CBP CRRT 血液浄化

やさしく「HDとCHDFの違い」をまなぶ

投稿日:2月 8, 2020 更新日:

数ある透析方法の中で現在に至るまで2種類の透析が主流になってきました。

一つは透析室で行われる週3回・4時間ほどの血液透析(HD)

もう一つはICUなどの集中治療領域で行われる24時間の持続的血液濾過透析(CHDF)があります。

HDは慢性期、CHDFは急性期のイメージが強いと思います。

急性期でも症例によってはHDの方が有利な場合があるので今回書きます。

HDと比べたCHDFの Point!
・大量の除水や中分子・大分子量物質の除去に関してはCHDFの方が優秀な治療効果
・CHDFは循環動態の影響が少ないので、ショックバイタルの患者にも行うことがある
・24時間行うCHDFのデメリットは高い出血リスク、人手とコストが必要になること





小分子量物質除去

HD > CHDF

HDは大量の透析液を使用するため、時間当たりの透析液流量(透析効率)が格段に高いです。 そのため、電解質の変動が早く、溶質除去(特に小分子量領域)も早いため、高カリウム血症やクラッシュシンドローム、薬物中毒などに向いています。高流量がゆえに急激な溶質除去で血漿浸透圧が急激に低下し、循環動態に影響が出やすく、細胞内浮腫、脳障害が出やすいです。CHDFは透析がゆっくりではありますが、休止時間がなく安定した溶質除去でリバウンドが少なく、バイタル不安定な重症例には向いています。一週間で見ると浄化量は両方とも大きくは変わりません。





中分子量物質除去

HD < CHDF

近年はダイアライザーの側孔を大きくし、HDFが行うことも増えてきましたが、それでも膜の構造や24時間濾過をする設定なので、CHDFの方が濾過性が高いです。またCHDFのヘモフィルターは吸着特性もあり、中分子量物質の除去に向いています。





除水量

HD < CHDF

HDで大量に除水しようとするとプラズマリフィリングが追い付かず、血管内ボリュームが減少し循環動態に影響が出やすいです。CHDFは24時間行える分、循環動態に影響が出ない程度にゆっくりと大量の除水が可能です。

CHDFの除水・水分移動

HDの除水・水分移動





出血リスク

HD < CHDF

24時間のCHDFが抗凝固剤の使用量が多いです。その分出血リスクは高くなるため、出血リスクのある患者はHDが向いてます。





循環動態の影響

HD > CHDF

管理上HDはシャントを、CHDFはカテーテルを使ったブラッドアクセスが多いです。シャントは動脈→静脈に短絡させるため、心負荷がかかりますが、カテーテルは静脈→静脈のため、心負荷に影響はありません。また、CHDFの方がプライミングボリュームが少ない構造でイニシャルドロップなどの循環動態の影響は出にくいです。その他、CHDFは除水や透析が緩徐なため、比較的に循環動態に影響は低いと言われています。

※イニシャルドロップ…血液希釈が原因と考えられる血圧低下





コスト

HD < CHDF

CHDFの方が材料費が高額です。管理人の知る限り、おおもとの材料費は大きく変わりませんが保険診療やメーカー推奨値、大人の事情で高額になってます。またCHDFは抗凝固剤の使用量も多いので、その分高額です。





患者の運動制限

HD < CHDF

HDは4時間に対し、CHDFは24時間治療のため動けません。工夫すれば簡単なリハビリはできますが、もちろん制限があります。





スタッフの仕事量

HD < CHDF

HDのプライミングは数分で完了するのに対し、CHDFは30分程かかってしまいます。また、24時間管理するため、介入する看護師やスタッフの数も多いです。





まとめ

  HD CHDF
小分子除去(時間当たり) ↑↑↑
中分子除去(時間当たり) →、↑ ↑↑
除水量 ↑↑↑
出血リスク ↑↑↑
循環動態 ↓↓↓
コスト ↑↑↑
患者運動制限 ↑↑↑
スタッフ仕事量 ↑↑↑

万能な方法はないので、患者の状態と院内の現実性に見合った治療選択になってきます。

AKI敗血症のガイドラインでは、HDとCHDFを比較し、死亡率・生存率で有意差は見られなかったと記載があります。

[指針]AKI診療ガイドライン(各学会,2016)

[指針]日本版敗血症ガイドライン(日本集中治療医学会,2016)

つまり、治療に関して「HDとCHDFどちらも効果に差はない」ということです。

ただ、HDを施行した群に関しては循環動態が安定している患者に限定しています。どの程度、循環動態が安定しているか明確な基準はありませんが、循環動態が不安定な患者はCHDFが望ましいと言われています。

他にも、出血リスクや脳浮腫などを評価して決め、専門の方にコンサルトするのが望ましいです。





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参考にした資料

[参考書]CRRTポケットマニュアル(2015)

[雑誌]CRRT(INTENSIVIST,2010)

[指針]AKI診療ガイドライン(各学会,2016)
無料のもあります。

[指針]日本版敗血症ガイドライン(日本集中治療医学会,2016)
無料のもあります。

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