薬剤・輸液 集中治療室(ICU)

ICUの抗菌薬

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抗菌薬はICUで見ない日がないくらい日常的に使われている薬剤です。

種類もかなり多くあります。

多くの抗菌薬を一つずつ解説せず、

知っておいた方がいい「抗菌薬の分類」と「治療で使う時のモニタリング(TDM)」

についてご紹介します。





抗菌薬・抗ウイルス薬・抗真菌薬

抗菌薬以外に抗ウイルス薬や抗真菌薬など似た薬剤があります。

抗ウイルス薬

抗ウイルス薬はウイルスを抑制する薬と免疫機能を調整する薬があります。

抗ウイルス薬は作るのが難しいので、あまり多くの種類はありません。

ウイルス:10~300nm
(細菌より小さい)

核酸(DNA or RNA)とタンパク質で構成される生物(?)で、細胞を持ちません。違う生物の細胞を利用して増殖します。

・おもなウイルス
ノロウイルス、ロタウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、HIVなど

・主な感染症
感染性胃腸炎、インフルエンザ、かぜ症候群、麻疹、風疹、水痘、肝炎(A型、B型、C型など)、帯状疱疹、エイズなど

抗菌薬

抗菌薬は細菌の増殖を抑制する薬、細胞そのものを殺す薬があります。

細菌のタイプに応じて多くの種類があります。

細菌:0.5~5μm

細胞膜、細胞壁、リボソーム、核様体、鞭毛、線毛で構成される生物です。

・おもな細菌
ブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ菌、緑膿菌、コレラ菌、赤痢菌、炭疽菌、結核菌、ボツリヌス菌、破傷風菌、レンサ球菌など

・主な感染症
感染性胃腸炎、腸管出血性大腸菌(O157)感染症、結核、破傷風、敗血症、外耳炎、中耳炎など

抗生物質
抗菌薬のうち、生き物(細菌や真菌など)から作られる薬

合成抗菌薬
抗菌薬のうち、科学的に合成されて作られる薬

抗真菌薬

抗真菌薬は細胞膜を破壊する薬と細胞膜の合成を阻害する薬があります。

真菌:3~5μm
(細菌より大きい)

