吸着療法は単純原理で、施行も比較的簡単ですが、種類が豊富なので膜選択が重要になってきます。
種類は多いですが、疾患ごとに使う吸着膜が決まっているので「間違えないように選ぶ」ことが何より大事かと思います。
そこでカラムの用途をまとめてみたので今回ご紹介します。
吸着療法(adsorption)の Point!
・血液を吸着する「HA」血漿を吸着する「PA」がある
・それぞれ吸着物質や適用疾患が全然違う
・リポソーバは一回の治療で2個の膜を使うことがある
PEやDFPPのような広範囲除去ではなく、吸着材を使って選択的に除去します。
吸着器を「カラム」と呼んだりもします。
吸着材を用いる方法は2種類あります。
1 血液吸着療法(HA)=直接血液潅流法(DHP)
2 血漿吸着療法(PA)=血漿潅流法(PP)
血液内の物質を吸着する場合を「HA」血液と血漿を分離し、血漿内の物質を吸着する場合を「PA」と言います。
~HAとPAを分ける理由~
初学者の頃はわざわざPAとHAを分けることが不思議に感じて「全部HAでよくね?」と思っていました。調べてみると血液の損傷が少ないものは血液吸着、生体適合性が良くないものを血漿吸着しています。PAで使うカラムをHAで使うことによる安全性は確保されてないとのことです。
白血球除去療法(LCAP)や顆粒球除去療法(GCAP=GMA)でやってることは血液吸着(HA)ですが、吸着というジャンルではなく、白血球系細胞除去療法(LRT)というサイタフェレシス、いわゆる血球除去のジャンルで呼ばれることが多いです。(ここではHAとして解説します)
セレソーブやイムソーバTR、PHは総称して免疫吸着(IAPP:immunoadsorption plasmapheresis)と呼ぶことがあります。
アフェレシスの適応疾患はこちらでまとめています。
血液吸着(HA)とは
患者血液を吸着器に通し、還流させる方法です。

使用される吸着器の特徴についてご紹介します。
ヘモソーバCHS
吸着材:活性炭
吸着原理:分子間引力
吸着物質:薬物(いろいろ)、ビリルビン、クレアチニン、イヌリン、胆汁酸、アミノ酸、パラコート、ビタミンB12
保険適用:肝性昏睡、薬物中毒
治療上の注意点:抗凝固剤はヘパリンを使用する。ブドウ糖の吸着があるため、血糖値チェックを行う、分子量100以下と10000以上の物質は吸着されない。吸着器に500mmHg以上の圧力をかけない。
リクセル
吸着材:ヘキサデシル基
吸着原理:疎水結合
吸着物質:β2-MG
保険適用:腎(透析)アミロイド
治療上の注意点:原則として血液透析(HD)と併用。血圧低下に注意。分子量4000~20000以上の中分子ペプチドや蛋白を吸着。
トレミキシン
吸着材:ポリミキシンB
吸着原理:特異的結合
吸着物質:エンドトキシン、アナンダマイド、活性化好中球
保険適用:敗血症
治療上の注意点:血小板減少に注意する。
イムノピュア(LCAP)
吸着材:ポリアリレートビーズ
吸着原理:フィルター除去
吸着物質:白血球、血小板
保険適用:潰瘍性大腸炎(中等症の難治例)、関節リウマチ
治療上の注意点:
アダカラム(GCAP)
吸着材:酢酸セルロースビーズ
吸着原理:活性化捕捉
吸着物質:顆粒球、単球
保険適用:潰瘍性大腸炎、クローン病、膿疱性乾癬、関節症性乾癬
治療上の注意点:吸着器はラベルが読める方向に資、下から上へ流れるよう回路を組む。
レオカーナ
吸着材:デキストラン硫酸、トリプトファン固定化セルロースビーズ
吸着原理:静電結合、疎水結合
吸着物質:LDL、フィブリノゲン
保険適用:閉塞性動脈硬化症
治療上の注意点:ACE阻害剤と併用禁忌。抗凝固剤使用禁忌の患者と併用禁忌。フィブリノゲンを吸着するため、出血傾向の患者には注意する。降圧薬服用患者では血圧低下を起こすことがある。
血漿吸着(PA)とは
患者血液を血漿分離器で分離し、血漿を吸着器に通し、還流させる方法です。

