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透析マニアが解説!ヘモフィルターに求められる性能

投稿日:2月 14, 2020 更新日:

ヘモフィルターは種類が豊富で、臨床では症例ごとの使い分けが重要になってきます。

ヘモフィルターの使い分けはこちら

今回はそんなヘモフィルターの作りと性能についてご紹介します。

少し現場から離れた基礎的な部分ですが

興味のある方はぜひ読んでください。

ヘモフィルターの性能を理解する Point!
・ヘモフィルターに求められる性能は「拡散」「濾過」「抗血栓性」「少ない経時劣化「生体適合性」の5つ!
・販売されているどの膜も性能





ヘモフィルターの構造



ヘモフィルターを解体!

中身はこんな感じ。

臨床では「膜」や「フィルター」と呼ぶ印象ですが、正確には血液透析器(ダイアライザ)や血液濾過器(ヘモフィルター)と認可された呼び方があります。

どちらも保険償還が違います。膜としての構造はほとんど同じです。

血液浄化器には中空糸と呼ばれる無数の糸のようなものが入っています。

この中空糸の一本一本の中を血液が通り、外側を透析液が流れています。

中空糸の横には側孔と呼ばれる穴が空いてあり、この穴から拡散限外濾過が行われます。

血液透析器(ダイアライザ)は主に血液透析(HD)
血液濾過器(ヘモフィルター)は主に持続的血液透析濾過(CHDF)
で使用します。

穴より小さい物質が移動し、穴より大きい血球やタンパクは患者側に返っていきます。





ヘモフィルターに求められる性能

ヘモフィルターに求められる性能に代表的な5つの項目があります。

ヘモフィルターに求められる性能
・高い溶質除去性能
・高い透水性能
・生体適合性
・高い抗血栓性
・経時劣化が少ない(ファウリングなど)

このように高い性能が求められます。

5つの項目はイマイチわかりずらいので、臨床的な言葉に置き換えると

ヘモフィルターに求められる性能(改訂)
・拡散による小分子除去
・濾過による大分子除去・除水
・アレルギー反応などが起こらない
・長いライフタイム
・ライフタイム、拡散、濾過性能の劣化が少ない

このように、透析治療をするうえで必要な性能になります。

世間で見られるヘモフィルターはこの5つの項目を満たしてますが、

ヘモフィルターごとに特に優れている項目、特徴があります。

なので、臨床ではヘモフィルターを症例ごとに使い分けているのです。

ヘモフィルターの使い分けはこちら





ヘモフィルター機能性の評価

ヘモフィルターに求められる性能として5つご紹介しましたが、

それぞれの項目を評価する方法があります。

拡散の評価
・クリアランス(CL) ←よく使う
・ダイアリザンス
・総括物質移動面積係数(KoA)

限外濾過の性能
・ふるい係数(SC) ←よく使う
・膜間圧力差(TMP) ←よく使う
・濾過係数(Lp)
・限外濾過率(UFRP)

抗血栓性
・ライフタイム ←よく使う
・血栓の評価 ←よく使う

生体適合性
・バイタルサイン(心電図や血圧など)
・顕微鏡観察(SEMなど)

吸着特性
・循環実験
・膜前後の濃度
(定量的に観測する方法はない)

筆者もいろんな論文を読みあさってきましたが、

このように評価の仕方はさまざまです。

研究をする方は他にもご存じですが、臨床で実際に参考にしている項目はそんなにないので、「たくさんあるなー」くらいの感覚で良いです。

よく使われる項目をご紹介します。



拡散の評価(クリアランス)

拡散の評価にはクリアランスがよく使われます。

一言でいうと

血液流量のうちどれくらいの流量分の物質を除去したか。

になります。

分かりにくいですよね、

クレアチニンのクリアランスを例えるなら、

血液流量が100ml/min

血液浄化器入口のクレアチニン濃度が10mg/dl

血液浄化器出口のクレアチニン濃度が2mg/dlだとすると

クレアチニンが8mg/dl(80%)透析されたと言えます。

これを血液流量で考えると

血液流量100ml/minのうち80ml/min(80%)のクレアチニンを除去する性能がある。

という風に考えます。

式で表すと
(血液入口流量×血液入口濃度)-(血液出口流量×血液出口濃度)=(クリアランス×血液入口濃度)

