(原発性)マクログロブリン血症(WM)
・概要
M蛋白が増加することで出血や失明などの眼の症状を引き起こす疾患。
リンパ形質細胞リンパ腫(LPL)とほぼ同義であるが、WMはLPLの中でも骨髄にリンパ形質細胞浸潤を認め、単クローン性IgMを産生する病型に限定して使用される
・診断
単クローン性IgM血症、骨髄浸潤、免疫形質などで診断する。
原発性マクログロブリン血症の診断と治療 飯田真介
・アフェレシス
・除去ターゲット
IgM
・アフェレシスの位置づけ
症状が現れた時点で治療開始が望ましく、PEが第一選択に選ばれる。薬物療法との併用が推奨されている。近年はPEよりDFPPを選択される傾向だが、M蛋白がクリオグロブリンの性質に似ている際はCR(血漿冷却濾過法)が有効という報告もある。
日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン2018年
・保険適応
週1回3か月
多発性骨髄腫(MM)
・概要
血中のM蛋白が増加し、高Ca血症、腎不全、貧血、骨病変(CRAB)の臓器障害が起きる疾患
・診断
ベンズジョーンズ蛋白、尿蛋白、血算、蛋白分画、免疫グロブリン免疫電気泳動法、β2MG、骨髄腫細胞、画像検査(X線、CT、MRI、PET)などの検査を行う。IMWG診断基準
・アフェレシス
・除去ターゲット
IgG
IgM
※M蛋白
・アフェレシスの位置づけ
血中M蛋白が高値の症例は過粘稠度症候群を起こす可能性があるため、血漿交換の適応となる。
造血器腫瘍診療ガイドライン 日本血液学会2018年版
・保険適応
週1回3か月
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
・概要
ADAMTS13(vWFを切断する蛋白分解酵素)活性低下によりフォンウィルブランドファクター(vWF)が分解されず、過剰な血小板凝集、血栓を生じる。
TMA(血栓性細小血管障害症)はTTPとHUS(溶血性尿毒症症候群)が代表的疾患である。
・診断
血小板数↓(原因不明)
ADAMTS13活性10%以下
抗ADAMTS13自己抗体が陽性→後天性TTP、陰性→先天性TTP(USS)
などの評価を行う。診断が難しくDICやHUSなどの鑑別診断も行う。
難病情報センター
・アフェレシス
・除去ターゲット
IgG
IgM
※ADAMTS-13
vWF
ADAMTS-13(補充)
vWF(補充)
・アフェレシスの位置づけ
先天性TTPはFFPの輸注、後天性TTPはPEが第一選択となる。無治療であれば死亡率は90%だが、PEを行うことで13%まで低下するといわれている。
・保険適応
開始後一か月を上限
Plt 15万/μl以上になった日の2日後まで
溶血性尿毒症症候群(HUS)
・概要
腸管出血性大腸菌(EHEC)感染から微小血管症性溶血性貧血、血小板減少、急性腎障害を伴う疾患。TMA(血栓性細小血管障害症)はTTP(血栓性血小板減少性紫斑病)とHUSが代表的疾患で、その他に二次性TME、aHUSがある。
・診断
溶血性貧血(破砕状赤血球 + Hb 10g/dl↓)
Plt 15万/μl↓
急性腎障害(血清Cr 1.5倍↑)
※原因が志賀毒素、TTP、意外であればaHUS
・アフェレシス
・除去ターゲット
IgG
IgM
※ADAMTS-13
vWF
志賀様毒素(ベロトキシン)
ADAMTS-13(補充)
vWF(補充)
・アフェレシスの位置づけ
EHEC由来のHUSでは有効性が確立されていないが、aHUSではPEが有効といわれている。PEは急激な血漿膠質浸透圧上昇(高血圧、脳浮腫、心不全、肺水腫などの合併症)のリスクがあるため透析の併用が望ましいといわれている。
溶血性尿毒症症候群の診断・治療ガイドライン日本腎臓学会
非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)診断から治療まで
・保険適応
21回
血液型不適合妊娠
・概要
母体の抗体が胎児の溶血や水腫が起きる疾患。
・診断
血液型判定や不規則抗体スクリーニング、抗体価の測定を行う。
・アフェレシス
・除去ターゲット
IgG
・アフェレシスの位置づけ
妊娠初期で胎児輸血が困難な場合にPEが選択される。遠心分離法やDFPP、PAの報告も増えてきている。PEでは施行後リバウンドを考えて1~1.5PVの少量頻回が有効との報告もあり。
・保険適応
Rh式血液不適合妊娠による体内胎児死亡or新生児黄疸の既往+間接クームス試験高値(妊娠20週↓64倍↑、20週↑128倍↑)
血友病
・概要
血友病とは血液凝固第VIII因子(FVIII)あるいは凝固第IX因子(FIX)の量的、質的異常によるX連鎖性劣性遺伝形式の先天性出血性疾患。FVIII欠乏症が血友病A、FIX欠乏症が血友病B。
・診断
出血時間、Plt、PT(プロトロンビン時間)正常APTT延長
FVIII(FIX)活性40%↓で確定診断
・アフェレシス
・除去ターゲット
IgG
・アフェレシスの位置づけ
基本は濃縮凝固FVIII(FIX)製剤投与を行う。PEが行われることもある。
日本止血学会 後天性血友病A診療ガイドライン2017年
日本止血学会 インヒビター保有血友病患者に対する止血治療ガイドライン2013年
日本止血学会 インヒビターのない血友病患者に対する止血治療ガイドライン2013年
・保険適応
インヒビター力価5ベセスダ単位以上
真性多血症(PV)
続発性多血症
・概要
真性多血症(PV)は原因不明の造血幹細胞異常が起こり、赤血球が増加する骨髄増殖性腫瘍の一種です。低酸素やEPO産生過剰など原因の多血症を続発性(二次性)多血症という。
・診断
赤血球増加
骨髄所見
JAK2V617F変異 or JAK2 exon12変異
血清エリスロポエチン濃度が正常下限以下
などの診断項目がある。
・アフェレシス
・除去ターゲット
赤血球
・アフェレシスの位置づけ
PVでは赤血球増加から血液粘度が上昇し、血栓リスクを下げることを目的に治療の第一選択として瀉血療法が用いられる。その他、化学療法(抗がん剤など)や抗血小板剤なども用いられる。続発性多血症ではまず基礎疾患に対する治療を行う。
・保険適応
250点
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参考にした資料
[参考書]アフェレシス療法ポケットマニュアル(2012)
[参考書]アフェレシスマニュアル(日本アフェレシス学会,2010)
[HP]令和2年度診療報酬点数 処置(今日の臨床サポート)
↑厚労省の診療報酬改定内容がわかりやすくまとまっているサイトです。