自己免疫疾患や肝不全でよく使われる選択的血漿交換(SePE)についてご紹介します。
治療頻度が少ないので慣れていない方も多いと思います。
選択的血漿交換(SePE)の Point!
・SePEはエバキュアーと呼ばれる膜を使った血漿交換(PE)のこと
・フィブリノゲンなどの凝固因子が抜けないのが特徴!
・SePEと透析を同時に行うことを「PED」SePEと透析と濾過を同時に行うことを「PDF」と呼ぶ
・保険適応は血漿交換(PE)と同じ!なかでも自己免疫疾患と肝不全に有用
SePE
選択的血漿交換(SePE)とは血漿交換(PE)より小さい範囲の物質除去をすることです。
回路構成はPEと同じですが、「エバキュアー」という商品名の血漿分離器を使用します。
PE用の血漿分離器では全血漿が濾過されますが、エバキュアーはPE用に比べてポアサイズが小さいため、全血漿が濾過されず血漿中の小さい分子領域が濾過されます。
エバキュアーは二種類あり孔径の大きいほうがEC-4A、小さいほうがEC-2Aです。
エバキュアーはSePEだけでなく、SePEだけでなく透析液を流すことができるので血液透析が同時に可能です。
ラインを補充液用に付け加え、その分濾過量を増やすと血液濾過も同時に可能になります。
これで小分子量物質をより多く除去することができます。
このSePE+透析(Dialysis)+濾過(Filtration)を略してPDFといいます。
PDFは基本EC-2Aの方を使用します。
エバキュアーは血漿交換用の膜なので透析液は保険医療材料に含まれません、よって透析液の保険はとれないです。
PED
SePE+透析(Dialysis)のことで血液濾過はしません。
SePE →SePE
SePE + 透析 →PED
SePE + 透析 + 濾過 →PDF
除去物質
アンモニアやビリルビン、肝性昏睡物質、アルブミン結合物質など小~中分子量物質の除去に向いており、最大の特徴がどちらの膜も生体に必要なフィブリノゲンが抜けません。
肝不全例では血漿交換(PE)でフィブリノゲンが濾過され補充目的で置換液にFFPを使用しますが、エバキュアーでSePEをする場合、置換液のFFPも使用量を減らすことができるうえアルブミン製剤だけで十分な時もあります。
アルブミンはどちらの膜も濾過されるため、置換液で補充を行います。
EC-4AではIgGの除去率も上がるので自己免疫疾患に向いています。
治療設定
SePEの血液流量・分離流量・抗凝固剤などの設定は通常のPEと同様です。
通常の血漿分離器に比べてエバキュアーは孔径が小さいためTMPが上昇しやすいです。
通常のPE用血漿分離器は耐圧が60mmHgまで許容して作られているのに対し、エバキュアーは250mmHgまで許容されています。TMPの上限値の設定と観察には注意します。
・置換液濃度
SePEではアルブミンロスが少ないので置換液のアルブミン濃度は2(EC-2A)~4(EC-4A)%に希釈しアルブミン製剤・FFPの使用量を減らすことも可能です。BV計低下や検査でアルブミンの低下が問題の場合は補充します。
・置換液量
PEより物質除去能が劣るのでSePEは置換液量を多めに使用することが多いです。治療時間は必要な程度行います。
・施工方法
初回は物質がよく抜ける通常の血漿分離器(PE)もしくはEC-4A(SePE)を使用し、病態が落ち着いたらリバウンドが起きないようにEC-2AもしくはEC-4Aを使用するやり方が推奨されています
PDFは複雑に感じるかもしれませんが、濾過流量がPEと同様に血液流量の30%以下になるよう(上記SePE設定)+(通常のHDF設定)で考えます。
ハイフローにしたい場合は透析液流量を上げます。
透析液と補充液は通常通りサブラッドやサブパックの電解質液を使用します。
治療条件の例を図で表すと下のようになります。
肝不全例では24時間のPDF(cPDF) が良いという報告もあるのでcPDFの施行例も記載しておきます。
適応疾患
血漿交換の適応疾患が保険適応になりますが、IgMやLDLを濾過されないため、IgMがターゲットになる疾患や高コレステロール血症には向いていません。
主に肝不全で使用され、EC-4AではIgGをターゲットにした自己免疫性疾患も対象になってきます。
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参考にした資料
[参考書]アフェレシス療法ポケットマニュアル(2012)
[参考書]アフェレシスマニュアル(日本アフェレシス学会,2010)