今回はちょっとややこしいDFPPについてご紹介します。
二重膜濾過血漿交換法(DFPP)の Point!
・2つの膜を使う(一次膜、二次膜)
・一次膜は固定、二次膜は除去したい物質で使い分ける
・二次膜はEC-20Wを使ったこちらの治療条件が主流。というかこれをパクれば問題は基本起こらない
二重膜濾過血漿交換法(DFPP)は血漿分離器(PS)で分離した血漿を血漿成分分画器(PF)でさらに分離します。
血漿分離器(PS)を「一次膜」。血漿成分分画器(PF)を「二次膜」と呼ぶことがあります。
血漿交換(PE)は血漿全体が除去対象に対し、
DFPPは血漿中の大きな物質(自己抗体など)を除去対象です。
二つのフィルターを使うのでDFPP(double filtration plasmaheresis)と言います。
なので、一つのフィルターを使う血漿交換(PE)をSFPP(single filtration plasmaheresis)と言うこともあります。
ちなみに血漿分離器(PS)の代わりに遠心分離を使うとPCPP(post centrifugal plasmaheresis)と言います。
DFPP回路図
血漿成分分画器(PF)では濾過された物質が体内へ戻ります。濾過されなかった物質は廃棄されます。
血漿成分分画器(PF) の性能
※血漿成分分画器[PF]の種類
・カスケードフロー
・エバフラックス
販売業者は違いますが製造元(旭化成メディカル)がすべて同じです。つまり同製品です。
IgMはどのPF膜でもよく除去できます。
IgGはふるい係数の小さいEC-20Wはよく除去できますが、生体に必要なアルブミンも同時に除去してしまいます。
置換液は基本アルブミン製剤を使い補充します。
また、どの膜もフィブリノゲンが抜けてしまうためDFPPは出血リスクが高いと言われています。
フィブリノゲンが抜けない選択的血漿交換(SePE)という治療もあります。
置換液
DFPP置換液量
DFPP置換液アルブミン濃度
上の図の治療条件
EC-20W
PF供給流量(Qin) 25ml/min
PF濾過流量(Qf) 20ml/min
PF廃液流量(Qout) 5ml/min
置換液流量(Qs) 5ml/min
の時のデータ(詳しくはこちらの文献)
上の図がよく使用されています。東京女子医科大学病院の江口先生の論文になります。
この方法であれば、置換液量は除去率を決めて体重から求めることができます。
置換液のアルブミン濃度は除去率80%であれば治療前のアルブミンより3倍の濃度が必要になることがわかります。
上のグラフは特定の条件下でのデータなので違う設定であれば調整する必要があります。
治療条件
上の図の通りで施行するなら
血液流量 最低90ml/min
血漿分離器(PS)
膜選択(プラズマフロー or サルフラックス or プラズマキュアー)
分離流量25ml/min
血漿成分分画器(PF)
膜選択(カスケードフローEC-20W or エバフラックス2A)
分離流量20ml/min
廃液流量5ml/min
置換液流量5ml/min
置換液量と置換液アルブミン濃度は上図から求めます。
PFの種類を口径の大きいものに変えるならアルブミンロスが少ないので置換液のアルブミン濃度を下げるなどの工夫が必要になります。
DFPPの適応疾患
DFPPの保険適応の疾患は
多発性骨髄腫 マクログロブリン血症 重症筋無力症 悪性関節リウマチ 全身性エリテマトーデス 血栓性血小板減少性紫斑病 重度血液型不適合妊娠 術後肝不全 急性肝不全 肝移植 腎移植 多発性硬化症 慢性炎症性脱髄性多発根神経炎 ギラン・バレー症候群 天疱瘡 類天疱瘡 巣状糸球体硬化症 抗糸球体基底膜抗体(抗GBM抗体)型急速進行性糸球体腎炎 抗白血球細胞質抗体(ANCA)型急速進行性糸球体腎炎 溶血性尿毒症症候群 家族性高コレステロール血症 閉塞性動脈硬化症 中毒性表皮壊死症 川崎病 スティーヴンス・ジョンソン症候群 血友病 慢性C型ウイルス肝炎
です。
保険適応外でも有効といわれている疾患は多くあります。
DFPPサーモモード
「DFサーモ」と呼ばれていて、DFPPの廃液を温めて血漿成分分画器に再循環させます。
アルブミンやIgGは体内に戻され
分子量の高いLDLやトリグリセリド・IgMなどは再循環を繰り返します。
プライミングボリュームは加温器(25ml)で少し増やすと再循環回路部は180mlになり除去物質の確保スペースが広がります。
加温によってTMPが上がりにくく、血漿処理量が増加し4000ml程度の血漿処理が可能。
アルブミンロスが少ないため置換液はいらず、閉鎖回路で感染リスクも低下します。
治療するには・・・
できるだけ大きな口径の血漿成分分画器(エバフラックス5AorカスケードフローEC-50W)を使用します。
加温は45度以上でフィブリノゲンが析出して目詰まりを起こすので42度以下が望ましいと言われています。
再循環ポンプ流量は80ml以上でアルブミンのふるい係数が維持されLDLとの分画が良好という実験データがあります。
DFサーモの適応疾患
家族性高コレステロール血症(FH)
閉塞性動脈硬化症(ASO)
に有効といわれています。
CF(クライオフィルトレーション)
DFPPの血漿成分分画器(PF)の
入口側にクーラー(冷却器)
濾過側にウォーマー(加温器)を置き、
クーラーで10度に冷やされると大量のクライオゲル(ヘパリン+フィブロネクチン+フィブリノゲン)形成しこれを除去します。
形成されたクライオゲルは濾過されず廃棄されます。
治療するには・・・
クライオゲルがトラップされることを考慮し、できるだけ口径の大きな血漿成分分画器を使用します(カスケードフローEC-50Wなど)。
濾過圧が上がり目詰まりを起こしたら生理食塩水で洗浄を行います。
専用の装置が望ましいですが、回路を直接氷水につける方法もあります。
ABO不適合腎移植時の赤血球型抗体除去時は1~2度に冷却し確実に抗体を除去する。
CFの適応疾患
クリオグロブリン血症
EDA(+)フィブロネクチン血症
→自己免疫性疾患(慢性関節リウマチ・強直性脊椎炎・全身性エリトマトーデス・多発性筋炎・大動脈炎症候群)
→多発性骨髄腫・移植腎慢性拒絶
白血球除去療法が効かない潰瘍性大腸炎に有効だったという報告もあります。
オススメ関連記事
アフェレシス はこちら
アフェレシスの適応疾患 はこちら
輸血 はこちら
抗凝固剤 はこちら
その他の記事 はこちら(HP)
参考にした資料
[参考書]アフェレシス療法ポケットマニュアル(2012)
[参考書]アフェレシスマニュアル(日本アフェレシス学会,2010)