ECMOを導入するにはまず「適応」と「禁忌」について紹介します。その後に導入から管理するまでを紹介します。
ECMOの適応
ECMO適応の考え方についてお話します。
ECMOはどんな患者にでも使用すれば生命維持できます。少なくとも使用しない場合に比べて保つことができます。
ECMOは循環動態を維持させる力がありますが、治療をする力はありません。あくまで「時間稼ぎ」なのです。
なので、誰にでも使用していいわけではありません。
基本は回復の見込みがある急性心不全(心筋梗塞、心筋炎など)や急性呼吸不全(ARDSなど)に使用します。年齢も大事です。
導入時に離脱のことも考え、VA ECMO、VV ECMOの判断をします。
VA ECMOの適応
適切な血管内容量でボリューム負荷、昇圧剤、IABPを使用してもショックが持続する場合です。
疾患でいうと急性心筋梗塞、心筋炎、開心術後のショックなどが当てはまります。
回復するまでECMOで心肺補助を行います。
心肺停止した患者にECMOを用いて心肺蘇生(CPR)することがあります。ECMOを用いたCPRなので「ECPR」と言います。ECPRの適応・禁忌もECMOと同じ考え方です。
基本は回復の見込みがないとECMOは導入しませんが、上で説明した急性心不全や慢性心不全の急性憎悪など心臓そのものが悪い時(他に臓器不全がなく)、心移植を目的にECMOを導入することがあります。そこから体外式VADや植込み型VADを使用します。病態が可逆的でなくても許容されることがあります。
あとは賛否両論ありますが敗血症にECMOを導入することがあります。
VA ECMOの禁忌
回復の見込みがない心臓や移植の適応がない患者は禁忌です。
ECMOは体外循環を行うので、同時に抗凝固療法も行います。なので脳出血や外傷などの抗凝固が害悪になる患者は禁忌です。
あとは慢性的な臓器不全、高齢、肥満などです。
VV ECMOの適応
可逆的な(回復の見込みがある)急性呼吸不全や気道閉塞などの一時的な換気不全(異物、誤嚥)が適応です。
疾患でいうと急性呼吸促迫症候群(ARDS)が代表的です。他にも肺移植までのブリッジ、重症喘息、外傷後の呼吸不全があげあられます。
他にもVV EVMOの適応には下のMurrayスコアがよく使用されます。合計点0~16点で評価し、3点以上で適応と言われています。
VV ECMOの禁忌
人工呼吸器設定で30cmH2O以上のプラトー圧、やFIO2が0.8以上が一週間以上続いている時は回復の見込みが乏しいため、ECMOを使用しません。
ECMOは体外循環を行うので、同時に抗凝固療法も行います。なので脳出血や外傷などの抗凝固が害悪になる患者は禁忌です。
あとは慢性的な臓器不全、高齢、肥満などです。
導入準備!!
適応からECMOの導入が必要と判断したら医師はカニュレーションを行います。われわれ臨床工学技士はECMO回路のプライミングを行います。
医師や看護師がプライミングを行う施設もあります。
ECPRではカニュレーションとプライミングだけでなく輸液、DC、胸骨圧迫、挿管、筋弛緩や鎮静、昇圧剤などあらゆる処置を同時進行で行うことがあり、現場の共通認識が重要になってきます。
身長・体重・からできるだけ太いカニューラサイズを選択します。
自発呼吸によって空気塞栓をおこすリスクがあるため浅麻酔状態になるまで鎮静させます。(体動をなくす意味もあります)
カニュレーション時にヘパリン50~100単位/kgを投与し、ECMO管理中は持続投与します。
導入のタイミングを見計らってECMOをプライミングします。プライミングが完了次第で鉗子によって遮断しカニューラと接続できる状態にしておきます。ECMO装置はいつでも使用できるよう常日頃から訓練、物品やプライミングの準備をしておきます。
確実にECMOを導入することがわかってからプライミングするのが望ましいです。なぜならめちゃくちゃECMOの回路が高額だからです(約30万円)。プライミングまでして「やっぱECMOいらない」なんてなると回路代を算定できません。その場合は2,3日プライミングした状態で保管しておき、ECMOを導入する機会があればプライミングした回路を使用することもあります。
別日にECMOをプライミングしておき、使用時にプライミングしておいたECMO回路を使用する施設もあります。2、3日であれば問題ないですが30日以上経過した回路の使用は推奨されていません。
いざ、導入!
カニュレーションとプライミングが終了したら回路とカニューラを接続します。
回路とカニューラが違うメーカーのものだと、接続できない場合があります。
事前の確認が必要で回路とカニューラを同じメーカーのものに揃えるか、中継となるコネクタで対応します。チューブとカニューラの径はカタログや添付文書にに載っています。
接続後はエア抜きを行い、エア抜き後は三方活栓を必ず閉じます。
開いているとECMO開始時に送血側では液が漏れてすぐに気づきますが、脱血側だとエアを引き込んで人工肺部分でエアが溜まってしまいます。
カニューラとECMO回路の接続が完了し、準備が整ったら遠心ポンプを回します。遮断鉗子を開けて酸素を流します。
当院では一律に酸素2L/min、回転数3000rpmで開始するようにしています。
マイナーな管理ですが、「人工肺出口のCO2を測定しPaCO2を予測するという」方法があります。(症例報告)完全に予測することはできず、大きく外れているPaCO2は予測することができるので、導入直後のモニタリング程度であれば、有用なモニタリングと考えられています。
ある程度の流量が確保できていることを確認し、バイタルが落ち着いたら回転数・ガスを調整します。
現場がある程度落ち着いていたらこの時点で、ルート類、片付け、少しずつ環境を整えていきます。
VA ECMOでは送血方向とは逆向きに4、5FrのシースやAラインを使って、ECMOの枝回路にて送血し下肢虚血を予防します。
ECMO導入の練習風景
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参考にした資料
[参考書]ECMO・PCPSバイブル(各学会,2021)
[参考書]呼吸ECMOマニュアル(2014)
[雑誌]ECMO(INTENSIVIST,2013)
[指針]ELSOガイドラインHP(各学会)
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