IABP 補助循環

やさしく「IABPの注意点」をまなぶ

投稿日:5月 3, 2020 更新日:

IABPは大動脈バルーンパンピング(intra-aortic balloon pumping)と言い、心臓の収縮期にバルーンを収縮、心臓の拡張期にバルーンを拡張することで心機能を補助します。

導入後は機械が勝手にバルーンを収縮・拡張するので、基本は触ることがあまりないですが、意外と知られていない合併症やトラブルがあります。

今回はそんなIABPの管理のコツをご紹介します。

IABP管理の Point!
・IABP導入後は下肢虚血が起こりやすい!
・最高血圧は通常では心臓「収縮期」IABP患者では心臓「拡張期」になる
・血圧が高すぎるとバルーンが膨らみにくい





IABPは下肢虚血が起こりやすい!

IABPは「挿入した側の足」で虚血が起きやすいです。

もともと足の血管が細く、挿入箇所のIABPの管が血管径ピッタリに入ってしまうと、下肢の血流がなくなってしまいます。

・足背動脈、後脛骨動脈の拍動消失
・末梢皮膚温の低下
・末梢皮色の悪化
・下肢痛
・知覚運動神経麻痺

などで虚血の発現がわかります。完全閉塞すれば壊死する可能性もあります。

よく観察しておいた方が良いです。

原因としては患者が低心拍出量状態であったり、患者の血管径が細い影響。

他にも、IABPで使用するシース径が太いことも影響してきます。

IABPで使用するシースをそもそも使わない(シースレス)もしくは側孔付きシース(穴が開いてあるタイプ)を用いることで下肢虚血を予防できると言われています。





「言葉」の注意点

IABPではおなじみの圧波形です。

灰色は自己の血圧波形
赤色はIABPによる血圧波形

ダイアストリックは「拡張」
シストリックは「収縮」

という意味をもちます。

同じ「ダイアストリック」という言葉でも、
自己の拡張期血圧(DBP : diastolic(ダイアストリック) blood pressure)とIABPによるダイアストリックオーグメンテーション圧では波形の指す位置が異なり、意味も変わってきます。

シストリックに関しても同様なので、注意点というか共通認識が必要なことだと思います。

カルテ上の記載やカンファレンスで話がかみ合わないこともあるかと思います。





「モニター表示」の注意点

臨床の現場では同じ圧波形をモニター同士で信号を飛ばしあい、生体情報モニターとIABP装置のモニターの2か所で圧波形が表示されることがあります。

IABPモニターのアルゴリズムではオーグメンテーション圧・収縮気圧・拡張期圧と確実に識別することができますが、

生体情報モニターでは
最大値を収縮期圧
最小値を拡張期圧

と認識してしまうため、

本来は「オーグメンテーション圧」を生体情報モニターでは「収縮期圧」と表示してしまいます。

この場合はIABPモニターの表示を信用してください。

IABP施行中の血圧値は大きな指標になるので、われわれ医療従事者が誤認識しないよう注意しましょう。






高血圧には注意!

先日、メーカーさんからアナウンスがありました。

血圧が高い患者にIABPを挿入した場合、バルーンが半分くらいしか膨らまないことがあります。

IABPの機種によってはバルーンが破裂することを避けるために、高すぎない適度な圧でバルーンを膨らませています。

血圧が高いと、バルーンの圧が押されてしまいバルーンが膨らみにくくなることがあります。

IABP画面上の波形がなだらかになり、透視でも膨らみにくさが確認できます。

実際のバルーンの圧(実測値)は社内情報なので聞けなかったです。

そもそも血圧が極端に高い患者に対してIABPを挿入することはあまりありませんが、ACSの冠血流サポートを目的として、IABPを導入した症例でこのようなことがあったそうです。





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参考にした資料

[参考書]臨床工学技士集中治療テキスト(日本集中治療医学会,2019)

[参考書]救急・ICU患者のME機器からみた呼吸・循環管理(2018)

[指針]急性・慢性心不全診療ガイドライン(各学会,2017)

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