血漿交換療法は
急性期では肝不全、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)など、慢性期では産科疾患から免疫疾患など幅広く治療されてきました。
原理はとても単純な血漿交換についてご紹介します。
血漿交換(PE)の Point!
・血漿分離器で血漿を捨てて、置換液で補充する
・置換液は新鮮凍結血漿(FFP)とアルブミンの2種類!
・捨てる血漿量は患者血漿の1倍(安定期)か1.5倍(重症期)が主流
血漿交換は
読んで字のごとく
血漿を交換します。
しくみをざっくり説明すると
血漿分離器(PS:plasma separator)で患者の血液を血球と血漿に分離します。
血球は患者に返します。
血漿は廃棄し、代わりに新鮮凍結血漿(FFP)やアルブミンで補充します。


※血漿分離器[PS]の種類
・プラズマフロー
・サルフラックス
・プラズマキュアー
販売業者は違いますが製造元(旭化成メディカル)がすべて同じです。つまり同製品です。
ブラッドアクセスから脱血した血液は血漿分離器に通ります。
血症分離器には中空糸と呼ばれる管の中を血液が通ります。
中空糸の側面には穴が空いていて、中に血液を通して穴より大きな血球は返血されます。穴より小さい血漿は穴から出ていき廃棄されるしくみです。
膜分離でなく遠心分離で血漿交換をする方法もあります。
置換液量
置換液量を決めるには、まず患者の血漿量を求める必要があります。
血液量は体重の8%(1/13)といわれているので、血液量を計算します。
血液量にヘマトクリット(Hct)をかけると血球量がわかるので
血液量から血球量を引いて血漿量を計算します。
例)体重60kgの患者
60×8/100=4.8L=4800mL(血液量)
Hct値40%だとすると
4800×40/100=1920mL(血球量)
4800-1920=2880mL(血漿量)
体重60kgの患者の血漿量は2880mLとなります。
計算が面倒・苦手という方は下の早見表を参考にしてください。
患者血漿量早見表

患者の血漿量がわかりましたね。
次は置換液量です。
置換液の量は多いほど血漿中の物質が除去されます。
よく使用される早見表を載せておきます。
PE置換液量

血漿量と同じ置換液量(1倍)で50%の血漿が除去されます。
血漿量の1.5倍ほどの置換量で80%の血漿が除去されます。
通常例では1倍、重症例では1.5倍の置換液量を使用することが多いです。
患者の血漿量と同じ置換液量(1倍)であれば50%じゃなく100%じゃね?と考える方もいるかもしれません。
そりゃ患者の血漿を全部抜いて、同じ量の血漿を入れ(置換)れば100%ですが、だいたい1分間で20~30mlずつ治療中に混ざりながら血漿を交換するので、1倍で50%、1.5倍で80%くらいになります。
置換液選択
PEでは新鮮凍結血漿(FFP)もしくはアルブミン製剤を使用します。
肝不全では凝固因子を、TTPではADAMTS-13などを補充する目的ではFFP
自己免疫疾患では自己抗体やサイトカインを除去する目的ではアルブミン製剤
という使い分けが基本です。
その他、コストや合併症リスクに応じて使い分けます。
アルブミン使用時は患者の膠質浸透圧(COP)と差が大きく出ないように計算します。
アルブミン製剤の膠質浸透圧
=2.8(Alb濃度)+0.18(Alb濃度)2+0.012(Alb濃度)3
※Alb:アルブミン
患者の膠質浸透圧
=2.1(TP濃度)+0.16(TP濃度)2+0.009(TP濃度)3
※TP:総タンパク
膠質浸透圧が同等になるようアルブミンを乳酸リンゲル液等で希釈します。
計算が面倒・苦手な方は早見表を載せておきます。

治療条件
理論上、血液流量が100ml/minでHct値が40%だとすると分離(血漿)流量は60ml/min以上に設定できません。一般的には分離流量は安全もかねて血液流量の30%以下にします。
通常は2~5時間ほどの治療ですが、分離流量を下げて時間を2倍程度にする緩徐血漿交換(SPE)や24時間する持続的血漿交換(CPE)などがあります。肝不全では時間を長くしたほうが良いと言われています。
治療中にTMPが60mmHg以上になると溶血を起こす危険性が高いのでTMPの設定は注意します。
適応疾患
保険適応の疾患をまとめると
多発性骨髄腫 マクログロブリン血症 劇症肝炎 薬物中毒 重症筋無力症 悪性関節リウマチ 全身性エリテマトーデス 血栓性血小板減少性紫斑病 重度血液型不適合妊娠 術後肝不全 急性肝不全 多発性硬化症 慢性炎症性脱髄性多発根神経炎 ギラン・バレー症候群 天疱瘡 類天疱瘡 巣状糸球体硬化症 抗糸球体基底膜抗体(抗GBM抗体)型急速進行性糸球体腎炎 抗白血球細胞質抗体(ANCA)型急速進行性糸球体腎炎 溶血性尿毒症症候群 家族性高コレステロール血症 閉塞性動脈硬化症 中毒性表皮壊死症 川崎病 スティーヴンス・ジョンソン症候群 血友病 慢性C型ウイルス肝炎
多くは薬剤抵抗性の場合にアフェレシスを用います。
保険適応でなくてもアフェレシスが効いたという疾患の報告も多く、ターゲット(除去物質)をしっかりとらえるのが治療のカギです
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参考にした資料
[参考書]アフェレシス療法ポケットマニュアル(2012)
[参考書]アフェレシスマニュアル(日本アフェレシス学会,2010)