病態生理 集中治療室(ICU)

CEなら知っておきたい凝固のお話

投稿日:1月 12, 2021 更新日:

われわれ臨床工学技士は体外循環が主な仕事であり、毎日が「凝固」との戦いです。

臨床的な凝固も大事ですが、

ICUで毎日行われる血液検査を理解するには

意外と凝固の「基礎」も大事になってきます。

今回は学生時代に振り返って、実際の治療話も踏まえながら「凝固の基礎」をお話しようと思います。

できるだけ簡単にして、ICU領域での治療で必要な知識をまとめようと思います。





凝固

凝固の一連の流れは

出血

一次止血

二次止血

一次線溶

二次線溶

血管修復

となります。

出血が起こっても凝固のメカニズムがあれば血栓によって血管を修復して出血を止めることができます。

よく「カサブタ」で表現されますね。

しかし、出血が起こっていないのに血管内で過凝固が起きてしまう播種性血管内凝固症候群(DIC)

凝固因子が作られなくなる肝不全など

凝固のメカニズムが崩れてしまう病気も多いです。

これらの凝固系疾患は抗凝固療法を行う時にも影響してくるので凝固のメカニズムは理解しておいた方が良いです。





一次止血

「血小板」による凝固です。

出血している血管壁に血小板がくっついて血栓を形成します。

その際、血管内皮に存在するフォン・ウィルブランド因子(VWF : von Willebrand Factor)が血小板をくっつけ、テープのような役割を果たします。

血小板(Plt)の正常値は15万~40万/μL

ICUでは毎日検査します。

術後や急性期では血小板が不足すれば「補充」するのが基本になります。

血小板の補充には「血小板製剤」が使われます。





二次止血

「凝固因子」による止血です。

凝固因子は1~13番まであります(I~XIII)

血管内皮には12(XII)があり、血管内が傷つくと

12(XII)→11(XI)→9(IX)→8(VIII)→10(X)→5(V)→2(II)→1(I)と活性化していきます。

1(I)のフィブリンになったら血栓(安定化)となります。

この流れを「内因系凝固」と言います。

血管外の組織に3(III)因子があり、血管に穴が開くとこの3(III)が侵入し、7(VII)を活性化させます。

その後は10(X)→5(V)→2(II)→1(I)と活性化していきます。

1(I)のフィブリンになったら血栓(安定化)となります。

この流れを「外因系凝固」と言います。

3(III)をTF(tissue factor)と呼ぶこともあります。

外因系凝固の方が関与する凝固因子が少ないため、早いです。

4(IV)は「カルシウム」のことで、血管内・外に関わらずどこにでも存在します。

6(VI)はありません(欠番)

13(XIII)は1(I)のフィブリン安定化因子として知られています。

2(II)と1(I)に関してですが、それぞれ

2(II)=プロトロンビン
活性化2(II)=トロンビン
1(I)=フィブリノゲン
活性化1(I)=フィブリン

のことになるので、知っておいた方が良いです。

フィブリノゲン(FBG)の正常値は200~400mg/dL

ICUではよく検査されます。

術後や急性期では凝固因子が不足すれば「補充」するのが基本になります。

凝固因子の補充に「新鮮凍結血漿(FFP)」や「血漿分画製剤」を使用することがあります。

※血液凝固因子の慣用名を載せておきます。臨床ではあまり使わない知識です。

血液凝固因子
I フィブリノゲン
II プロトロンビン
III 組織トロンボプラスチン
IV カルシウムイオン
V プロアクセレリン
VI (欠番)
VII プロコンベルチン
VIII 抗血友病因子
IX クリスマス因子
X スチュアート・プラウア因子
XI 血漿トロンボプラスチン前駆体
XII ハーゲンマン因子
XIII フィブリン安定化因子





