CBP CRRT 血液浄化

ヘモフィールとセプザイリスの使い分けとは

投稿日:1月 18, 2019 更新日:

敗血症治療でヘモフィールセプザイリスなど「吸着」の原理を用いたCHDF、いわゆるCAH-CHDF(cytokine-adsorbing hemofilter)が注目されています。

「non-renal indication」なんて言い方もします。

どっちがいいの?という疑問から
それぞれの膜の特徴を見て考察してみました。





CAH-CHDFの意味

まずは敗血症の病態生理について知る必要があります。簡単に記事にまとめてみたので見ていただけると理解しやすいかと思います。

敗血症ではPAMPsやalarminから起因して、IL-6やTNF-αなどサイトカインが過剰に産生されます。しかも連続的でサイトカインが一つ増えるとレセプターに反応して他のサイトカインを産生したり、再びalarminがトリガーしたり、と負のスパイラルで増殖を続けます。

これらサイトカインの増殖を止めるために、原因となるサイトカインを除去し、連鎖を断ち切る。この考えから生み出されたのが血液浄化膜の吸着によるサイトカイン除去「CAH-CHDF(cytokine-adsorbing hemofilter)」になります。

要するに「サイトカインが悪さをしているのならサイトカインを吸着して抜いちゃおう」といった考え方です。





CAH-CHDFで使用する膜の特徴

現在では二種類のCAH-CHDFの膜があります。

一つは東レ・メディカルが出しているPMMA膜(ヘモフィールCH)

もう一つはバクスターが出しているAN69ST膜(セプザイリス)があります。

それぞれ吸着原理が違うため、解説したいと思います。





PMMA膜の吸着原理

PMMA膜では主に「疎水結合」を利用してサイトカイン吸着を行います。
疎水結合とは、ざっくり言うと、水分子と水分子が水素結合し、それ以外がはじき出されて集合する(厳密には違いますが)ことです。
これに加えて、PMMA膜では炎症性サイトカインの代表でもあるIL-6がはまり込みやすい大きさの穴を作ることによって、サイトカインを吸着しています。





AN69ST膜の吸着原理

AN69ST膜では主に「イオン結合」を利用してサイトカイン吸着を行います。
サイトカインの多くは陽性荷電が多く(アミノ基による)、それを陰性の膜でくっつけようとして作られたのがAN69ST膜です。ざっくりな説明ですが、プラスとマイナスのものがくっつく、という単純な原理です。





PMMAとAN69ST膜の違い

二つの吸着膜を紹介しましたが、ここでこんな質問が出てくるかもしれません。「どっちの膜が良いの?」です。

PMMA膜AN69ST膜は原理が違うため、吸着できるサイトカインも違ってきます。よって「どっちも違って、どっちも良い」が答えになります。

普段の透析やCHDFでは除去目的の物質を「分子量」で考えるのがメジャーですが、陰性荷電膜のAN69ST膜を考慮すると、「荷電」の影響も考えなくてはなりません。

図はAN69ST膜の吸着領域と、PMMA膜の吸着領域を推察したものです

AN69ST膜:正電荷(等電点7以上)領域
PMMA膜:分子量約20,000~30,000(IL-6近辺)領域

での吸着をします。

例えばここに炎症性サイトカインのIL-6をはめ込んでみると、IL-6は分量約24,000、等電点5.0なのでPMMA膜の吸着領域になります。

原理的にはIL-6はAN69ST膜よりPMMA膜の方が吸着が優れているという結果になりました。実際に札幌医科大学が出されている文献でもそのような記載があります。

しかし、他のサイトカイン(HMGB2やTNF-α、IL-8、Histoneなど)も同様に原理通りに吸着特性が分かれるわけではなく、PMMA膜の吸着領域なのにAN69ST膜の方が吸着が優れていたり、AN69ST膜の吸着領域なのにPMMA膜の方が吸着が優れていたり、といったことが多々あります。

さらに、日々の簡単な血液検査やバイタルなどから、PMMAとAN69STの膜選択は判断できず、実臨床では結局使用する人の「好き嫌い」で選択されることが多い印象です。

まだまだ研究不足を感じますが、CHDF施工中の薬剤投与の際など、薬剤吸着の推察にも上の図は役に立つと思います。





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