのはパドルです。使用時は専用ペーストを塗ってからパドルを押し当てます。
パッドはパドルに比べれば張る手間が増えますが、貼ってしまえばボタンを押すだけで電気ショックができるので直前まで心臓マッサージができます。パッドから心電図を拾い本体のモニターから表示させることもできます。通常の心電図電極が使えるケーブルもあります。
直接通電
パッドやパドルは体外から通電しますが、心臓外科手術などでは心臓に直接電極を当て、通電させる方法があります。直接放電する場合は体外で使用するエネルギーより小さいエネルギー量で設定します。
除細動器(DC)の適応疾患
→除細動(非同期通電)
除細動器の絶対適応です。
他にも抗不整脈薬、ICD、カテーテルアブレーションなどの治療法があります。
心停止は心室細動、心室頻拍、心静止、無脈性電気活動(PEA)の4つがあり、心静止と無脈性電気活動は除細動の適応になりません。
心房性不整脈
・心房細動(Af)
・心房粗動(AFL)
・心房頻拍(AT)
→カルディオバージョン(同期通電)
除細動器の相対的適応です。
他にも抗不整脈薬、カテーテルアブレーション、Maze手術、抗血栓療法などの治療法があります。
心房性不整脈では通常の除細動と違い「(R波)同期通電」や「カルディオバージョン」と呼ばれる除細動を行います。
心電図でT波に電気ショックが当たる(R on T)と心室細動を起こす危険があるため、心電図を読み込みR波の直後に電気ショックを行います。
これをカルディオバージョン(同期通電)と言います。
パッド電極、もしくは心電図電極からDCに心電図を読み込ませ、R波を検知させます。
除細動器のペーシング機能
除細動機能だけでなく、徐脈に対してパッドやパドルからペーシングを行うペースメーカー機能があります。(経皮ペーシング)
デマンド(VVI?)
フィクス(固定レート)
除細動器の事故と対策
過度の通電エネルギーは心筋損傷の原因になり心室性不整脈を再発する危険があります。
ペースト不足、電極の押し付け不足、電極の密着不足(接触面積(小))、電極の汚れやサビなどで接触抵抗が上昇すると熱傷や発火の危険があります。
ペーストが多かったり、消毒液や体液が多いと無効通電の可能性があります。
通電中は高電圧で感電する恐れがあります。通電する前は患者に触れず、予防としてゴム手袋を着用することがあります。
高電圧により同時に使用している他の機器が故障する可能性があります。
JISで規定した入力保護回路を備えた機器は除細動器と併用が可能です。それ以外の機器は故障する可能性があるため通電前に患者から離します。また、ペースメーカー植込み患者はペースメーカーをできるだけ避けながら、パッドを当てて放電します。
除細動器と併用が可能な機器は下のマークがあります。
AED
使い捨てパッドを貼り、通電により除細動を行います。
AED医療従事者以外でも使用でき、院内だけでなく院外の心肺蘇生(CPR)時に使用します。
実際はAEDの使用は躊躇しがちですが、指示通りパッドを張れば、使用できるかどうかをAEDが解析によって判断してくれます。
なので積極的に使用しましょう。
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参考にした資料
[参考書]救急・ICU患者のME機器からみた呼吸・循環管理(2018)
[参考書]医用治療機器学(臨床工学講座,2018)