酸素マスクや鼻カニューレなど酸素療法で使用するデバイスはたくさんあります。
ここでは酸素療法の一つ一つの意味を知り、現場に役立てていただけたらと思います。
酸素療法デバイスのPoint!
・鼻カニューレ < 単純フェイスマスク < リザーバ付きマスクの順に酸素化が強い
・ベンチュリ―マスクはII型呼吸不全の患者に使用される(CO2ナルコーシスを回避)
・ハイフローネーザルカニューラはCO2ウォッシュアウトや若干のPEEP効果がある
・4l/min以下では加湿の必要性はない
自発呼吸下での酸素療法(COT : conventional oxygen therapy)は複数のデバイスがあります。順に解説していきます。
低流量と高流量
成人の一回換気量は500mLで吸気時間は約1秒です。
つまり吸気流速は500mL/秒で
変換すると30L/minになります。
30L/min以下を低流量システム
30L/min以上を高流量システム
と言います。
低流量システム
低流量の酸素療法器具では吸気時に足りないガスは大気から吸気します。
なので供給する酸素濃度は100%でも大気の空気と混ざるため、 FIO2は下がります。
呼吸状態で左右されるためFIO2は不安定です。
種類としては
・鼻カニューレ
・単純フェイスマスク
・リザーバ付きマスク
などがあります。
高流量システム
高流量の酸素療法器具では吸気時は供給されるガスを吸気するため、設定した酸素濃度がそのままFIO2となります。
使用する酸素も多くなるためコストがかかります。
種類としては
・ベンチュリ―マスク
・ネブライザー付きベンチュリ―装置
・HFNC
鼻カニューレ
ちょっと酸素化したいときに使用します。
酸素流量の最低値は特に決まっておらず微量でも問題ないです。
酸素流量6 l/min以上だとFIO2が頭打ちになり、患者の不快感も強くなるため最高6 l/min以下が推奨されています。
酸素流量でFIO2を調整しますが低流量なのでばらつきがあります(24~40%)。
実際は3 l/minで使用することが多いです。
4 l/min以下では加湿の必要はないと言われています。
より酸素化したい場合は単純フェイスマスクを使用します。
単純フェイスマスク
鼻カニューレで酸素化が不十分な時に使用します。
酸素流量は5 l/min以下で再呼吸リスクがあるので5 l/min以下にしたい時は酸素カニューレを使用します。
酸素流量は10 l/min以上でFIO2が頭打ちになるので5~10 l/minが推奨されています。
酸素流量でFIO2を調整しますが低流量なのでばらつきがあります(35~60%)。
リザーバ付きマスク
単純フェイスマスク+リザーバでより高いFIO2を得られるようにされています。
リザーバに貯めた酸素を吸気します。
呼気はマスクの呼気弁から抜け、リザーバは一方弁で呼気が入らないようになっています。※一方弁がついてないものもあります。
大気中の空気を呼吸しないようマスクのフィッティングが大事になってきます。
換気量が増加しリザーバ内のガス以上の吸気が必要な時でも大気から空気を流入する安全弁がついています。
酸素流量は10~15 l/minが推奨されています。
60%以上の高濃度FIO2が実現できNPPVや人工呼吸器までの短時間使用が多いです。
ベンチュリ―マスク
ベンチュリ―効果を使った高流量の酸素療法器具です。
ダイリューター(弁)と酸素流量を変えてFIO2と供給流量を調整します(各社の添付文書に推定値が書かれています)。
ダイリューターは回転するタイプや色を変えるタイプがあります。
原理上FIO2を増加させると供給流量は減少し、その逆も起こります。
ダイリューターを変えずに酸素流量だけ変えてもFIO2はほとんど変化しないため注意が必要です。
高流量で既定のFIO2が得られるため、II型呼吸不全の患者に用いられます。
ネブライザー付きベンチュリ―装置
ベンチュリ―マスク+加湿の高流量の酸素療法器具です。
酸素流量と酸素濃度をダイヤルで調整し供給流量を30 ml/min以上に調整します。
30 l/min以下にも調整できてしまうので、その場合は大気から設定量以外の空気も吸気され設定した酸素濃度より低いFIO2になるので注意します。
ヒーター付のものは加湿効率が上昇します。
供給流量早見表
※アクアパックは最高12 l/min 50%、インスピロンは最高15 l/min(流量計による) 60%
経鼻高流量酸素療法
(HFNC:high flow nasal cannula)
ハイフローネーザルカニューラやネーザルハイフローと呼ばれます。どっちも同じ意味です。
配管から酸素と空気をブレンドして設定したFIO2と供給流量を送気します。
鼻咽頭腔のCO2ウォッシュアウト効果や口を閉じた状態では5cmH2O程度のPEEP効果があります。
換気補助効果は低いためII型呼吸不全では軽症患者に限定され、I型呼吸不全でNPPVと同等の効果があると言われています。
NPPVでは絶対湿度5~30mgH2O/l程度でありますが、HFNCでは絶対湿度44mgH2O/l・相対湿度100%で加湿が優れています。加温加湿器は37℃の挿管モードが望ましい?
酸素療法とNPPVの中間的な治療法と考えられています。
酸素化だけでなく、換気補助や心不全でPEEPをかけたい症例にはNPPVが用いられます。
換気を優先して行う場合は人工呼吸器が用いられます。
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参考にした資料
[参考書]人工呼吸ケアのすべてがわかる本(2014)
[雑誌]酸素療法(INTENSIVIST,2018)