人工呼吸器

やさしく「外呼吸」「内呼吸」をまなぶ

投稿日:2月 24, 2020 更新日:

患者の呼吸状態に合わせて人工呼吸器が必要なのか、酸素療法だけでいいのか、適切に呼吸器デバイスを選択しなければなりません。

そこで「換気」だけでなく、「呼吸」に関するすべてに知識をギュッとまとめてみました。

まずは病態から知り、必要なデバイス、設定を理解していただければと思います。

呼吸メカニズムの Point!
・呼吸は「換気」「外呼吸」「内呼吸」に分類できる
・酸素の補助には酸素療法、換気の補助は人工呼吸器、肺が機能していなければECMOを使う





呼吸とは

言わずもがな

酸素を入れ、二酸化炭素を出す

ことです。

息を吸って吐くのはいわゆる「換気」
肺胞内と血液中のガス交換を「外呼吸」
血液中と細胞間のガス交換を「内呼吸」

といいます。

そして換気のコントロールは脳で行っています。

機械のサポートですが

酸素化が不十分な時に酸素療法・HFNC
換気の補助も必要な場合はNPPV・人工呼吸器
重症例ではECMO

といったイメージを持てば分かりやすいと思います。





呼吸のリズム 

脳は呼吸のリズムを調節しています。

大脳
→脳幹(橋)の呼吸調節中枢
→脳幹(延髄)の呼吸中枢
→伝達神経
→呼吸筋

と指令が下され換気が行われます。

吸息し肺が伸展されると脳幹の呼吸中枢に連絡され、呼吸筋に指令を下し呼息へと切り替わる。これを肺迷走神経反射(へーリング・ブロイエル反射)といいます。

基本は体内のPaCO2を観察して呼吸のリズムを調節しています。日常生活の運動で息が荒くなるのも体内の酸素ではなく二酸化炭素の量で呼吸を調節しているからです。

補助的にPaO2も観察し、体温や精神状態でも呼吸中枢に連絡し無意識(不随意)的に呼吸の調節を行っています。意識して呼吸(随意)も同じルートで行われます。

脳に障害があると自発呼吸ができなくなることがあります。

この時は人工呼吸器を装着し、自発がないため強制換気(A/C,SIMV)というモードで換気を代行します。





呼吸筋 

横隔膜と外肋間筋を使うことで換気を行っています。

横隔膜・外肋間筋が収縮
→胸腔内の陰圧↑↑↑
→吸気

横隔膜・外肋間筋が弛緩
→胸腔内の陰圧↑
→呼気

(胸腔内は常に陰圧です)

換気によって肺胞内に入ったガスは血中ガスと交換されます。


酸素化

間質性肺炎やARDSなどの肺そのものに異常のある拘束性肺疾患は、肺胞内と血中で酸素の交換が悪くI型呼吸不全と呼ばれます。

この時は酸素療法やHFNC(ハイフローネーザルカニューラ)がよく行われます。

FIO2を上げて酸素化補助(PaO2↑)

重症化すれば換気量維持や平均気道内圧を上げる目的で人工呼吸器を使用することもあります。

酸素療法で高濃度のFIO2で治療するとCO2ナルコーシスになる危険性があります。

上でも説明した通り、脳は「二酸化炭素」と「酸素」の量で呼吸を調節しています。

そこで酸素が高濃度であると呼吸が抑制されて低換気になり、人工呼吸器をつけることになります。

本来は酸素療法だけで治療できる患者に人工呼吸器をつけることのないようSpO2は95%くらいにして(症例によるが)酸素療法を行います。


換気

COPD(慢性閉塞性肺疾患)や気管支喘息(重症)などの気道の通過障害がある閉塞性肺疾患は、換気が不十分なため二酸化炭素は蓄積し酸素化もできずII型呼吸不全と呼ばれます。

この時は主に換気補助を目的としたNPPVや人工呼吸器(IPPV)がよく行われます。PS(プレッシャーサポート)などのサポート換気で換気量の上昇を図ります。

換気量を上げて換気補助(PaCO2↓)

「酸素療法」の記事はこちら

「NPPV」の記事はこちら

「人工呼吸器」の記事はこちら



呼吸不全

PaO2PaCO2
I型60mmHg以下
II型60mmHg以下40mmHg以上

詳しくは別項で

基本的に換気と酸素化は分けて考えます。

「呼吸不全とは」の記事はこちら





酸素運搬量(DO2) 

循環器は一見すると呼吸と関係がなさそうですが、実は強い関係があります。

血液を酸素化しても血液の流れが止まったままでは全身には送られないので、臓器や抹消まで酸素を運ぶために「心拍出量」が必要です。さらに血中の酸素の多くはヘモグロビン(Hb)にくっついて運ばれます。よって「ヘモグロビン」も必要になります。

「循環動態」の記事はこちら

SaO2、心拍出量、ヘモグロビンは酸素化において監視すべき項目です。

低酸素症と低酸素血症が違うのもこの式からわかります。

「低酸素症と低酸素血症の違い」の記事はこちら

ヘモグロビンが足りない場合は輸血を行います。

心拍出量が不十分な場合は輸液や昇圧剤、補助循環(ECMO)を行うことがあります。

心拍出量に問題がなく、酸素化不良の場合はVV ECMOを行うことがあります。

「ECMO」の記事はこちら





代謝 

組織に運ばれた酸素は細胞内で代謝され、二酸化炭素とエネルギー(ATP)に変換されます。これを好気性代謝といいます。

SaO2や心拍出量が低下し、酸素の供給がうまくいかないと好気性代謝がされず、ATPと乳酸に変換されます。これを嫌気性代謝といいます。好気性代謝に比べ作られるATPが少なく、乳酸は予後不良因子の一つでICUではモニタリングする項目です。


酸素消費量(VO2)

代謝に使用される酸素の量を酸素消費量(VO2)といいます。通常はDO2の20~30%程度なので、動脈血酸素飽和度(SaO2)が100%だとすると静脈血酸素飽和度(SvO2)は70~80%ほどになります。敗血症など病態によってはVO2が高くなるのでSvO2もモニタリングします。


酸塩基平衡

代謝によって生み出された二酸化炭素の運搬図です。血中に二酸化炭素を呼気中に放出することで結果的にH+を減らしpHを一定に保とうとします。これを呼吸による酸塩基平衡といいます。II型呼吸不全ではPaCO2が高くpHが下がりアシドーシス傾向にあります。代償性に重炭酸(H2CO3)が上昇することがしばしば見られます。血液ガスのチェックを行います。





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