CHDFでは「治療設定」でクリアランスは変わります。

CHDFでは膜の材質や面積ではあまり変化しないので、拡散性能を評価することはないです。



濾過の評価(ふるい係数とTMP)

ふるい係数は一言でいうと

物質が膜を透過する割合。

になります。

小分子は100%通過するため「1」

大分子は膜を通過しないため「0」

中分子は膜を通るものと通らないものがあるため「0~1」になります。

式で表すと
ふるい係数 = 濾液濃度 / 血液側濃度

中分子は大きさによってふるい係数が変わるため、「この血液浄化器は広範囲の中分子が抜ける、別の血液浄化器はあまり中分子が抜けない。」などなど、

ヘモフィルターによってふるい係数が違うため、カタログや資料を見て中分子除去の評価をします。

続いて、TMP(膜間圧力差)ですが、

一言でいうと

血液側と透析液側の「圧力の差」

になります。

理論上は、血液側圧力が上昇 or 透析液側圧力減少 or その両方 でTMPは上昇します。

式で表すと
TMP = 血液側圧力 - 透析液側圧力

実際は中空糸の側孔が血中の物質で目詰まり(ファウリング)を起こすとTMPは上昇します。

血液浄化器によってはファウリング起きやすいもの・起きにくいものがあるため、TMPが上がりやすいもの・上がりにくいものが出てきます。できるだけTMPが上がりにくいものを選択します。



抗血栓性

ライフタイムは「治療時間」になります。

血栓などで目詰まりが起こると入口圧が上昇します。

ライフタイムは治療開始から目詰まりが起こるまでの時間のことになります。

血栓の評価は視覚的に血栓の量を見る方法です。

使用済みのフィルターを洗浄液で洗った後に外から観察したり、フィルターをのこぎりなどで切って中空糸の中まで除くこともあります。



生体適合性

バイタルサインは

治療の開始前後でどのくらい変化したかを観察します。

生体適合性が良くないと心電図変化が現れたり、血圧が低下しアナフィラキシーショックを起こすことがあります。

顕微鏡観察(SEMなど)は

フィルターが血液と接触することで起こるサイトカイン過剰産生や補体系、血小板凝集などを使用後のフィルターを裁断して確認します。

フィルターは年々改良を重ねて、今ではどの膜も生体適合性は充分優れていますが、ごくまれにヘモフィルターによるアナフィラキシーショックを起こすことがあります。

これは、ポリスルホン系の膜に含まれるPVP(ポリビニルピロリドン)や、他にもBPAなどの環境ホルモンの影響と考えられています。生体適合性については意見が多いです。

バイタルが崩れて膜が原因のようだったらすぐさま治療を中断し、別種類の膜を使用するのが無難です。

生体適合性に関しては疑う部分が多いですが、ヘモフィルターは国際規格(ISO)や日本産業規格(JIS)などあらゆる安全性試験をクリアしたものが商品になっているので、どの膜も基本は安全です。



吸着特性

現在ではサイトカインを吸着除去するフィルターも登場しています。PMMA膜やAN69ST膜になります。

従来の拡散と濾過の原理に加えて、「吸着」原理を利用した治療が敗血症重症急性膵炎では主流になってきています。

薬剤や排液血漿による循環実験や、実際に治療中の膜前後の濃度を測定することで吸着能を評価する方法があります。

しかし、どれも吸着のピークや除去の早さなど、定量的に観測する方法はないので、謎な部分が多いです。

吸着能力の有用性を否定する方もいます。

抗菌薬などの薬剤も吸着するので、吸着の影響を本来は加味しないといけませんが、薬剤のクリアランスを計算する場合も実際は吸着の影響は無視しているのが現状です。計算で割り出せないためです。





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