VAD 補助循環

VAD外来について

投稿日:5月 18, 2020 更新日:

補助人工心臓(VAD)とは

「心不全患者に対して心機能を機械的に補助する装置」のこと。

VADの中でも「植込み型補助人工心臓」は通院が可能となり、基本は家で過ごすことになります。

定期的に外来で患者の診療・機械の点検をします。専門知識の共有が必要で医師、看護師、臨床工学技士と多職種で診察します。

当院で実際に行っているVAD外来時の診察内容を項目ごとに説明します。





VAD装置の管理

VADの機種によって管理に違いはありますが、基本的な意味合いは同じです。

国内で多く使用されているHeart Mate IIを例に説明します。



回転数

血液ポンプの回転数です。回転数はCI、LVサイズが正常で中隔シフトがなく、大動脈弁が時々開く程度が最適です。
回転数が高いとサッキング(吸いつき)や大動脈弁逆流(AR)、右心不全が起こることがあります。回転数が低いとポンプ内血栓のリスクがあるため、ポンプの回転数は高すぎず、低すぎず、心エコーや右心カテーテル検査等で調整します。



PI(Pulsatility Index)拍動指数

定常流の中で拍動がどれだけ得られているかという指数です。
前負荷量・自己心の収縮性により変化します。



PIイベント

サッキングが起こった時に自動で回転数を下げて吸いつきを解除する機能があります。これをPIイベントといい履歴から件数を確認します。
左心室の大きさや血液ポンプの回転数が不適切な時にPIイベントが多くなるため、飲水量や回転数を調整することがあります。



消費電力(W)

血液ポンプの消費電力です。
上昇すればポンプ内血栓が疑われます。



ポンプ流量

実測値ではなく計算値であるためあまり評価しません。



聴診

血液ポンプの駆動音を確認します。血栓やサッキングを推測します。


その他、定期交換部品の確認を行います。





血液検査

ワルファリンによる抗凝固療法が適切に行われているかPT-INRをチェックします。

機種によって違いがありますがHeart Mate IIではPT-INR 1.8~2.5で管理します

・LDHの上昇は血栓が疑われます。

・溶血が起こっている場合はHt・Hbの低下。LDH、遊離ヘモグロビン、間接ビリルビンの上昇がみられます。

・白血球数(WBC)、CRP、直接ビリルビンの上昇で感染を疑います。

その他、肝機能(AST,ALT等)や腎機能(BUN,Cre等)で臓器還流できているかチェックします。





ドライブライン

感染を起こすと挿入部である皮膚の熱・変化がみられます。

外来時に貫通部のケアを患者にしてもらい、その時に貫通部を確認します。





バイタル


血圧

血液ポンプは定常流(拍動がない)なので測定できないことがあります。
平均動脈圧80~90mmHg以下の血圧管理を心がけます。
主に薬剤による前負荷と後負荷軽減が降圧の基本になります。利尿薬やACE-I/ARB、β遮断薬、MRAなどが用いられます。
血圧高値だと脳出血、後負荷増加による血液ポンプ流量低下、大動脈弁逆流の進展などのリスクが上がります。
血圧が低値だと起立性低血圧でADLを低下させるので極端に降圧しないようにします。



SpO2

血圧測定と同様に測定できないことがあります。



体温

感染の傾向がないか確認します。



水分量、食事摂取量

血管内脱水によってサッキングや血液ポンプが正常に動作しないことがあるので、脱水に注意します。
肥満は心移植の際に適応にならないことがあるので体重は注意します。





薬物療法

VAD装着患者は主に既存の心不全治療とLVAD植え込みによる抗凝固療法の薬剤を使用します。

外来時は血液検査(PT-INR)でワルファリンなどの調整を行います。

下の表はVADで使用する薬剤をリストアップしたものです。





その他

浮腫末梢循環不全がないか確認します。

また、脳卒中リスクもあるので会話した時に呂律が回っているか自分は確認しています。

必要であれば機器の取り扱いとトラブルシューティングを確認し患者教育に努めます。





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参考にした資料

[参考書]必携! 在宅VAD管理 植込型補助人工心臓による治療の進歩とQOLの向上(日本人工臓器学会,2019)

[雑誌]補助人工心臓の進歩と課題(医学のあゆみ,2018)

[指針]重症心不全に対する植込型補助人工心臓治療ガイドライン(各学会,2021)

[指針]急性・慢性心不全診療ガイドライン(各学会,2017)

[総説]補助人工心臓の現状と今後の課題(日集中医誌,2020)

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