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やさしく「ペースメーカーのモード」をまなぶ

投稿日:9月 27, 2020 更新日:

ペースメーカーのモードは「AAI」や「DDD」など3文字で表し、ICHDコードと言います。

このICHDコードでペースメーカーがいつどのように動作しているのかが分かります。

ここではペースメーカーの「モード」についてお話しますが、実際の「設定値」に関してはこちらに記載しています →ペースメーカーの設定値

ICHDコード
1文字目は刺激(ペーシング)
2文字目は感知(センシング)
3文字目は制御方式

になります。

1、2文字目は刺激・感知する「部位」を表します。

ICHDコードの1・2文字目の種類
A : 心房
V : 心室
D : 心房と心室
O : 機能なし

3文字目は刺激の制御方式です。

ICHDコードの3文字目の種類
I : 抑制
T : 同期(トリガー)
D : 抑制と同期の両方
O : 機能なし

これらの組み合わせでペースメーカーのモードが決まります。

イマイチわからないと思いますが、まずは実際に使われているモードを見てみましょう。

A:Atrium
V:Ventricle
D:Dual
I:Inhibition
T:Trigger
ICHD: Inter-Society Commission for Heart Disease Resource





AOO

刺激:心房 感知:なし 制御方式:なし

自己脈を感知せず設定したレートでひたすら心房を刺激するモードです。

固定レートとも言います。

自己脈があっても、自己脈がなくてもペーシングします。(自己脈を無視してる)

手術中に使用することが多いです。

電気メスのノイズを自己脈と誤感知しないようAOOにします。

自己脈を無視してるので、ノイズが現れても無視して確実にペーシングします。

他にもアブレーション時や心外手術の心臓立ち上げ時などで使用されます。

AOOだとノイズが入っても脈拍数が安定します。

房室ブロックの人はAOOだと心室が収縮されないのでVOOにします。

この時、自己脈に注意します。





VOO

刺激:心室 感知:なし 制御方式:なし

自己脈を感知せず設定レートでひたすら心室を刺激するモードです。

固定レートとも言います。

手術中に使用することが多いです。

基本は安全上AOOを使用しますが、房室ブロックのある患者はAOOにしても心室が収縮されないのでVOOにします。

この時、VOOの設定レートを自己脈より速く設定します。

ペースメーカーのレートを自己脈より速く設定しておくと、ペースメーカー刺激が速いため自己脈が現れず、設定レートが患者の心拍数となります。

これが逆に設定レートを遅く設定しておくと、自己脈が出現してきます。

この時、自己脈のT波にタイミングよくペースメーカーがペーシング(R on T)すると心室細動を起こすことがあります。

センシング(感知)に問題がなければ(ノイズ等がなければ)VVIを使用するほうが好ましいです。





AAI

刺激:心房 感知:心房 制御方式:抑制

心房を刺激します。心房の自己脈であるP波があった場合は心房刺激をしません(抑制)

自己脈優先のモードです。

洞不全症候群(SSS)に使用することが多いです。

心室を無視して心房にのみ刺激するため、房室ブロックでは心室が収縮されなくなります。

なので房室ブロックではVVIを使用します。





VVI

刺激:心室 感知:心室 制御方式:抑制

心室を刺激します。心室の自己脈であるQRS波があった場合は心室刺激をしません(抑制)

自己脈優先のモードです。

心房細動(Af)心房粗動(AF)で徐脈になる人やICDのバックアップペーシングなどで使用することが多いです。

昔は房室ブロックの場面でも使用されていましたが、VVIは心房を無視して心室にのみ刺激するため、房室ブロックだと心房の収縮と心室の収縮がバラバラになってしまいます(もしくは心室のみ収縮)。

現在ではDDDをよく使用します。





DDD

刺激:心房+心室 感知:心房+心室 制御方式:抑制+同期

AAI+VVIのようなもので、自己脈優先。

P波(心房の収縮)がない場合は心房刺激
QRS波(心室収縮)がない場合は心室刺激

をします。

第II度房室ブロック第III度房室ブロック高度房室ブロックなど、慢性心房細動以外の徐脈性不整脈に使用されます。

DDDは数あるモードの中で最も使用頻度が高いです。



DDDの同期(T)

コードの3文字目がDということは抑制(I)の他に同期(T)もモードに含まれています。

同期(T)は自己脈に合わせてペースメーカーも同時に刺激するのが本来の意味で、バッテリーの消耗を早めたり効果があまりないことから、使用されなくなりました。

DDDの時の同期(T)はこの本来の同期(T)と意味が少し違います。

心房収縮(自己P派 or ペースメーカー刺激によってつくられたP波)に合わせて、設定した時間間隔(PQ時間)の後に心室刺激することを同期と言います。

このPQ時間の間に自己QRS波が出現した場合はペースメーカーから心室刺激は行いません。(抑制)

このPQ時間の設定をAVディレイと言います。このAVディレイの設定でより生理的なモードに近づけます。





DDI

刺激:心房+心室 感知:心房+心室 制御方式:抑制

AAI+VVIのようなもので、自己脈優先。

P波(心房の収縮)がない場合は心房刺激
QRS波(心室収縮)がない場合は心室刺激

をします。

DDDで説明した心房収縮から心室収縮の追従機能(T:同期)がないため、心房と心室の協調性はありません。

DDDのペースメーカーを植え込んでいる人が発作性心房細動心房頻拍を起こすと追従機能(T:同期)で心室も同時に頻拍となってしまいます。ここでDDIに切り替えられる機能がついています。これで心房頻拍時でも脈拍が得られます。





VDD

刺激:心室 感知:心房+心室 制御方式:抑制+同期

自己脈優先。

自己のP波とQRS波(心室収縮)がない場合は心室刺激。

自己のP波はあるけどQRS波がなければ設定したPQ時間後に心室を刺激します。

心房を刺激しないため洞機能が正常な房室ブロックに使用します。

最低心拍数を刺激するときは心房刺激ではなく心室刺激になります。

その他はDDDと同じ作動をします。



VDDのリード

DDDでは心房用と心室用で二本のリードを使用します。VDDでは心室リードの途中(右房あたり)にセンシング用電極がついているタイプがあります。ここから心房(A)のセンシングを行うため、VDDは一本のリードでも使用できます。





4文字目のモード「R」

安静時は心拍数60 bpmの人でも運動すると80 bpm、100 bpmと交感神経が働いて心拍数が上がります。

この追従をペースメーカーでも再現したのがレート調整(rate modulation)と呼ばれる機能で「AAIR」など4文字目に「R」で表します。

実際は加速度センサーや分時換気量センターでペースメーカーのレートを調整します。





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参考にした資料

[参考書]ペースメーカー心電図が好きになる(2014)

[参考書]レジデントのためのこれだけ心電図(2018)
↑めちゃくちゃわかりやすいです。書いた人を胴上げしたいです。

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