一次線溶・二次線溶

線溶は厳密に言うと一次と二次がありますが、

似たようなものなので一次線溶と二次線溶は一緒に考えてしまった方がわかりやすいです。

線溶は主に「プラスミン」によって行われます。

プラスミンはプラスミノーゲンから作られます。

プラスミノーゲン→プラスミンになる過程で活性化・促進させる物質を「プラスミノーゲンアクチベータ(PA)」と言います。

組織型PA(t-PA)、ウロキナーゼ型PA(u-PA)、ストレプトキナーゼ(SK)などの種類があります。

一方、プラスミノーゲン→プラスミンになる過程で抑制的に働くのは「プラスミノーゲンアクチベータインヒビター(PAI)」と言います。

プラスミンによってフィブリン化した血栓を修復したら元の血管に戻ります。

その際に発生する分解産物(ごみのようなもの)をFDP(フィブリノゲン/フィブリン分解産物)、DD(Dダイマー)と言います。

FDP、DDは凝固の結果発生する物質なので、検査値で増加していれば「血管内で凝固が行われていた」という証になります。

FDPの正常値は5.0μg/mL以下
DDの正常値は1.0μg/mL以下

ICUではよく検査されます。

脳梗塞や心筋梗塞など血栓がつまる疾患に対し、血栓を溶解して再開通させる目的で「血栓溶解剤」を使用することがあります。

血栓溶解剤はウロキナーゼや組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)が代表的です。





凝固時間

上で説明した凝固が

「どの程度のスピードで行われているか」

を測定したものが凝固時間になります。

通常の状態から凝固が完了するまでの時間になります。

凝固時間は凝固因子の量や活性化の影響で変動します。また、下に解説する抗凝固因子の影響も受けます。

凝固時間が長いということは、血栓ができるまでの時間が長いので「出血傾向」に傾いています。

逆に、凝固時間が短いと、血栓ができるまでの時間が短いので「血栓傾向」に傾いています。

内因系凝固の凝固時間を「活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)」

外因系凝固の凝固時間を「プロトロンビン時間(PT)」

と言います。

PTには通常のPT(秒)もあれば、PT%、PT比、PT-INRなどの測定項目があります。

よく使用されるのはPT-INRです。

PTが延長する疾患は播種性血管内凝固症候群(DIC)が代表的で、APTTが延長する疾患は血友病が代表的です。

全血を使って一次止血(血小板)と二次止血(凝固因子)もまとめて測定した凝固時間を「活性化全血凝固時間(ACT)」と言います。

ベッドサイドで早く測定ができるため、急性期の抗凝固療法で参考にすることが多いです。

APTTの正常値は24~39秒
PT-INRの正常値は0.85~1.15
ACTの正常値は100秒くらい

ICUではよく検査されます。

これら凝固時間は病態の診断だけでなく、抗凝固剤の投与量調整で参考にすることが多いです。





抗凝固因子

生体内は凝固系だけではなく、それを阻止する「抗凝固因子」が存在します。

これらのバランスによって血栓傾向、出血傾向を調整しています。

生体内の抗凝固因子は凝固因子に比べると少ないですが「アンチトロンビン(AT)」「プロテインC(PC)」「トロンボモジュリン(TM)」「組織因子経路インヒビター(TFPI)」があります。

凝固カスケードが進んでフィブリン(I)になってしまうとしっかり血栓ができてしまうため、フィブリンの手前(II~XII)で進行を阻止(阻害)するのが抗凝固の考え方です。

抗凝固剤によるヘパリン、もしくは血管内皮にあるヘパリン様物質によってATとTFPIが活性化されます。

ATは9(IX)、10(X)、2(II)を阻害し、抗凝固します。

ATによって2(II)のトロンビンを阻害するとトロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)が産物として出現します。

ATは「ATIII」と呼ばれることがありますが、意味は同じです。

TFPIは7(VII)、10(X)を阻害し、抗凝固します。

PCはTMとトロンビンによって活性化し、8(VIII)、5(V)を阻害し、抗凝固します。

ATIIIの正常値は80~130%

ICUではよく検査されます。

これら抗凝固に関係する薬剤は「抗血小板剤」「抗凝固剤」「血液製剤」があります。

抗血小板剤

抗血小板剤は血小板による血栓形成を抑制し、血液をサラサラにする薬剤です。

心筋梗塞脳梗塞などの動脈血栓の予防で投与します。

アスピリンやチエノピリジン系抗血小板薬などが代表的です。

抗凝固剤

抗凝固剤はフィブリンによる血栓形成を抑制し、血液をサラサラにする薬剤です。

深部静脈血栓症肺塞栓心原性脳塞栓症などの静脈血栓の予防で投与します。

また、体外循環中の抗凝固療法で使用します。

体外循環ではヘパリンやメシル酸ナファモスタットが、内服ではワルファリンが代表的です。

血液製剤

血液製剤は赤血球や血小板などを思いがちですが、抗凝固因子もあります。

代表的なのは「ATIII製剤」と「TM製剤」になります。

ATIII(アンチトロンビンIII)製剤は血漿分画製剤の一種でATIIIが不足した時の補充目的で使用することがあります。

ヘパリンはATIIIを介して抗凝固作用を発揮するため、ヘパリンの効果が見られない場合でATIII製剤を投与することもあります。

ヘパリン使用中のATIII製剤投与は出血傾向を一気に高める可能性があるため、使用する時は注意します。

TM(トロンボモジュリン)製剤はDICの治療薬として使用されることがあります。

こちらも出血傾向を一気に高める可能性があるため、投与時は注意します。





他にも

稀ですが次の凝固系を検査することがあります。

プロトロンビン→トロンビンの過程で出現する産物として「プロトロンビンフラグメント1+2(F1+2)」

フィブリノゲン→フィブリンの過程で出現する産物として「可溶性フィブリン(SF)」「フィブリンモノマー(FMC)」SFとFMCを総称して「フィブリンモノマー複合体(SFMC)」





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参考にした資料

[参考書]ファーマナビゲーター DIC編(2019)

[HP]DICについて(旭化成ファーマ株式会社)

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