細胞膜、細胞壁、細胞質、リボソーム、核、ミトコンドリア、液砲から構成される生物です。

カビも真菌になります。

・主な真菌
白癬菌、カンジダ、アスペルギルスなど

・主な感染症
白癬(水虫)、カンジダ症、アスペルギルス症など





抗菌薬の種類

抗ウイルス薬、抗菌薬、抗真菌薬についてご紹介しました。ここからは種類が多く薬理作用がちょっとわかりにくい抗菌薬について説明します。

一つずつ説明するとかなり細かく退屈になってしまいますので、各抗菌薬の「特徴」だけご紹介します。

ペニシリン系抗菌薬

特徴:グラム陽性(球菌が多い)に効きます。他にもらせん菌や嫌気性菌に効きます

セフェム系抗菌薬

特徴:グラム陰性(桿菌が多い)に効きます。他にも嫌気性菌に効きます。

カルバペネム系抗菌薬

特徴:領域が広い(広域スペクトラム)で効果があります。MRSAなどの耐性菌は無効なものが多いです。

グリコペプチド系抗菌薬

特徴:MRSAに使用します。

リポペプチド系抗菌薬

特徴:VREやMRSAに使用します。

オキサゾリジノン系抗菌薬

特徴:VREやMRSAに使用します。

アミノグリコシド系抗菌薬

特徴:グラム陰性桿菌に効きます。特に緑膿菌に効きます。

マクロライド系抗菌薬

特徴:脂溶性が高く非定型に効きます。他にもグラム陽性菌やらせん菌に効きます。

テトラサイクリン系抗菌薬

特徴:脂溶性が高く非定型(特にリケッチア)に効きます。他にもらせん菌(特にスピロヘータ)に効きます。

ニューキノロン系抗菌薬

特徴:脂溶性が高く非定型に効きます。他にも緑膿菌に効きます。

リンコマイシン系抗菌薬

特徴:嫌気性菌に効きます。

ニトロイミダゾール系抗菌薬

特徴:嫌気性菌に効きます。

リファマイシン系

特徴:抗結核薬、グラム陽性球菌にも効きます。

※ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系をまとめて「βラクタム系」と呼ぶこともあります。



抗菌薬 一覧

抗菌薬の特徴についてお話しました。

イメージがつきやすいように各抗菌薬が作用する菌を一覧をにしました。

一見、いろんな細菌に効果のあるカルバペネム系抗菌薬を最初からどんどん使えばいいじゃん。と考えがちですが、不適切に使用すると「耐性菌」が生まれてしまいます。

耐性菌と言えば「MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)」が代表的です。人類からメチシリン(MEPM)による攻撃を受けた細菌が強化されてメチシリンに耐性をつけたブドウ球菌です。人類はさらにグリコペプチド系抗菌薬であるバンコマイシン(VCM)を開発し、MRSAに対して治療が行われてきましたが、またも耐性を獲得した「VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)」が誕生しました。後に続けて新薬を開発したりと、耐性菌と抗菌薬が入り乱れてイタチの追いかけっことよく表現されます。

耐性菌は世界規模で問題になっています。耐性菌を作らないようにするには「病原体の細菌にのみ効く抗菌薬を選ぶ」ことが理想で、できるだけ適切な抗菌薬を選ぶよう配慮しなくてはなりません。ウイルス、細菌、真菌は地域性もあるため、各都道府県で使用方法が若干違ったりします。種類が豊富な抗菌薬ですが、使用に困った時は専門の医師に効くのが一番です。





抗菌薬をもう少し詳しく・・・

抗菌薬の投与方法は添付文書を見ればわかります。

ICUでは重症患者も多く、広域スペクトラム(広範囲)の抗菌薬が使用する時に耐性菌が生まれる、投与不足で抗菌作用が得られない、臓器不全で代謝が追い付かず過剰投与になる(薬物中毒)などなど、これら有害が起きないよう投与量を調整し「適切に」投与する必要があります。

MPC(耐性菌出現阻止濃度)
 耐性菌を殺す最小の薬物濃度
MSW(耐性菌選択濃度域)
 MPCとMICの間
MIC(最小発育阻止濃度)
 は細菌を殺す最小の薬物濃度

薬剤は患者に投与すると血中で薬物の濃度が上がります。その後は腎臓や肝臓の代謝によって徐々に血中で濃度が下がってきます。血中の薬物濃度がピーク(最高)値から半分になるまでの時間を「半減期」と呼びます。

濃度依存性抗菌薬

濃度依存性抗菌薬は血液中の濃度が高いほど抗菌作用が強い薬剤です。細菌の増殖を抑えるには濃度依存性抗菌薬の濃度をMIC(最小発育阻止濃度)以上にすればよいが、耐性菌は生き残って増殖する可能性があります。そこでMPC以上に抗菌薬を高濃度にして耐性菌の増殖まで抑える必要があります。「高濃度+短時間」の投与で「MPCを超えること」が大事になります。

濃度依存性抗菌薬:キノロン系、アミノグリコシド系など

時間依存性抗菌薬

時間依存性抗菌薬は必要な濃度で経過した時間が長いほど抗菌作用が強い薬剤です。時間依存性抗菌薬はMIC以上にすれば抗菌効果が得られますが、それ以上に濃度が高くても抗菌効果は上がりません。濃度ではなくMICの「時間」が長ければ長いほど抗菌効果が上がります。「低濃度+長時間」の投与で「MIC以上の濃度を長時間保つこと」が大事になります。

時間依存性:ペニシリン系、セフェム系など





抗菌薬のモニタリング

PK/PD理論

抗菌薬は血中濃度を維持もしくは高くすることで抗菌作用を発揮します。PK/PD理論は薬物動態額(PK : pharmacokinetics)と薬力学(PD : pharmacodynamics)に基づいた「抗菌薬を投与する時の考え方」になります。濃度依存性・時間依存性の薬剤で投与方法が変わってきます。