使用される吸着器の特徴についてご紹介します。
プラソーバBRS
吸着材:スチレン・ジ・ビニル・ベンゼン共重合体
吸着原理:静電結合
吸着物質:ビリルビン、胆汁酸
保険適用:劇症肝炎、術後肝不全(急性肝不全には使用不可)
治療上の注意点:溶血予防として、血漿分離器の差圧は60mmHg以下に保つ。吸着器の差圧は300mmHg以上で凝固を疑う。吸着器に500mmHg以上の圧力をかけない。
イムソーバPH
吸着材:フェニルアラニン
吸着原理:疎水的結合
吸着物質:リウマチ因子、免疫複合体、抗DNA抗体
保険適用:全身性エリトマトーデス、悪性関節リウマチ、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性(神経炎)、ポリニューロパチー
治療上の注意点:ACE阻害剤と併用禁忌。メシル酸ナファモスタットを使用する際はプライミング時20~30mg、持続20~50mg/hで適宜調整。微粒子の流出予防として付属の微粒子除去フィルターを併用する。微粒子除去フィルターを濡らした後は空気が入らないようにする。
イムソーバTR
吸着材:トリプトファン
吸着原理:疎水的結合
吸着物質:抗アセチルコリンレセプター抗体、自己抗体
保険適用:多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性(神経炎)、ポリニューロパチー、重症筋無力症
治療上の注意点:ACE阻害剤と併用禁忌。フィブリノゲンを吸着するため、出血傾向の患者には注意する。血漿処理量2L以上で自己抗体が脱着してしまう。血漿処理量1.2~1.5L以上でC5aやブラジキニンが産生され、血圧低下の原因となることがある。メシル酸ナファモスタットを使用する際はプライミング時20~30mg、持続20~50mg/hで適宜調整。微粒子の流出予防として付属の微粒子除去フィルターを併用する。微粒子除去フィルターを濡らした後は空気が入らないようにする。
リポソーバ
吸着材:デキストラン硫酸
吸着原理:静電結合
吸着物質:LDL、VLDL(リポ蛋白、コレステロール)
保険適用:巣状糸球体硬化症、(慢性)閉塞性動脈硬化症、家族性高コレステロール血症
治療上の注意点:ACE阻害剤と併用禁忌。抗凝固剤使用禁忌の患者と併用禁忌。Caが吸着されるため、洗浄時はCaを含む輸液(リンゲル液など)が必要。賦活液を使用する際はマルトース加乳酸リンゲル液は賦活処理が不十分になるため使用不可。メシル酸ナファモスタットを使用する際はプライミング時20~30mg、持続20~50mg/hで適宜調整。ACE阻害剤服用患者ではショック症状を起こすことがある。降圧薬服用患者では血圧低下を起こすことがある。
セレソーブ
吸着材:デキストラン硫酸
吸着原理:静電結合
吸着物質:抗カルジオリピン抗体、抗DNA抗体、免疫複合体
保険適用:全身性エリトマトーデス
治療上の注意点:ACE阻害剤と併用禁忌。Caが吸着されるため、洗浄時はCaを含む輸液(リンゲル液など)が必要。賦活液を使用する際はマルトース加乳酸リンゲル液は賦活処理が不十分になるため使用不可。メシル酸ナファモスタットを使用する際はプライミング時20~30mg、持続20~50mg/hで適宜調整。LDLや凝固因子を吸着するため、検査値が減少する可能性がある。
リポソーバとセレソーブの変法(LA-15システム)

小さいリポソーバ(LA-15)二個もしくはセレソーブ二個使用します、片方のカラムで吸着させ吸着物質が飽和したら賦活液で洗い流し、再利用します。洗い流している間はもう片方のカラムで吸着させ、これを交互に繰り返します。この回路図はLA-15システムと呼ばれています。
専用の装置が必要になります。
LA-15システムを紹介しましたがリポソーバやセレソーブは通常のPAでも施行できます。この時、リポソーバは大きなカラム(LA-40)を使用します。
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参考にした資料
[参考書]アフェレシス療法ポケットマニュアル(2012)
[参考書]アフェレシスマニュアル(日本アフェレシス学会,2010)