PKパラメータ
 最高血中濃度(Cmax)
 血中濃度曲線下面積(AUC : area under curve)
PDパラメータ
 最小発育阻止濃度(MIC : minimum inhibitory concentration)

Cmax/MIC

Cmax/MICは濃度依存性の抗菌薬投与中に使われるパラメータです。一回の投与量が多いとCmax/MICは増加して抗菌作用が増加します。

例えば、アミノグリコシド系抗菌薬ではCmax/MICが8~10以上になるよう一日1回で投与量を調整します。

抗菌作用が濃度依存性で持続効果が長い抗菌薬が対象です。

アミノグリコシド系やキノロン系が対象になります。

血中濃度が高いほど効果が強くなるので、「投与回数を少なくして1回の投与量を多くすること」が大事になってきます。

CmaxをCpeakと書いている書籍もあります。

TAM(time above MIC)

TAMは時間依存性の抗菌薬投与中に使われるパラメータです。

TAMは抗菌薬の血中濃度が対象となる菌のMIC以上である「時間」になります。

投与時間を長くする、もしくは投与回数を増やすとTAMは増加して抗菌作用が増加します。

例えば、メロペネム(MEPM)を一日で3回投与し、さらに1gあたり3時間かけて投与します。「T > MIC(単位:%)」が40~50%以上になるように投与します。

抗菌作用が時間依存性で持続効果が短い抗菌薬が対象です。

ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系など(βラクタム系)が対象になります。

「どれだけの時間、MICより高い濃度で経過したか」が大事になってきます。

AUC/MIC

AUC/MICは時間依存性の抗菌薬投与中に使われるパラメータです。

AUC/MICはトラフ値(後述)を高くすると最低血中濃度が高くなり、AUC/MIC増加、抗菌作用が増加します。

一日2回投与が推奨されています。

抗菌薬の持続効果(PAE)が長い時はAUCを使って「どれくらいの抗菌薬が使用されたか」を見て持続効果の作用を評価します。

抗菌作用が時間依存性で持続効果が長い抗菌薬が対象になります。

テトラサイクリン系やアジスロマイシン、バンコマイシン、クラリスロマイシンなどが対象になります。

AUC/MICはキノロン系で100以上、グリコペプチド系で400以上など抗菌薬の種類によって投与量を調整します。

トラフ値

AUCを測定すると採血が頻回になり、コスト面・労力面で大変です。

AUCの代わりに臨床では「トラフ値」がよく使われます。

トラフ値は抗菌薬の反復投与中で定常状態に達した時の最低血中濃度(追加投与直前濃度)です。

血中濃度を維持する時の最低濃度で、初回投与ではなく、追加投与で落ち着いた時の最低濃度です。





抗菌薬特徴PK/PD投与方法抗菌薬
濃度依存性 長時間作用AUC/MIC Cmax/MIC投与量↑ 1日1回キノロン系 アミノグリコシド系
時間依存性 短時間作用TAM投与時間↑ 1日複数回ペニシリン系 セフェム系 カルバペネム系
時間依存性 長時間作用AUC/MICトラフ値↑ 1日2回テトラサイクリン系 バンコマイシン クラリスロマイシン アジスロマイシン

PK/PD理論を考えながら抗菌薬を投与しますが、血中濃度を測定しないと実際にPK/PD理論通りに投与できているかわからないですよね。そこで血中濃度を測定してモニタリングする方法を「TDM」と言います。

血中濃度測定(TDM : Therapeutic Drug Monitoring)

抗菌薬の「作用」が得られるよう目標濃度が得られているか、そして抗菌薬の「副作用」が現れないよう高濃度になっていないか(薬物中毒)。などもTDMで把握します。TDMのルーチン使用は推奨されていませんが、重症感染症や腎不全、分布容積が予測困難な患者では必須になってきます。

TDMモニタリングは使用する抗菌薬で測定方法・投与方法が違います。目標とするCmax値やトラフ値はガイドラインや添付文書に載っています。





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参考にした資料

[指針]抗菌薬TDMガイドライン(日本化学療法学会/日本TDM学会,2016)

[指針]日本版敗血症ガイドライン(日本集中治療医学会,2016)

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